「柳に雪折れなし」の意味と使い方

まずは「柳に雪折れなし」の基本的な意味と由来、似た意味の言い換え表現を紹介します。例文を使って、正しい使い方もチェックしましょう。
「柳に雪折れなし」の基本的な意味
「柳に雪折れなし」とは「柔軟なものは弱いように思われがちだが、実は剛直で強そうに見えるものよりも、困難を乗り越えやすい」ということわざです。
「柳」は枝がしなやかに垂れ下がる木として知られ、その性質がことわざの意味と結びついているのです。
雪の多い地方では、木が積雪の重みで折れないように支えを作る風習があります。しかし、枝が柔らかくしなう柳が自然に雪を振り落とし、支えを作らなくても枝が折れないことから生まれた表現ともいわれます。
なお、以下の引用を見てもわかるように「柳の枝に雪折れなし」ともいいます。
柳の枝に雪折れなし
柳の枝はよくしなうので雪が積もっても折れることがない。柔軟なものは、一見弱々しく見えるが、むしろ剛直なものよりもよく苦難に耐えることのたとえ。
『ことわざを知る辞典』(小学館)より引用
「柳に雪折れなし」の使い方と例文
「柳に雪折れなし」は、主に人の性質や生き方のたとえとして用いられます。例文は以下のとおりです。
一般的に、パワフルな人や自分を貫こうとする意志の固い人が「強い人」といわれます。しかし、パワーで押し切るタイプの「強い人」は、しばしば問題に真っ向から挑みすぎて疲れ果てやすいのが弱点です。
一方で、柳が雪の重みで折れにくいように、柔和なしなやかさで困難を乗り越えていく人もいます。一見弱く見える人が、パワフルな人よりもかえって粘り強さを見せるときに「柳に雪折れなし」と表現します。
「柳に雪折れなし」と似たことわざ
「柳に雪折れなし」と似たことわざはいくつかあります。代表的な「柔よく剛を制す」「柳に風」「堅い木は折れる」を使った例文を紹介します。
どれもほとんど「柳に雪折れなし」と同じ意味で使われます。「堅い木は折れる」は、柳ではなく堅い木のもろさのほうに着目した「柔軟性のないものは折れやすい」という意味の定型句です。
柔能く剛を制す(じゅうようくごうをせいす)
《「三略」上略から》しなやかなものは、かたくて強いものの鋭い矛先を巧みにそらして、結局は勝利を得る。転じて、柔弱なものが、かえって剛強なものに勝つ。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
柳に風(やなぎにかぜ)
柳が風になびくように、逆らわずに穏やかにあしらうこと。「柳に風と受け流す」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
「堅い木は折れる」は、堅い木ほど折れやすく、壊れやすいことをたとえたことわざです。人について使う場合は、ふだん頑固で強情な人が、ひとたび気力を失うと意外にもろい面を見せたり、無理を重ねてきた頑張り屋の人が限界を迎えてしまったりすることを指します。
「柳に雪折れなし」の柔軟さと八方美人・優柔不断の違いは?

