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LIFESTYLE インタビュー

2024.05.17

元月組トップ・龍 真咲さん「本名でいても芸名の自分が片時も離れることがありませんでした」|【ベルサイユのばら50】インタビュー vol.1

5月14日に開幕した『ベルサイユのばら50』。少女マンガの名作を舞台化した宝塚歌劇の金字塔ともいえる作品には、宝塚歌劇OGのレジェンドたちの競演も見どころのひとつ。今回は、『ベルサイユのばら』にゆかりの深い元月組トップスターの龍 真咲さんにお話をうかがいました。

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初演から50年を経てなお愛される宝塚歌劇『ベルサイユのばら』。作品の伝統と継承にプライドを

5月14日に梅田芸術劇場メインホールで華やかに開幕した『ベルサイユのばら50』。1974年の宝塚歌劇団月組での初演から50年を経て、歴代のレジェンドたちが大集結。懐かしい場面や曲、ダンスを交え2部構成で上演するアニバーサリーステージです。

出演者のひとりとしてインタビューをお願いしたのは、2001年宙組公演『ベルサイユのばら2001―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』で初舞台を踏み、月組トップスターになってからの2013年『ベルサイユのばら―オスカルとアンドレ編―』ではダブルキャストを経験、同年の雪組公演『ベルサイユのばら―フェルゼン編―』では他組への特別出演という、“ベルばら”ととてもつながりの深い龍 真咲(りゅう・まさき)さん。

「久しぶりに舞台に立ちます」という龍さんに、作品にかける意気込みや“ベルばら”への思いをうかがいました。

龍真咲さん

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しばらく遠ざかっていた舞台と男役。お稽古場に立つとあの頃の研ぎ澄まされた感覚が戻ってくる

男役を演じるのは約5年ぶりとのことで、心待ちにしているファンの方も多いと思います。オファーを受けたときの心境を教えてください。

龍さん(以下敬称略):宝塚歌劇団を退団して大好きなあの劇画の世界にもう戻ることはないんだなと思っていたのに、初演から50周年という素晴らしい節目の舞台でオファーをいただき、本当にうれしかったです。

2022年〜2023年は池田理代子先生のマンガの『ベルサイユのばら』が誕生して50周年ということで、日本各地で展覧会をやっていたんですよ。実際に足を運んで、「すごい!」と興奮しながら写真をたくさん撮って。そんな状況の中で出演のお話をいただいたので、インスピレーション的に「ぜひ出演させていただきたい」と思いました。

実はそのとき妊娠中で(公演のある)約1年後はどんな状態かわからなかったのですが、出演を励みに頑張りたいなと。お母さんになられたOGの方の頑張りから元気をもらうこともありました。

また、110周年を迎えた宝塚歌劇に再び自分が携わることができたらという思いもありましたので、ヤワラちゃん(元柔道家の谷 亮子さん)の名言を借りて「ママでもオスカル!」という気持ちで前向きに受けさせていてだきました。

『ベルサイユのばら50』ではダイジェストシーンで、久しぶりのオスカルの姿になられるということですよね。

龍:オスカルの扮装があるとうかがったときには、ちょっとびっくりしましたけれども(笑)。でも、演出家の先生、スタッフの方々、上級生や下級生のみなさんがひとつのカンパニーとして作品を作り上げていくというタカラヅカの世界を再び味わえるということに、お稽古が始まる前からワクワクしていました。

龍真咲さん

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お稽古はいかがでしたか?

