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2018.12.07

「ひとりはみんなのために」が通用しない後輩。先輩としてどうするべき?【原田曜平の「後輩世代のトリセツ」】

 

サイバーエージェント次世代生活研究所・所長の原田曜平さんが、若者のインサイトを発掘する必要性について語ります。

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「ひとりはみんなのために」が通用しない若者を、どう動かす?

「結果が出せて、好かれる上司になりたい」、そう思っていても、現実には目の前の若手社員の不満の解消や転職の引き留めに苦労されているのではないでしょうか。「採用」がテーマだった前回を受け、せっかく採った若者たちをどう育てたらいいのか。今回は「マネジメント」に焦点を当てます。 今、労働者としての若者に意欲をもたせようとするのは至難の業です。頑張ったところでボーナスが年間10万、20万円上がる程度の見返りなら、そこそこほどほどに働けばいい…というのが、彼らの本音です。

以前、箱根駅伝4連覇を達成した青山学院大学・陸上部の原晋監督と対談した際に、「今の子たちは表面上はとても素直で穏やかになっている」とのお話がありました。「自分たちバブル世代は、ガンを飛ばしたり、挑発的だったり。ただし、いざ監督に『やれ』と言われればその命令は絶対だった」と。どんなに見た目は反抗的でも、中身は縦社会がしっかりあったということなんですね。 現代では、その逆。表面上はやわらかくても、中身は年功序列がなくなって個人主義化しています。これが悪いほうに出ると利己主義的になって、「わかりました」と調子のいいことを言いながら従わないので、マネジメントする側は悩んでしまいます。

やわらかくなっているのは、周囲の友達がみんなSNSをやっていて、社交の場が増えていることが要因です。パーティばかりやっているアメリカの人がフレンドリーなのと似ていて、一見社交的で浅く広くつきあうのが上手になっている。だからそれに騙されて、本質とのギャップにびっくりしてしまうんですね。特に面接など短時間の場では彼らの本質を見抜けない企業が多く、のちのち長時間一緒に働くことになる先輩からすれば「よくこんな子を採ったな」というような学生や若手を高評価して採用してしまい、苦労する現場からの悲鳴が絶えません。


▲さまざまな調査のために、一般の高校生や大学生たちと一緒に地方出張することもあります。浜松では、ご当地グルメの餃子を囲んでひと息。ミーティングの場では、基本的に相手の否定は避けます。否定するときはそれ以上に肯定することが大事だと痛感! 他にも野球観戦に行ったり、親しい芸人さんや文化人の方との懇親会に一緒に参加したり、イベントも若者たちのことを知って打ち解けられる大事な時間です。

若者を本気にさせるには、自発性を引き出すこと

では、個人主義の若者にどんなアプローチをするべきか。原監督曰く、〝for the team〞と言っても今の子たちは頑張らない。仲よくはしていても、自分のためにならないと動かないと。たとえば、面談で選手に「30歳のときに、どういう人生を送っていたいの?」と聞くと、「いい会社に入って実業団に入って、引退もチラついているんだけどコーチのポジションがあって、できれば一生陸上に関わる仕事をしていきたい」という話が出てくる。自発的に出てきた欲求に対して、「じゃあ、そういう選手になるために逆算して今はどんな練習をすればいいのか、どんな目標をもつべきか」と、どんどんブレイクダウンさせ、さらには選手同士で議論させて、自分の目標を立てさせるそうなんです。その「for me」の足し算の総合点が前年度と一緒、もしくはそれを超えれば今年も箱根駅伝で優勝できる…という考え方で指導しているのだとか。

ポイントは、トップダウンではなく、ボトムアップであること。プロ野球・日本ハムファイターズの栗山英樹監督も同じ話をしていて、「僕らのころは、指導者に『こう振れ』と言われたらイヤでも振っていた。今の子は絶対に振らない」と。やはりひとりひとり面談の時間をとって、本人の方向性に合わせて目標を立てているのだとか。 ビジネスの場ではこれまで多くの企業で、売り上げをいくら上げるという目標をチームで掲げて突進する戦略がとられてきました。薄利な取引先相手でも一生懸命営業して、組織の歯車として働いた。でも今の若者は、「そんな会社、来年辞めてしまうかもしれない」「なんで売り上げが低い顧客にまで頭を下げて、靴すり減らして通わないといけないんだ」という感覚。営業マンとしてどうなっていきたいか、というところからお尻を叩いていかないといけません。

ひとりひとりを見る。そして、教えるではなく支える。権限を彼らに与えて、自発的に動くように仕向ける。ただし、完全に丸投げしてしまうのはダメで見ていてあげないといけない――。人が立てた目標を今の若者に達成させるのは、それぐらい大変です。上司として「やれ」と言うなら、それがロジカルであれ、エモーショナルであれ、理由を説明して納得させられないといけない。今の管理職に大事なのはプレゼン能力なのです。

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マーケティングアナリスト

原田曜平

1977年生まれ。慶応大学商学部卒業後、(株)博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーに就任し、世界中で若者研究及び若者向けのマーケティングや商品開発を行う。2018年12月より(株)サイバーエージェントにて、サイバーエージェント次世代生活研究所・所長に就任。若者研究とメディア研究を中心に、次世代に関わる様々な研究を実施。また、実際の若者たちと広告・プロモーション開発までを担う予定。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。「さとり世代」、「マイルドヤンキー」、「伊達マスク」などの流行語の名づけ親。主な著書に「さとり世代」「ヤンキー経済」<「これからの中国の話をしよう」「力を引き出す」「平成トレンド史」「若者わからん」「それ、なんで流行ってるの?」などがある。現在、TBS「ひるおび」レギュラー。

Domani2018年9月号 新Domaniジャーナル「後輩世代のトリセツ」 より
本誌取材時スタッフ:構成/佐藤久美子



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