スエード素材のアイテムを自宅で洗いたくはないですか? 特にエマールを使った水洗いが可能なのか疑問を持つ人は多いでしょう。スエードは繊細な素材のため、間違った洗い方をすると質感が損なわれることがあります。
この記事では、創業80余年の歴史を持つ京都発祥の染み抜き・お直し専門店である「きものトータルクリニック吉本」さんにエマールでの洗濯が適しているのか、洗う際のポイント、さらに水洗いが難しい場合のお手入れ方法をお聞きしました。スエードを長く美しく保つための正しい知識を身につけましょう。
スエードは水洗いできる? 素材の特性を理解しよう
まずは、スエード素材の特性と、水洗いの可否について解説します。
スエードの特徴と水洗いの影響
スエードは、動物の革の裏面を起毛させて作った、細かな起毛が特徴の素材です。この独特の風合いは非常にデリケートで、水分を含むと繊維が硬化しやすく、質感が損なわれてしまい、縮みや色ムラが発生するリスクがあります。
一方、合成皮革のスエード(フェイクスエード)は、ポリエステルやポリウレタンなどで作られた人工素材です。本物のスエードに似た柔らかい起毛感があり、見た目も手触りもそっくりです。
天然スエードに比べて価格が安く、お手入れが簡単で、水に強いのも特徴。ただし、高温や経年劣化には注意が必要です。フェイクスエードでも誤った方法で洗濯すると型崩れや表面の毛羽立ちが生じる可能性があります。
スエードは水分だけでなく、摩擦や直射日光にも弱い素材です。水洗いを検討する際は、まず素材の性質を理解し、慎重に判断することが大切です。

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水洗い可能なスエードと不可能なスエードの違い
スエードの水洗い可否を判断する際は、まず「洗濯表示」の確認が欠かせません。洗濯表示に「水洗い不可」や「ドライクリーニング推奨」と記載されている場合は、自宅での水洗いは避けるのが安全です。
特に、天然スエードは水に非常に弱いため、誤って水洗いすると硬化や色落ちが起こりやすいです。一方、合成スエードの場合は、製品によっては手洗いが可能なケースもあります。
また、スエードの質感や色によっても水洗いのリスクが異なります。柔らかく薄いものは水に弱く、濃い色は色落ちのリスクが高まります。素材の判断に迷う場合は、購入時のタグやメーカーの公式サイトで情報を確認するのがおすすめです。
さらに、スエード製品の一部には「水に強い加工」が施されている場合もあります。その場合でも、洗剤の選び方や洗い方を誤るとダメージが生じるため、必ず注意が必要です。
エマールはフェイクスエードの水洗いに適している?
エマールは、おしゃれ着用の中性洗剤として広く知られています。しかし、フェイクスエードのようなデリケートな素材にも適しているのでしょうか。ここでは、エマールの特性と、フェイクスエードへの影響、使用時の注意点について解説します。
エマールの成分とフェイクスエードへの影響
エマールは、中性洗剤としてウールやシルクなどのデリケートな素材向けに開発されています。その特徴は、洗浄力が穏やかで繊維にやさしいことです。フェイクスエードも同様に繊細な素材です。比較的水に強いため手洗いが可能なケースも。その際はエマールのような中性洗剤を使うようにしましょう。ただし、濃度の高い洗剤液での洗濯は、繊維への負担が大きくなるため、洗剤を薄めて優しく扱うことが大切です。

