「治外法権」とは在留地の法が適用されないこと
「治外法権」は「ちがいほうけん」と読みます。在留地の法に服さないという権利のことです。
外国人であっても、通常は滞在する国の法律に服さなければなりません。しかし、例外的に適用を免れ、本国の法律が適用される場合があります。
治外法権の意味は、次の通りです。
【治外法権】
国際法上、特定の外国人(外国元首・外交官・外交使節など)が現に滞在する国の法律、特に裁判権に服さない権利。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
その国の法律だけでなく、司法や行政を含む三権も及びません。簡単に言えば「外国人が滞在する他国のルールに従わなくていい権利」ということです。
領事裁判権との違い
治外法権と似た言葉に「領事裁判権」があります。領事裁判権とは、外国人が現在住んでいる国の裁判権に服さず、本国の法に基づいて裁判を受ける権利のことです。
滞在する国の法律が適用されず裁判権に服さないという意味で、治外法権の一部にあたる権利といえるでしょう。過去には認められていたこともある権利ですが、現代の国際社会ではどこの国にも存在しません。
条約で認められていたことも
領事裁判権は、江戸時代にあたる1858年に日本とアメリカが結んだ日米修好通商条約で定められていました。当時のアメリカ人は領事裁判権に守られ、日本で罪を犯しても日本の法律で裁けなかったのです。
そのため、各地でアメリカ人の犯罪が増加したという経緯があります。
不平等条約とも呼ばれた日米修好通商条約ですが、1911年の条約改正により領事裁判権は撤廃されました。
日本で治外法権がある場所や対象となる人
治外法権は外交特権の一部です。外交特権とは国際法上、外国からの外交使節団や外交官に認められている権利で、一般の外国人とは異なる保護や待遇が与えられています。
外交特権には治外法権のほかに「不可侵権」があります。不可侵権とは、外交使節の生命や身体などが侵されない権利です。大使館や総領事館も、この不可侵権により在留国の管轄権が及びません。
ここでは、日本で治外法権がある場所、治外法権の対象となる人についてご紹介します。
大使館や総領事館
日本にある大使館や総領事館には治外法権が及びます。大使館とは、国交が成立している外国に、自国の特命全権大使を駐在させて公務を執行する場所です。
総領事館は外国に滞在する自国民の窓口となる役所で、大使館と合わせて「在外公館」と呼ばれています。
どちらも不可侵権で守られ、大使館責任者の許可がなければ、在留国の人間は一切立ち入ることが許されません。
外国の元首やその家族
外国から来日する元首やその家族、および大使館・総領事館に在留する外交官やその家族にも治外法権が及びます。
これら外国からの使節団や外交官が仮に日本で犯罪や事故を起こしても、逮捕したり裁判にかけたりすることはできません。在留国が訴追や処罰することができるのは、本国が明示的に特権を放棄したときに限られます。