龍:最初に劇団で歌稽古をしていただいたときがいちばん緊張しました。オスカルは男装の女性ですからタカラヅカでは男役が演じるもので、男役としてオスカルができるかな……と。タカラヅカの男役からは8年くらい遠ざかっていたので、いったいどんな感覚になるんだろうと自分自身でもわからなかったんです。

そこに立ったらいろんなものがおのずと戻ってくるとみなさんおっしゃいますが、本当にそれを感じることができて驚きました。なにも持っていないのに左手でサーベルを持つ姿勢になったり、マントをさばきたくなる右手を自覚したり(笑)。あと、当時私は舞台に出る前に靴を履くときは左からと決めていたのですが、それも体が覚えているんです。びっくりしました。

体に染み込むほど練習し、公演のための準備もルーティンになっていたんですね。

龍:そうですね。やっぱり現役中は「龍 真咲」であり、本名でいても芸名の自分が片時も離れることがありませんでした。男役として作り上げてきたものは大きかったですね。イメージのために甘いものは控えるとか、薄いピンクより濃いピンクなどの原色やゴールドが好きとか。

引退したときにまず考えたのが、「いったい私は本当はなにが好きなんだろう」ということ。本名の自分自身に向き合うという作業から始めたことを思い出します。しばらく舞台から遠ざかり久しぶりに男役に触れたとき、あまりにも龍 真咲が遠くなりすぎて「帰ってきて〜」と思うこともありますが(笑)。

先日久しぶりにファンの方々とお会いする会を開き、同期に司会進行をお願いしたんです。その打ち合わせの際に、「私ってどんなキャラしていたっけ?」と聞いたんですね。そしたら彼女は「今のまさお(龍さんのニックネーム)のままでいいんじゃない?」と言ってくれて気持ちが軽くなったのですが、いざみなさんの前に出たらクールにふるまってしまう自分がいて(笑)。

男役として見られる感覚を研ぎ澄ます作業をしらずしらずのうちにしていたな、と思い出す瞬間でもありました。今は1日の多くを赤ちゃんと動物と過ごしているので、そんな時間がとても新鮮であり刺激的でした。

龍真咲さん

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やっぱり思い入れがあるのはオスカル。アンドレとの役がわりは大変だったけれど鍛えられた

龍さんが考える『ベルサイユのばら』の魅力はどんなところですか?

龍:まず、ロココ時代のヨーロッパの世界観が本当に素敵。現役のとき、私はスーツよりコスチュームを着ていたいタイプでした。原作のマンガの世界が大好きで、例えばウィッグを作るときでもオスカルのこの画からこういう髪型にしたいとか、劇画感を大事にしていました。

あと、フランス革命と同じような時代の作品に携わったり、違う側面からフランス革命を捉えた作品に出させていただいたり、フランス革命後の時代物を観たり、自分が海外に住むようになって改めて感じることは、人権宣言は300年以上経った今も変わらないということです。

自由・平等・友愛を守る権利は現代社会の中でも引き継がれて、人々が成し遂げたいと求め続けているものだということ。フランス革命は貧困問題や絶対王政への反発が根底にありましたが、時代は変わった今は、例えばLGBTの権利だったり。ひとりひとりが自由なマインドで自己実現に向かいたいという希望は、普遍的なものだと感じています。きっとそれはこれから100年経っても200年経っても、定義は同じことなんだろうと思うと興味深いですね。

龍真咲さん

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『ベルサイユのばら』には多くの人物が出てきますが、龍さんがいちばん好きなのは誰ですか?

龍:自分が思い入れのあるオスカルにとって大切な人となると、お父さんとばあやかな。オスカルがばあやにおぐし(髪)を整えてもらうときは、自分が背負っているものをすべて下ろしてポロッと本音を吐き出せる柔らかな雰囲気に包まれているんです。あれはとても印象深く大事な場面のひとつでした。

それから、私たちの公演(2013年『ベルサイユのばら―オスカルとアンドレ編―』)のときだけだったかもしれないのですが、お父さんがオスカルを叩く場面があるんですよ。平民につくというオスカルに対して「なにをしている、ジャルジェ家の恥だ」と。お叱りを受け、今までお父さんが自分に注いでくれた愛情を思い返しながらものすごく葛藤するんです。

バスティーユに行くまでずっと葛藤して、でも最後の最後にバスティーユ行きを決めてお父さんに「でも私はやらなければいけない」と独白で伝えるのですが、大好きなお父さんを裏切ってしまったかもしれないという思いはオスカルを奮起させるひとつでもあるわけで、大きな存在だと感じています。

現役時代はオスカルとアンドレの役がわりを経験されましたが、当時の思い出はありますか?

