ばんかけとは?意味や由来を解説
隠語の一つである「ばんかけ」の意味や由来を解説します。隠語の意味を理解することは、その言葉が使われている業界を知ることにつながります。
もしも会話の相手が「ばんかけ」という言葉を使っていたとしても慌てることのないよう、本記事で学んでおきましょう。
職務質問を表す警察用語
ばんかけとは、警察業界で使われる隠語で「職務質問」を意味します。
職務質問とは、罪を犯している人、もしくは犯そうとしていると疑われる人などに対し行われる捜査手法です。道端で呼び止めて行われるのが基本で、「警察官職務執行法」の第二条に規定される警察官の職務の一つです。
しょくむ‐しつもん【職務質問】
[名](スル)警察官職務執行法に基づき、警察官が、挙動の不審な者や他人の犯罪事実を知っていると認められる者を呼び止めて質問すること。職質。
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
ばんかけという言葉は下記のように使用されます。
・昨日の夜、初めて「ばんかけ」されちゃったよ。そんなに挙動不審に見えたのかな?
・深夜に出歩いていると毎回「ばんかけ」されるんだよね。おまわりさんと顔見知りになっちゃいそうだよ。
ただし、ばんかけはあくまでも警察業界で使われる隠語。誰にでも通じる言葉ではないため、素直に「職務質問」と表現した方が親切です。
由来は諸説あり
「ばんかけ」の由来にはいくつかの説があります。一つ目が、警察官が通行人に声掛けするときの台詞「こんばんは」から生まれたとする説です。
ばんかけが行われるのは主に夜間のため、警察官が対象者へ最初に掛ける言葉は十中八九「こんばんは」といえます。「こんばんはと声を掛ける」を短縮した言葉が「ばんかけ」といわれています。
もう一つは、役者への声掛けの台詞「出番ですよ」から誕生したとする説です。
芝居小屋で出番を待っている役者に、舞台に上がるタイミングを知らせる際、「出番ですよ」と声を掛けます。「出番ですよと声を掛ける」を短くしたのが「ばんかけ」といわれています。
ばんかけの基礎知識
ばんかけ(職務質問)を受けた経験がなければ、何をするのか、どういったところで行われるのかなど、分からないことばかりですよね。万が一のときに困らないよう知っておきたい、ばんかけの基本を紹介します。
主に質問と所持品検査をする
ばんかけ(職務質問)の際には「住所」「氏名」「今どこに向かっているのか」「ここで何をしているのか」などの質問が投げかけられます。
薬物の所持や窃盗などが疑われる場合は、質問と併せて所持品検査が行われるケースもあります。所持品検査では、荷物やポケットの中身を調べるのが一般的です。
質問中、明らかに挙動がおかしかったり、所持品検査で薬物らしきものが発見された際には、尿検査を行うこともあります。
夜間の繁華街で行われることが多い
ばんかけ(職務質問)が行われやすい時間帯は夜中から深夜です。夜遅い時間にばんかけが多いのは、日中に比べ夜間の方が犯罪が発生しやすいため。
比較的、犯罪が発生しにくい日中にばんかけを行っても、犯罪者を見つけ出すことや犯罪を防止できる可能性は低いようです。
ばんかけが積極的に行われるのは、繁華街やその周辺です。繁華街以外に、薬物の取引が行われやすい地域でも実施されます。最近は違法薬物の蔓延が目立つことから、住宅街でも実施することがあるようです。
ばんかけには素直に応じるのが得策
ばんかけ(職務質問)はあくまでも任意で行われる捜査活動です。そのため、拒否したところで、「ばんかけに応じなかった」という理由で罪に問われたり逮捕されたりすることはありません。
しかし、ばんかけの拒否には大きなリスクが伴います。「何か罪を犯しているのではないか」「何か良からぬことを企てているのではないか」と疑いをかけられてしまうからです。
ばんかけを受けたときは、最小限の時間と労力で身の潔白が証明できる道を選ぶ…つまり、素直に従うのが賢い選択といえます。
ばんかけ以外の警察用語
民間人に事件の発生を悟られないようにするため、警察ではさまざまな隠語が使われています。この項目では、ばんかけ(職務質問)以外の警察用語を紹介します。どの言葉も一般に浸透しているものとは言い難いので、日常で使用するときには注意しましょう。
現場周辺で行う聞き込み調査は「地取り」
警察の捜査手法を表す隠語として挙げられるのが「地取り」です。地取りとは、事件が発生した場所の周辺に住む人を対象に行う聞き込み捜査のことです。一般の人がイメージする「聞き込み」が地取りに当たります。
一方、「鑑取り」という警察用語もあります。鑑取りは、事件の被害者や容疑者と関係する人物を対象に行う捜査のことです。事件の関係者に聞き込みを行うことから、関係者の「関」を取って「関取り」と表記される場合もあります。
警察署長を意味する「オヤジ」
警察には役職を表す隠語も存在しますが、中でも代表的なのが「オヤジ」です。警察用語としてのオヤジは「警察署長」を表します。警察署長が、警察署の大黒柱として他の警察官を引っ張っていく父親的な存在であることから、この呼び方が使われだしたようです。
また、「オヤジ」とセットで知っておきたいのが「オフクロ」です。オフクロは「警察署の副署長」を表します。
副署長が、警察署長すなわちオヤジを支える母親的存在であることから、副署長に任命された人をオフクロと呼ぶようになったといわれています。
逮捕することを表す「そうめん」
警察で行われる手続きに関する隠語として挙げられるのが、「そうめん」「パクる」「フダ」「キップ」などです。
そうめんとは「逮捕」を意味する警察用語。そうめんの麺が逮捕を連想させる「縄」に見えることから、このような隠語が生まれたとされています。
パクるは「逮捕する」「検挙する」という意味を持ちます。一般的には「人のものを盗む」という意味で使われますが、警察用語としては「逮捕する」という意で使われます。
フダとキップは「逮捕状」を表す警察用語です。「キップが出る」などと表現します。
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