男性の固定概念も変える政府のチャレンジ
――男女共同参画にとって大切なのは、何も女性の意識ばかりではありません。現在、多くの企業でマジョリティであり、意思決定をしているのは男性。ですから「男性の意識改革」はとても重要です。内閣府では、これに対して「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」を発足させ、活動を始めています。そして男性の意識といえば、パワハラやセクハラなどまだまだ根強い問題も。前回に引き続き、内閣府男女共同参画局長の池永肇恵(としえ)さんから、政府の取り組みをお話しいただきました。
前回のお話は:女性の賃金は男性の25%オフ!投資家も注目する「女性活躍推進」の現実
お話のポイント
・女性の活躍を加速する「男性リーダーの会」
・AI社会に向けて理工系女子を応援
・「パープルリボン」で女性への暴力を根絶!
・DVやセクハラの相談支援を充実
男性や社会一般の固定概念にも働きかけ
「さまざまな取り組みの中でも、女性を取り巻く企業のリーダーたちの役割はとても大きいものです。そこで、男性リーダーの会というのを内閣府が声がけをし、現在ネットワークを構築しているところです。活動の内容はこちらで詳しく紹介していますので、ご覧いただくとして、平成30年9月末時点で190名を超える男性リーダーが賛同しています。
そして、その他にも私たちが力入れているのが、理工系分野の進路選択を応援しようという活動『理工チャレンジ』です。日本の場合、理工系の学部等に進学する、さらに理工系で職を得て企業で働く女性の割合が、国際的に低いことは明白です。日本の女性が理工系科目が苦手かというとそんなことなくて、学力テストOJTを見ると、むしろ点数で外国の女子生徒に比べて点数は高いし、男女差が特段に大きい訳でもありません。ということは、『理系は男子のもの』という意識があるのではないか。理工系分野を選択したあとにどうなるかのイメージがわかないのではないか。そう考えました。
内閣府としましてはまず、女子生徒の理工系分野への進路選択(チャレンジ)を応援する団体を募って、夏休み中にイベントをやっていただいています。IT化、IoT、AIなど、過去にも増して理工系の知識、理工系的な素養というものが重要になっている今。具体的にどんな仕事があるのか、先輩たちはどんな活躍をしているのか、理工系の仕事の面白さを知ってもらう活動をしています」
DVやセクハラの相談窓口は急務
――会社だけでなく中央官庁でも実例があったセクハラ。また、なかなか表面化しにくいDVなどの暴力問題。こうした問題を政府の側から根本的に解決することも、女性支援には欠かせません。この日、池永さんの胸元にはパープルのリボンバッジが。実はこれ、女性に対する暴力根絶の象徴だそう。
「私がつけているこの紫のバッチは、『女性に対する暴力根絶』のシンボルであるパープルリボンです。女性に対する暴力をなくす運動期間(11/12-25)には、各所の建物でパープルのライトアップもされました。また、今年は特にセクハラに焦点を当てて、チラシやポスターでも展開しています。
今回力を入れているのは、セクハラをする側の無意識さを訴え、注意喚起し、セクハラさせないことです。「する」側は親しさを表すつもりでも、相手を不快にさせる言葉や行動をとったり、この程度ならいいだろうと勝手に憶測してはいけないのです。また、社会での地位関係性を利用して、NOと言えない部下に対して上司が何かを迫るということもNG。NOを言わないから了承したということではないのです。セクハラの加害者にならないよう、宴会とか酒席やその帰り道など、気持ちがゆるみがちなときに、特に注意すること。こうしたことがとても大事なことだと思っています。
また、今、特に力を入れているのが、性犯罪・性暴力の被害にあった方に対して支援できる体制整備です。被害者からの相談にのったり、必要なら医療機関につないだりといった、ワンストップ支援センターをつくっていきます。これは平成32年までに各都道府県に最低1か所を目指していましたが、すでに達成しています。さらにこれからは24時間対応の検討や、より相談体制を充実させていきたいと思っています」
遅れている政治分野でも女性を増やそう!
「最後につけ加えますと、男女共同参画の中でも進捗が遅れているのが、政治分野です。女性議員の比率は衆議院で約10%、参議院で約21%。さらに、人口の少ない町村となると数%というのが現状です。暮らしに身近な自治体にもかかわらず、女性議員の割合が少ないのは、残念なことですね。今年、議員立法で、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律が成立しました。男女の候補者の数ができるかぎり均等となることを目指すもので、私たちとしては、女性の政治参画マップを作成し、都道府県別に女性議員の割合をひと目で分かるように、すなわち『見える化』して参考にしていただいています」
――男性リーダー、自治体、大学など、多角的に政府から働きかけることで、少しずつ女性の働く環境が改善されていることが、よくわかりました。とはいえ、もちろんそれで十分ではありません。次回は企業側の取り組みについてご報告します。
南 ゆかり
フリーエディター・ライター。10/3発売・後藤真希エッセイ『今の私は』も担当したので、よろしければそちらも読んでくださいね。CanCam.jpでは「インタビュー連載/ゆとり以上バリキャリ未満の女たち」、Oggi誌面では「お金に困らない女になる!」「この人に今、これが聞きたい!」など連載中。