「百聞は一見にしかず」の意味

はじめに、「百聞は一見にしかず」の意味や由来、具体的な使い方を説明します。また、「百聞は一見にしかず」の続きも知っておくと、今後の教訓として役に立つかもしれません。
「百聞は一見にしかず」の意味と使い方
「百聞(ひゃくぶん)は一見にしかず」は、多くの伝聞や知識よりも自分の目で一度見たほうが状況を正確に把握できるという意味です。この言葉は、たとえば以下のような使い方ができます。
【例文】
・商品を選ぶなら説明書より「百聞は一見にしかず」、実物を見に行ってみよう
・ネットの評判より、「百聞は一見にしかず」なので自分の目で確かめたい
「百聞」とは「数多く聞くこと」。それよりも、自分が現場で見聞きしたり体験して得た1次情報のほうがずっと信用できる、というのは現代にも通じる知恵ですね。
百聞ひゃくぶんは一見いっけんに如しかず
《「漢書」趙充国伝から》人から何度も聞くより、一度実際に自分の目で見るほうが確かであり、よくわかる。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
「百聞は一見にしかず」の由来
「百聞は一見にしかず」は、古代中国の「漢書」に書かれた武将・趙充国(ちょうじゅうこく)のエピソードに由来します。
漢に遊牧民が攻めてきたとき、司令官の趙充国は皇帝からどう戦うか尋ねられて次のように答えました。
「百聞は一見に如かず、兵は遠くにして測り難し。臣願わくは馳せて金城に至り、図して方略を奉らん」(遠く離れた場所で前線の様子を知るのは難しいことです。私が金城に行き、敵の状況を見てから作戦を立てます)
実際に行ってみると聞いていた情報と状況が違い、趙充国は現場の情報を基に立てた作戦で勝利します。ここから「百聞は一見にしかず」の故事成語が生まれたといわれています。
「百聞は一見にしかず」の続きとは?
ここからは、知っておくと面白い「百聞は一見にしかず」の後に続くとされる言葉を紹介します。
百見は一考にしかず
(見るだけでなく、自分で考えることが大事だ)
百考は一行にしかず
(考えるだけでなく、行動することが大事だ)
百行は一果(効)にしかず
(行動するだけでなく、結果を出すことが大事だ)
百果(効)は一幸にしかず
(結果を出すだけでなく、幸せに繋ぐことが大事だ)
百幸は一皇にしかず
(自分の幸せだけでなく、みんなの幸せを考えることが大事だ)
興味深い内容ですが、この言葉は『漢書』には記載がなく、後世に創作されたものと考えられています。
「百聞は一見にしかず」を現代で実践するなら?

「現場に行って体験する」といった基本的な使い方から画像や動画を使った方法まで、「百聞は一見にしかず」を現代風に活用する方法を紹介します。生活に取り入れれば「百聞は一見にしかず」の重要さが実感できるはずです。
知識だけに頼らず現場に行って体験する
本を読んだり、人に話を聞いたりすることは、今でも重要かつ意味のある情報収集方法ですが…伝聞の知識では時代遅れになったり、伝えた人の主観が入ったりする恐れがあります。
ただしそれは、テレビやインターネットの情報にもいえること。ニュースの報道などでも、製作者が切り取ったものだけが映ることに注意が必要です。
特に近年はAIの発達によって、真実味のあるフェイクニュースも容易に作成できるようになりました。何が本当かわからない状況では、多くの2次情報より自分の目で見た情報のほうが信頼性は高いといえるでしょう。
学習に画像や動画を利用する
現代は映像技術やインターネットが発達し、遠くのものや過去のものを画像や動画で見ることも可能です。
画像や動画が1次情報であるとは断言できませんが、たとえばお菓子のレシピを文字で読んで完成形を想像するよりも、できたお菓子の写真を見たほうが正確な外見がわかります。
お菓子を作っているところを動画で見ると、側で見ているのと似た体験ができるでしょう。さまざまな学習に画像や動画を利用すれば、文章だけで学ぶより理解が早くなり効率的です。
説明に画像や実物を用いる
相手に情報を伝える際は、言葉で長々と説明するより画像や実物を見せたほうが早い場合があります。一例として商品のプレゼンテーションでは、実物を使って見せることで、伝えたい事柄がより理解されやすくなるのです。
また、新人教育など、人に新しい仕事を教えるときにおいても「百聞は一見にしかず」が活用できるでしょう。細かに説明するより、作業手順を実際に見せたり、相手に体験してもらうと覚えが早くなるはずです。
これは科学的にも裏付けられており、視覚情報は聴覚や文字情報よりも理解・記憶されやすいことがわかっています。
「百聞は一見にしかず」と似た言葉

「百聞は一見にしかず」の類語には「論より証拠」「聞いて極楽、見て地獄」などがあります。それぞれの意味や由来、使い方をチェックしましょう。
論より証拠
「論より証拠」とは「事実を明らかにするには、時間をかけて議論するよりも証拠を示したほうが早いこと」です。
【例文】
・彼の無実を証明するには「論より証拠」で具体的な物証を探すしかない
・会議で長々と議論するより「論より証拠」だ。実験結果を確認するほうが早い
・どちらの案が良いか迷うなら、「論より証拠」で試作品を比較しよう
この言葉の由来は「江戸いろはかるた」の「ろ」の札や、人形浄瑠璃『神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)』のせりふが元という説があります。
聞いて極楽、見て地獄
「聞いて極楽、見て地獄」は「人に聞いた話では極楽のように思えたのに、実際に見てみると地獄のようにひどかった」という意味です。うわさと現実が大きく違い、現実のほうが悪かった場合に使います。
【例文】
・実際の報酬は話と全く違っていた。「聞いて極楽、見て地獄」だ
・説明会では理想的な職場に思えたが、現実は「聞いて極楽、見て地獄」の超激務だった
こちらも「江戸いろはかるた」の「き」の札が由来だという説があります。絵札には、遊廓(ゆうかく)にいる遊女の姿が描かれており、「良い暮らしができる」と言われて売られたものの、実際に見た遊郭は地獄のようだったことを表しています。
まとめ
-
「百聞は一見にしかず」は、伝聞や本の知識は必ずしも当てにならないという意味を持つ
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何事も知識を得るだけでなく、実際に体験することが大事である
- 学習や説明する際にも「百聞は一見にしかず」が当てはまる。画像や体験を活用しよう
現代には情報があふれ、インターネットで検索すれば簡単に調べられます。しかし、その情報が事実かどうかはよく確かめる必要があるでしょう。事実を確かめる一つの方法は、自分の目で物事を見ることです。「百聞は一見にしかず」は、現代人こそ心に留めておきたい故事成語といえます。
メイン・アイキャッチ画像/(c)Adobe Stock
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Domani編集部
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