龍:当時は役がわりが当たり前になっていて私自身すごく鍛えられた経験がありますが、正直なことを言うと、避けたほうがいいなと思います。自分も揺らぐし周りも揺らぐし……、組が安定しないと思うんですよ。

上級生なら揺さぶられて成長する場合もあるかもしれないけれど、下級生の頃は同じ環境で同じことを繰り返すことで「こんなことができるようになった」「周りの状況を見られるようになった」とできることが増えて力になっていくんです。周りの人が頻繁に変わったらそれができる環境じゃなくなる、ということもあります。

役が倍に増えることで負担は大きかったですが、心は退屈しなかったですね。常に新しい世界が見られて、やりがいもものすごくありました。2013年『ベルサイユのばら―オスカルとアンドレ編―』では、花組から蘭寿とむ(らんじゅ・とむ)さん、雪組からは壮 一帆(そう・かずほ)さんという当時のトップスターさんを含む方々が特別出演してくださいました。

ずっと月組で過ごしてきた自分にとって、他組の上級生の男役さんとお芝居ができることが刺激的すぎてとっても楽しかったのを覚えています。その当時の月組は、男役も女役もできる上級生がいらしてちょっとフェアリーな組カラーだったので、包容力のあるカッコいい男役のおふたりが来てくださったことで新しい表現が加わり、私にとっても組子にとっても本当に素晴らしい経験だったと思います。

オスカルとアンドレは、思いは一緒でも存在や居方はまったく違いますよね。

龍:貴族と平民という身分の違いがもっとも大きいと思います。谷先生が「アンドレはセンターに立たない」と言われ、「確かに」って。現役時代も同じことを言われていたのを懐かしく思い出したりしました(笑)。

アンドレの魅力は、オスカルのことを一途に思い続けている控えの身であり、表に出せないオスカルへの憧れの炎を心に秘めているところ。あんな人がいたらいいなと思います。

龍真咲さん

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あの名場面への流れはきっとみなさんに満足していただけると思っています!

今回たくさんのOGの方が出演されます。龍さんにとっても、懐かしさがありますか?

龍:役がわりも多いんですよね。タカラヅカの頃は、同じ役を他の方が演じているときは自分は違う役をやっているから、客観的に舞台を観られる時間がないんです。だから今回、他の方が演じているオスカルをじっくり拝見することができて、「こんなふうに見えるんだな」とか「こんな表現方法もあるのか」と新たな視点が生まれたり。

今回出演される中で、彩輝なお(あやき・なお、元月組トップスター)さんと水 夏希(みず・なつき、元雪組トップスター)さんは、私の初舞台の宙組公演『ベルサイユのばら2001―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』のときのオスカルとアンドレで、当時それはそれはもう穴が開くほど観ていたんですよ。今はファン目線でちょっとニヤニヤしながら観ています(笑)。

そんな新たな刺激を上級生からもいただき、私も頑張らねばと気持ちを引き締めています。扮装はオスカル、トーク&ソングでアンドレの歌を歌わせていただきます。お稽古前にオスカルのイメトレをして行きましたが、いざ動いてみたら行動は同じでも対する相手によって言い方や動き方、気持ちの揺らぎ方って違うんだなと改めて実感しているところです。

やっぱりオスカルって、アンドレがいるから安心していろいろなことができるんですよね。それに気づいて愛の告白をする。今回どこの場面を再現するかまだ内緒なのですが、その場面への盛り上げ方はいい流れになっています。抜粋ではありますけれども、みなさんに満足していただける空間になっているのではと思っています。

龍真咲さん

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たくさんの方が出演されるから、ファンのみなさんもどの回を観ようか迷いますよね。何回も観たくなりそうです。