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フェイクスエードにエマールを使用する際のポイント
エマールでフェイクスエードを洗う場合、いくつかの注意点があります。まず、洗剤は必ず規定量よりも少なめに使用し、ぬるま湯でしっかりと薄めることが大切です。洗剤の濃度が高いと、繊維に残留してしまい、乾燥後に硬化する恐れがあります。
次に、洗い方にも工夫が必要です。フェイクスエードは摩擦に弱いため、ゴシゴシと強くこすらず、優しく押し洗いをするのが基本です。スポンジなど柔らかい素材を使い、汚れた部分だけを丁寧に洗うようにしましょう。
すすぎは最小限にとどめ、洗剤が残らない程度に軽く流します。すすぎすぎると繊維の油分が失われ、乾燥後にパサついてしまう原因になるので注意しましょう。最後に、タオルで優しく水気を取り、形を整えて自然乾燥させると、フェイクスエードの質感が損なわれにくくなります。
このように、エマールはフェイクスエードの洗濯に使用できる場合がありますが、正しい方法と慎重な扱いが不可欠です。誤った方法で洗うと風合いが失われる可能性があるため、事前の準備と手順をしっかりと確認しましょう。
フェイクスエードを水洗いする正しい手順
フェイクスエードを自宅で水洗いするのは不安が伴いますが、正しい手順を守れば風合いを損なわずにケアすることが可能です。ここでは、準備段階から洗い方、乾燥・仕上げのポイントまで、具体的に解説します。
準備するものと前処理の方法
フェイクスエードを安全に水洗いするには、事前準備がとても重要です。まず、以下のアイテムを用意しましょう。
・中性洗剤(エマール):フェイクスエードに優しい洗浄成分が肝要です。
・ぬるま湯:30℃程度のぬるま湯が適しています。熱すぎると繊維が傷む恐れがあります。
・柔らかいスポンジ:表面を傷めずに優しく洗えるものを選びましょう。
・タオル:洗濯後に水気を優しく取るために使用します。
・柔らかいブラシ:カシミヤ用など柔らかめの洋服ブラシがおすすめです。洗濯前後に毛並みを整えるためにもあると便利です。
洗濯の前に、柔らかいブラシで表面のホコリや汚れをしっかり落としておくことが大切です。シミがある場合は、ぬるま湯で薄めたエマールを綿棒につけ、軽く叩くようにして汚れを浮かせましょう。ここで無理にこすると繊維が傷む可能性があるため、優しく処理するのがポイントです。
フェイクスエードの水洗い手順
準備が整ったら、次の手順で丁寧に洗っていきましょう。
1. 洗剤液の準備
洗面器に30℃程度のぬるま湯を張り、エマールを規定量よりやや少なめに入れてよく溶かします。洗剤の濃度が高いと繊維を傷める原因になります。
2. 優しく洗う
柔らかいスポンジを洗剤液に浸し、しっかりと絞ってからフェイクスエードの表面を優しく押し洗いします。このとき、ゴシゴシと強くこすらないよう注意してください。特に汚れが目立つ部分だけを重点的に洗うのがコツです。
3. すすぎは最小限に
洗剤が残らないように軽くすすぎます。ただし、過剰なすすぎは繊維の油分を失わせてしまうため、洗剤のぬめりが取れる程度で止めるのがポイントです。
4. 水気を優しく取る
洗い終わったら、乾いたタオルで優しく押さえて水気を取ります。絞ったりねじったりすると繊維が傷むため、押し当てるようにして水分を吸収させましょう。

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乾燥と仕上げのポイント
フェイクスエードは乾燥の方法によって仕上がりが大きく変わります。正しい乾燥と仕上げを行い、元の風合いを取り戻しましょう。
1. 形を整えて自然乾燥
洗濯後は型崩れを防ぐため、靴であれば新聞紙を詰め、ジャケットならハンガーにかけて形を整えます。直射日光は避け、風通しのいい日陰で自然乾燥させましょう。ドライヤーや乾燥機の使用は、縮みや硬化の原因になるため避けてください。
2. 乾燥後のケア
完全に乾いた後は、柔らかいブラシで毛並みを丁寧に整えます。ブラッシングすることで、起毛の柔らかさを取り戻し、自然な質感に仕上げることができます。
3. 防水スプレーで仕上げる
最後に防水スプレーを使用すると、水や汚れからフェイクスエードを守り、きれいな状態を長持ちさせることができます。スプレーは適切な距離を保ち、均一に吹きかけましょう。
このように、フェイクスエードを自宅で安全に水洗いするには、準備段階から丁寧な対応が求められます。特に洗い方や乾燥方法を誤ると、繊維の劣化につながるため注意が必要です。時間はかかりますが、正しい手順を守れば美しい仕上がりが期待できます。
最後に
フェイクスエードをエマールで水洗いすることは可能ですが、正しい方法を守らないとダメージを受ける可能性があります。水洗いが難しい場合は、専用ブラシや防水スプレーを活用することで、美しい状態を保つことができます。フェイクスエードのケアを適切に行い、長く愛用できるようにしましょう。
※洗濯をする前に絵表示を必ずご確認ください
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