story2 生きるのに大事なのはITよりも食事。ブームにも踊らされません
Profile
KANA(仮名) 44歳
職業/大手食品会社勤務。調査部・食品開発部・商品企画部を経験し、2年前から新規事業開発部へ。
住まい/都内で夫・子ども(中学1年生)と暮らす
story1 24時間、呼吸をするように料理のことを考えます
食のおかげで娘は病気知らず
「栄養のバランスはもちろん大事です。それに加えて、娘が受験シーズンのときは、勉強のリズムやストレス対策も考慮しました。夕食は油の量を控えて重たくしないように。夜の勉強や眠りを妨げず、胃に負担をかけないこと・消化にいいことは、絶対ですからね。
また、風邪をひかないように生姜やネギを多く使ったりも。生姜が苦手な娘のために、すりおろしてスープに入れたりしました。勉強が煮詰まっているなと感じたら、ホットミルクを差し出して、『今日は早く寝たら』と提案することもあります。
そして大事なのは、塾に持って行ったお弁当箱の食べ残しチェック。中身があまり減っていなかったら、ストレスフルなのかな。煮詰まっているのかな。娘の状況を判断する手がかりにもなります」
こんなふうに、KANAの家では、食が生活の主導権を担ってきた。娘が小さいときから、朝起こす合図は「朝ごはん何食べたい?」だったし、寝起きが悪かったら、いちごを口に入れて目覚めさせることもあった。
「朝も、まずは食べたいもののオーダーを聞きます。おかずは納豆がいいか卵がいいか。卵は生なのか焼くのか。飲み物はココアがいいか紅茶がいいか…。娘にも夫にも、食べたいものは自分で決めてもらうのです。そして私は、そのリクエストに答えられるように、いつでもスタンバイ。その結果、娘は本当によく食べるようになったし、とにかく病気知らず。結果、ワーキングママとしては助かっています」
肌荒れも白髪もなくなりました
生活が食を中心にして回るようになったのは、子どもをもってから。
「かつてはIT業界で営業の前線にいました。クライアントからクライアントへ、移動の時間も食事の時間も惜しいくらいで、よくエネルギー補給のゼリーを飲んでいました。いっそ、お腹がすかなければいいのに。そう思っていたくらいです。そういえば、肌荒れもあったし、ちらほらと白髪も出始めて、まあ30代になれば仕方ないかな、というくらいに思ってました。
そんな状況の最中で妊娠。過酷な環境にいながら体の変化を感じるようになって、さすがに食べ物のことを気にかけるようになりました。当時はつわりがひどくて、常に何か口にしてないとつらかったんです。営業に行くにも、小さく握ったおにぎりを持ち歩いたり、グレープフルーツをビニールに入れておいたり。気持ち悪いとき、柑橘類の匂いをかいで抑えていました。自分の体調のことを考えつつ、生まれてくる子どものために、どんな食生活がいいのかも、調べるようになりました」
妊娠中の栄養のこと、食事のこと、そして出産後は母乳のための栄養のこと、情報はいくらでもあったが、それらをひととおり勉強しつつ、どれが自分に合っているのか、考える毎日が始まった。
と同時に、KANAには気にかかることがあった。周囲のママたちの、「料理が面倒」「自分で作らない」という声。自分もそうだったこともあり、それならば、困っているママたちに役立つことをするべきじゃないか。社会人を続けていくなら、何か社会に還元できることをしたい。食べることをもっと大事にしたい。
「そう思って、食の業界に転職を決めました。今の会社を選んだのは、『食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくる』という企業理念が、私が考えていたことと、まさに一致していたから。IT業界にいたからなおさら感じるんです。人が生きるのに大事なのは『ITより食事』だと。
実は転職後、IT営業をしていたときのような肌荒れも白髪もめっきり減りました。いつの間にか花粉症も治っていました。妊娠中から、野菜を多く使って料理をするようになり、乳製品もきちんととって、腸内環境が整ったのだと思います。当時はまだ腸活という言葉もなかったころですが、食べ物で腸が変わり、体が変わること、若々しくなれることを、実感したのです。ただし大事なのは、バランスよく3食いただくこと。すごく特別なことをしたり、ブームに踊らされたり、“○○ばかり食べる”のようなことは、ありません」(story3に続く)
南 ゆかり
フリーエディター・ライター。ただいま、7月頭発売の書き下ろし新刊を準備中! ほかに『Domani』2/3月号のワーママ10人インタビュー、Oggi誌面「お金に困らない女になる!」「この人に今、これが聞きたい!」、 CanCam.jpでは「インタビュー連載/ゆとり以上バリキャリ未満の女たち」なども掲載中。