龍:私もそんな感じです。50年の歴史があるからファンの方々もたくさんいらっしゃって、本当にスペシャルですよね。同じ曲を、初演の方々と一緒に歌わせていただくのも畏れ多いですがそこは図々しく(笑)。

11年前の月組での『ベルサイユのばら―オスカルとアンドレ編―』のとき、初演オスカルの榛名由梨(はるな・ゆり、元月組トップスター)さんが演技指導に来てくださってたくさんのことを教えていただいたので、またお会いできることも楽しみなんです。

ライブ配信という、より多くのみなさんに観ていただく機会があります。ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

龍:宝塚歌劇『ベルサイユのばら』の初演50周年に携われることが誇りです。上級生から私たちへ、そして下級生へバトンをつないでいくように再演を重ねてきた作品で、まさに作品の伝統と継承を担っていることにプライドと責任を持って取り組みたいと思っています。なによりファンの方がとっても心待ちにされているアニバーサリーのイベントですので、いい意味で自分にプレッシャーをかけつつ、舞台の上で役を生きる経験をさせていただけることを楽しみにしたいです。

龍真咲さん

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『ベルサイユのばら50』は初日を迎えて東西公演の配信も決まり、大きな盛り上がりを見せています。公演情報をぜひご確認ください。

2回目は龍さんのプライベートに迫ります。子育てのお話も深くうかがっていますので、お楽しみに!

撮影/田中麻以 ヘア&メイク/村端ジン 構成・文/淡路裕子

初演から50年。宝塚歌劇の金字塔『ベルサイユのばら』が歴代のレジェンドと共に蘇る!
『ベルサイユのばら50 〜半世紀の軌跡〜』

ベルサイユのばら50

1974年に宝塚歌劇で幕を開けた不朽の名作『ベルサイユのばら』。初演から50年の年月を超えて蘇る感動の舞台が、いよいよ開幕。歴代のレジェンドたちが大集結。懐かしい場面、曲、ダンスを交え、2部構成であなたの“ベルサイユのばら”を彩ります。あの時みた夢の先へ、今、あなたとともに。

【公演詳細】
<大阪公演>
日程:2024年5月14日(火)〜19日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール
<東京公演>
日程:2024年5月26日(日)〜6月9日(日)
会場:東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

\待望のライブ配信が決定!/
【LIVE配信日程】
5月18日(土)17:00公演 《梅田芸術劇場メインホール》
6月9日(日)12:00公演 《東京建物Brillia HALL》
※アーカイブ配信はございません。

【チケット販売期間】
2024年5月1日(水)10:00より、各回開演30分後まで購入可能
※《5月18日(土)17:00公演》発売日~5月18日(土)17:30まで
※《6月9日(日)12:00公演》発売日~6月9日(日)12:30まで

【視聴チケット料金(税込)】
・配信視聴券:各¥4,500
・配信視聴券(公演プログラム郵送サービス付き):各¥6,500 
※送料別途必要。
※公演毎に視聴チケット購入が必要となります。
※プログラムは、各配信日翌日より順次発送を開始予定です。
《5月18日(土)17:00公演》6月中旬までにお届け予定。  
《6月 9日(日)12:00公演》6月下旬までにお届け予定。
※「公演プログラム郵送サービス付き」につきまして数量限定での販売となりますので、予定枚数に達し次第、受付を終了いたします。

※出演者変更の場合でも払い戻しはいたしかねます。
※通信環境の整っている場所でご視聴ください。

※公演プログラムは各公演会場で販売しております。
※(参考)プログラム販売価格:¥2,000(税込)

【視聴チケットのご購入・視聴方法】
◆PIA LIVE STREAM(ぴあ)
視聴チケットのご購入はこちら
配信のご視聴・ご購入方法はこちら

【公演に関するお問い合わせ】
梅田芸術劇場 0570-077-039(受付時間 10:00~18:00)
公式サイト

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