「うだつが上がらない」の意味とは?

(c)AdobeStock
「うだつが上がらない」とは、地位や生活などがよくならないことや、ぱっとしないことを意味する表現です。たとえば、次のように使います。
・一生懸命仕事をしているが、いつまで経ってもうだつが上がらない。
・彼は口では大層なことを言うが、仕事をさせてみるとうだつが上がらない男だよ。
梲(うだつ)が上がら◦ない
地位・生活などがよくならない。ぱっとしない。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
そもそも「うだつ」とは?
うだつとは、建築に使われる用語です。建物の骨組みの一部、あるいは壁の一部を指して使われます。
骨組みを指すときは、棟木(むなぎ)と梁(はり)をつなぐ縦の部分が梲です。建物は空間の縦軸に柱、上部の横軸に梁を配置しますが、三角形の屋根の場合は盛り上がった部分に棟木が配置され、棟木と梁の間を梲が支えます。
壁を指すときは、三角形の屋根の梁よりも上の部分が梲です。また、建物の外側に張り出して設けた防火用の袖壁を指して「梲」と呼ぶこともあります。
うだつ【梲/卯建つ】
「うだち」の音変化。
1.建物の妻にある梁の上に立て、棟木を受ける短い束。
2.民家で、妻の壁面を屋根より高く造った部分。また、建物の外側に張り出して設けた防火用の袖壁。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「うだつが上がらない」の語源をご紹介
屋根を三角形の形状にしなければ、骨組みとしての「梲」も外壁としての「梲」も必要ありません。また、防火用の袖壁を設置しないときも、「梲」は必要ないと考えられます。
このような事情から、梲はすべての家に設けられたのではなく、一部の富裕な家にのみに設けられました。そのため、「うだつが上がる」は地位や生活がよくなることを指し、反対に「うだつが上がらない」は地位や生活がよくならないことや、ぱっとしないことを指したとされています。
また、建物の最上部の骨組みである棟木を上げるためには、梲が上がらなくてはいけません。そこから、「うだつが上がる」は「棟上げをする」という意味の大工言葉になり、転じて、志を得る意となったとされています。反対に「うだつが上がらない」は志を得ない、ぱっとしないの意味で使われるようになったと考えられます。
「うだつが上がらない」と類似した意味の表現

(c)AdobeStock
「うだつが上がらない」のように、地位や生活がよくならないことやぱっとしないことの意味で使われる表現には、次のものが挙げられます。
それぞれの使い方や意味、うだつが上がらないとのニュアンスの違いについて、例文を通してご紹介します。
鳴かず飛ばず
「鳴かず飛ばず(なかずとばず)」とは、何の活躍もしないでいる様子のことです。
・作家としてデビューしたらしいが、鳴かず飛ばずだ。
・せっかく一軍に昇格したのに、鳴かず飛ばずの状態が1週間続き、また二軍に下がってしまった。
地位や生活がよくならないことを意味する「うだつが上がらない」とは異なり、「鳴かず飛ばず」は活躍していないことを意味します。たとえば、会社員としていつまでも出世しないことは「うだつが上がらない」といえますが、「鳴かず飛ばず」とはいえません。
一方、プレゼンを出しても一度も採用されないことは「鳴かず飛ばず」といえますが、「うだつが上がらない」とは表現しません。また、鳴かず飛ばずには、将来の活躍に備えて行いを控え、機会を待っているという意味もあります。
・鳴かず飛ばずの下積み生活だが、いつかはお笑いで天下を取るつもりだ。
・オーディションに落ちてばかりの鳴かず飛ばずの生活だが、それでも俳優一本でやっていこうという気持ちは失われてはいない
将来に備えて機会を待つ意味の「鳴かず飛ばず」は、史記や呂氏春秋を由来とする「三年飛ばず鳴かず」と関連する表現です。三年間一度も飛ばず鳴かずにいる鳥は、ひとたび飛ぶと天まで上がり、ひとたび鳴けば人を驚かすというたとえから、大いに活躍する機会を待って長い間じっとしていることを指すようになりました。
芽が出ない
「芽が出る」とは、草木の芽が萌え出ることだけでなく、幸運が巡ってきて、成功の糸口が開けることを意味する表現です。そのため、「芽が出ない」は成功の糸口が開けないときに使われます。
・下積み生活が長く続いているが、一向に芽が出ない。
・努力したからといって成功するわけではない。いつまで経っても芽が出ない人もいる。
「芽が出ない」は成功や活躍を基準とした表現ですが、「うだつが上がらない」は地位や生活の向上を基準とした表現です。そのため、挑戦や下積みをしていても思うような結果が出ないときには、「うだつが上がらない」ではなく「芽が出ない」が適切といえます。
甲斐性がない
「甲斐性(かいしょう、かいしょ)」とは、物事をやり遂げようとする気力や根性、働きがあって頼もしい気性のことです。一般的に「甲斐性がある」といえば、経済的な生活能力があることを指します。反対に「甲斐性がない」は、経済的な生活能力が低いことを意味します。
・彼は甲斐性がなく、子どもの学費すら支払えないと常々言っている。
・「甲斐性なし」と罵られたが、実際のことなので反論しようがない
「うだつが上がらない」は経済的な生活能力に限った表現ではありませんが、地位や生活がよくないときは経済力も低いことが多いため、同じような状況を指していると考えられます。
伸び悩む
「伸び悩む」とは、伸びそうでいて思ったほど伸びず、期待されたところより低い水準で停滞する様子を指す言葉です。
・若手が伸び悩んでいる。
・小豆の相場が伸び悩む。
上のほうに行きそうで行かない様子は「うだつが上がらない」と同じといえます。しかし、「伸び悩む」は期待よりは低い水準であっても伸びている可能性がある点は、「うだつが上がらない」とは異なるといえるでしょう。
「うだつが上がらない」とは反対の意味で使われる表現

(c)AdobeStock
「うだつが上がらない」とは反対の意味で使われる表現としては、次のものが挙げられます。
いずれも地位や生活が向上したり、華々しい活躍をしたりするときに使われます。それぞれの使い方や意味を例文を通してみていきましょう。
錦を飾る
「錦を飾る」とは、美しい着物を着ることです。転じて、成功して美しく着飾って故郷へ帰ることを意味します。
・彼は成功し、故郷に錦を飾った。
・彼女の活躍は広く知られるようになった。10年ぶりに故郷に帰り、錦を飾ったらしい。
一花咲かせる
「一花咲かせる」とは、成功して、一時華やかに栄えることです。
・引退前にもう一花咲かせたい。
・一花咲かせるつもりで都会に出てきたが、日々の生活に追われているうちに夢を忘れてしまった。
立身出世する
「立身出世する」とは、社会的に高い地位を得て、世に認められることです。
・立身出世をしたが、まだ満足はしていない。
・お金を儲けようとひたすらに働いていたら、いつの間にか立身出世をしていた。
「うだつが上がらない」は使う場所・人に注意が必要

(c)AdobeStock
「うだつが上がらない」は地位や生活がよくならないときに使う言葉のため、決してポジティブな表現ではありません。
自分のことについて述べるときに使うのは問題はありませんが、他人に使うのは望ましいとはいえません。話す場所や相手に注意をして使いましょう。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock