愛慕(あいぼ)
「愛慕(あいぼ)」とは、愛して、懐かしみ慕うことです。愛慕する相手に対して親しみを持つことはあっても、尊敬の念を持つニュアンスは少ないと考えられます。
・あの映画の主人公は母親に対する愛慕の情が強いように思えた。
・少年時代を過ごしたイギリスの風を愛慕する。
あい‐ぼ【愛慕】
[名](スル)愛して、懐かしみ慕うこと。「愛慕の情」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
傾倒(けいとう)
「傾倒(けいとう)」は傾き倒れることや傾け倒すことを意味しますが、ある物事に深く心を引かれて夢中になることや、ある人を心から尊敬し、慕うことも意味します。「崇拝」は心から傾倒する意味の言葉のため、「傾倒」と置き換えられることもあります。
・彼は夏目漱石に傾倒している。
・自然食に傾倒するというよりは、自然食にこだわる理念に傾倒しているようだ。
けい‐とう〔‐タウ〕【傾倒】
[名](スル)
1 かたむき倒れること。また、かたむけ倒すこと。
「其の館舎が火焔の中に、―するを見て」〈竜渓・経国美談〉
2 ある物事に深く心を引かれ、夢中になること。また、ある人を心から尊敬し、慕うこと。「漱石に傾倒している」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
心酔(しんすい)
「心酔(しんすい)」とは、ある物事に心を奪われ、夢中になることです。また、ある人を心から慕い、尊敬する意味でも使われます。「崇拝」には敬い尊ぶ意味があるため、文脈によっては「心酔」と言い換えられます。
・彼はトルストイに心酔しているため、文体も似てきた。
・彼女に何を言っても無駄だよ。彼女は彼に心酔しているから。
しん‐すい【心酔】
[名](スル)
1 ある物事に心を奪われ、夢中になること。「バロック音楽に心酔する」
2 ある人を心から慕い、尊敬すること。「トルストイに心酔する」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
心服(しんぷく、しんぶく)
「心服(しんぷく)」とは、心から尊敬して従うことです。「しんぶく」と発音することもあります。単に尊敬するだけでなく従う意味を持つため、「崇拝」する対象に従っているときは「心服」と置き換えられます。
・彼を師として慕い、心服する
・彼女があの先輩に心服しているのは、言動からも明白だ。
しん‐ぷく【心服】
[名](スル)《「しんぶく」とも》心から尊敬して従うこと。「師として慕い、心服する」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
崇拝を含む言葉をご紹介
名詞に「崇拝」をつなげて、特定の対象を崇拝することを示すことがあります。よく使われる言葉をご紹介します。
偶像崇拝
偶像崇拝とは、絵画・彫刻・自然物などの目で見えるものを信仰の対象として崇拝・礼拝することです。キリスト教やユダヤ教、イスラム教といった唯一神を崇める一神教では、偶像崇拝は否定される傾向にあります。
ぐうぞう‐すうはい〔グウザウ‐〕【偶像崇拝】
絵画・彫刻・自然物などの可視的対象物を信仰の対象として崇拝・礼拝すること。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教などでは厳しく否定される。偶像礼拝。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
先祖崇拝
先祖(せんぞ)崇拝とは、同じ家系に属する過去の人々を崇拝することです。祖先(そせん)崇拝と呼ぶこともあります。
先祖崇拝は日本古来の慣習として根付いており、正月や彼岸、お盆の時期などの年中行事、七五三や成人式などの通過儀礼とも深いつながりのある慣習です。また、先祖を崇拝することは、親や年長者などの自分の生命の基に恩や敬いの気持ちを持つことにもつながります。
英雄崇拝
英雄崇拝とは、英雄の優れた才能や武勇を褒めたたえ、尊ぶことです。神様や自然といった人以外の存在ではなく、実際に存在する人、あるいは存在した人を崇拝します。
えいゆう‐すうはい【英雄崇拝】
英雄のすぐれた才能や武勇を褒めたたえ、尊ぶこと。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
自然崇拝
自然崇拝とは、自然および自然現象に神秘的力や存在を認めて崇拝することです。たとえば、太陽崇拝や樹木崇拝などは、自然崇拝に該当します。
自然は太古の昔から存在したため、自然を恐れ敬う自然崇拝は、人類誕生後、比較的早い時点からある考え方と推測されるでしょう。自然崇拝と並んで比較的早い時点で誕生した考え方のひとつに、「アニミズム」があります。アニミズムとは宗教の原初的形態とされ、霊的存在への信仰を指すことが一般的です。
アニミズムでは、世界は物質的な身体を持たず、目に見えない霊魂や精霊の働きによって成り立っていると考えます。また、人も身体と霊魂から成り、霊魂が永遠に身体を離れた状態を「死」と呼びます。
しぜん‐すうはい【自然崇拝】
自然および自然現象に神秘的力や存在を認め、これを崇拝すること。太陽崇拝・樹木崇拝など。アニミズム(animism)
自然界の諸事物に霊魂・精霊などの存在を認め、このような霊的存在に対する信仰。英国の人類学者タイラーは、これを宗教の起源とした。→アニマティズム
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
崇拝の対象は千差万別!他人の思いを尊重しよう
崇拝する対象は、人によって異なります。特定の神様を信じて崇拝する人や、人間や偶像などの実際にある存在を崇拝する人、考え方やシステムといった実体として存在しないものを崇拝する人もいます。
人という存在が一人異なるのと同様、崇拝の対象が異なるのは自然なことです。他人の思いを頭ごなしに否定せず、尊重することが大切なのかもしれません。
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