「柳に雪折れなし」は、柔軟さの欠点を指して使われることはなく、肯定的な意味で用いられることわざです。「柳に雪折れなし」といわれる柔軟さと、「八方美人」や「優柔不断」の違いを押さえましょう。
柔軟さと八方美人の違い
「柳に雪折れなし」が示す〝柔軟さ〟とは、状況に応じて考え方や対応を変えられる姿勢のことです。
じゅう‐なん〔ジウ‐〕【柔軟】
[形動][文][ナリ]
1 やわらかく、しなやかなさま。「柔軟な身のこなし」
2 一つの立場や考え方にこだわらず、その場に応じた処置・判断のできるさま。「柔軟な態度」「柔軟に対応する」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
一方、「八方美人」は常に相手の機嫌を取ろうとする人のことで、主に悪評として使われます。
はっぽう‐びじん〔ハツパウ‐〕【八方美人】
《どこから見ても難点のない美人の意から》だれに対しても如才なく振る舞うこと。また、その人。非難の気持ちを込めて用いることが多い。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
柔軟さを評価される人と八方美人の違いは、意見や立場における一貫性の有無と、自分の意見をはっきり言えるかどうかです。
どちらも状況に合わせて臨機応変に振る舞う点では共通していますが…八方美人のように、その場その場で相手に合わせて意見を変えてしまう人は、いずれ信用を失いやすくなります。
柔軟さを評価されるには、重要な部分で一貫した方針を示すことが必要です。そのためには、他の人の意見を聞きつつも、言うべきことをはっきり主張する態度が求められます。
柔軟さと優柔不断の違い
優柔不断は「意志が弱いために、いつまでも迷ってなかなか決断できないこと」です。柔軟な人も、他人の意見に耳を傾け多角的な視点を大事にするところから、決断に迷うことが多いかもしれません。
ゆうじゅう‐ふだん〔イウジウ‐〕【優柔不断】
[名・形動]気が弱く決断力に乏しいこと。また、そのさま。「優柔不断な(の)態度」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
柔軟さを評価される人と優柔不断な人を分けるのは、決断の仕方です。優柔不断な人はいつまでも決められず、結局他の人に判断を任せたり周囲に流されたりしてしまいます。
柔軟な人はたとえ迷っても、最後は自分で決断するものです。自分の考えをしっかり持ち、ストレスのかかる状況でも冷静に対応できる能力があります。
「柳に雪折れなし」ってどんな人

「柳に雪折れなし」とは、柔軟さをうまく活かして困難を乗り越える人や状態を指します。どのような柔軟さを発揮すれば「柳に雪折れなし」といえるのか、特徴を3つ解説します。
人の話を聞いて学びにする
「柳に雪折れなし」といわれるような人は、人の話をよく聞いて自分の学びにします。上司や周囲のアドバイスなど、周囲の意見を積極的に吸収するので自分の足りないところに気付きやすく、成長も早いのが特徴のひとつです。
また、自分と意見の違う人の話も頭から否定せず、参考にすることができます。視野が多角的なので問題の解決方法が見つかりやすく、臨機応変に対応できるのが強みです。
このように「柳に雪折れなし」といわれる人には、さまざまな人から知恵を借りられる柔軟さがあります。
自分のやり方にこだわらず軌道修正する
「柳に雪折れなし」といわれる人は、自分のやり方にとらわれず、目標達成に必要な方法を柔軟に選べます。
予想しないトラブルや計画の不備などがわかったとき、すぐにあきらめたり、1度立てた計画に固執したりすることはありません。軌道修正を恐れないチャレンジ精神を持っています。
こうした柔軟さのメリットは、突然の変更やトラブルにも素早く対処し、行動した結果を見て再修正が容易となることです。必然的に、結果も出やすくなります。
コミュニケーションを大事にする
「柳に雪折れなし」といわれる人は、視野が広く多様性の大切さを理解しているので、自分と意見の異なる相手でも尊重した話し方ができます。
頑固に自分の意見を押し付けるでも、相手に流されるでもなく、上手く意見をすり合わせられるのは大きな強みです。普通なら無理だと思われるような契約を成功させ、驚かれるかもしれません。
また、丁寧なコミュニケーションの積み重ねにより味方を増やし、周囲からの信頼を得られるのも特徴です。
まとめ
-
「柳に雪折れなし」とは、自分の考えにこだわらず臨機応変に適切な判断を下す人や状態のこと
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「柳に雪折れなし」といわれる人は、丁寧なコミュニケーションで周囲の信頼を得ることができる
- 「柳に雪折れなし」と八方美人や優柔不断の違いは、必要なときに自己主張できるかどうか
「柳に雪折れなし」とは、一見弱く見える柔軟なものが、剛直で強そうに見えるものよりも、むしろ困難を乗り越えやすいという意味のことわざです。この機会に覚えて、日常や仕事で活かしてみてください。
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Domani編集部
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