「言質をとる」の基礎知識

会話の中で使用する前に知っておきたい、「言質をとる」の基礎知識を解説します。意味合いや使うときの注意点を確認し、正しく使えるようになりましょう。
「言質をとる」の意味
そもそも「言質」とは、「あとで証拠にできる言葉」のこと。契約を反故にされたり合意内容をひっくり返されたりしないように、約束の裏付けとして用いられます。
げん‐ち【言質】
《「ち」は人質や抵当の意》のちの証拠となる言葉。ことばじち。「交渉相手の言質を取る」「不用意に言質を与える」
[補説]「げんしち」「げんしつ」は誤読から生じた慣用読み。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
「言質をとる」とは、相手とのやり取りの中から約束の証拠となる言葉を導き出すことを指します。「しっかりとした証拠をとっておく」という強いニュアンスがあるため、合意相手に対して不信感があるときに使用されがちです。
なお、「言質」の正式な読み方は「げんち」です。「げんしつ」や「げんしち」という読み方は誤用なので注意しましょう。
「言質をとる」の例文
続いて、「言質をとる」という言い回しを使用した例文を紹介します。
【例文】
・口頭での約束は後々トラブルに発展することがあるので、必ずメールで言質をとるようにしています。
・プロジェクトの納期について、先方から確かな言質をとっておく必要があるでしょう。
・正式な契約を結ぶ前に、追加費用の発生について担当者から言質をとりました。
・今週末に迫る納期を厳守するように、開発チームのリーダーから言質をとってきてください。
・商談中に不用意な発言をすると、相手に言質をとられかねないので慎むべきです。
「言質をとる」を使うときの注意点
「言質をとる」という言い回しは、主にビジネスシーンで使用されます。「約束や協定を反故にされないよう証拠を残しておく」といったニュアンスがあるため、友だちと遊びの約束をするときのようにカジュアルな場面で使ってしまうと、相手にあらぬ誤解を与える可能性があります。
また、たとえビジネスシーンであったとしても、「言質をとる」という言い回しを使うときは配慮が必要です。相手との関係性によっては、相手に不信感や警戒心を与えるおそれがあります。
「言質をとる」の類語

ここからは、「言質をとる」の言い換え表現として使える言い回しを3つ紹介します。「言質をとる」を使うと「意味が伝わらなさそう」「ちょっとニュアンスが強すぎる」という場合には、言い換え表現を上手に使って、真意が伝わるように工夫しましょう。
確約を得る
確約とは「明確な約束事」を指す名詞です。「約束」と意味が似通っていますが、「確約」の方がより約束としての確実性が高いといえます。
確約を得るとは「確かな合意を結ぶこと」で、「言質をとる」よりも柔らかなニュアンスを表現できます。「確約を得る」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
・クライアントからの要望をすべて叶えるのは難しいため、今回は仕様変更を行わないという確約を得てほしいと考えています。
・システム導入後の運用サポートについて、担当者から24時間対応するとの確約を得ました。
・契約前に先方から確約を得られたため、プロジェクトを安心して進めることができました。
証言をとる
証言とは「事実を証明するため、自分が体験したり、見聞きしたことを相手に伝える言葉」です。たとえば、裁判で証人が供述することも「証言」と言い表しますよね。
証言をとるとは「相手から、ある事柄の裏付けとなる言葉を引き出すこと」を表す言い回しです。ちなみに、「証言を得る」と言っても同じニュアンスで伝わります。「証言をとる」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
・ハラスメント問題解決に向け、第三者委員会は関係者一人ひとりから個別に証言をとることにしました。
・製造工程に問題がなかったか確かめるには、現場の作業員から証言をとる必要があるでしょう。
・彼が起こしたトラブルについて確認したいので、まずは指導係の○○さんから証言をとりましょう。
約束を引き出す
約束とは「相手との間で取り決める事柄」のことです。人と人の間で交わされるものと、社会や組織を相手に交わされるものとがあります。
約束を引き出すは、「相手に働きかけて、『必ずそうする』という言葉を引き出すこと」を表現しています。それを踏まえて以下の例文をチェックしましょう。
【例文】
・粘り強い交渉の結果、ついに先方から契約締結の約束を引き出すことに成功しました。
・資金提供の条件として、「事業計画を四半期ごとに報告する」という約束を引き出しました。
・今回の商談の最大の目的は、来年度の継続的な取引に関する正式な約束を引き出すことです。
まとめ
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「言質をとる」とは相手からのちの証拠となる言葉を引き出すこと
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「言質をとる」は使い方に注意が必要な表現といえる
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「言質をとる」の類語は「確約を得る」「証言をとる」「約束を引き出す」など
「言質をとる」とは、交渉相手や取引相手から約束や合意の根拠を引き出し、のちの証拠を確保することを指す表現です。「相手が約束を破るかもしれない」という懸念があるときに使われがちな言葉であるため、使用する際は相手や状況に注意しましょう。
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Domani編集部
Domaniは1997年に小学館から創刊された30代・40代キャリア女性に向けたファッション雑誌。タイトルはイタリア語で「明日」を意味し、同じくイタリア語で「今日」を表す姉妹誌『Oggi』とともに働く女性を応援するコンテンツを発信している。現在 Domaniはデジタルメディアに特化し、「働くママ」に向けた「明日」も楽しむライフスタイルをWEBサイトとSNSで展開。働く自分、家族と過ごす自分、その境目がないほどに忙しい毎日を送るワーキングマザーたちが、効率良くおしゃれも美容も仕事も楽しみ、子供との時間をハッピーに過ごすための多様な情報を、発信力のある個性豊かな人気ママモデルや読者モデル、ファッションのみならずライフスタイルやビジネス・デジタルスキルにも関心が高いエディターたちを通して発信中。
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