事実婚状態の夫の浮気で、内縁の妻の権利とは?
Q.13年間同居している、事実婚状態の彼がいます。私には元配偶者との間の15歳になる息子がおり、3人で暮らしていますが、息子も彼に懐いていて、血が繋がった家族同然のようです。しかし、彼が最近浮気していることを知ってしまいました。もし彼に別れたいと言われた場合、私にはどのような権利があるのでしょうか? 籍が入っていないため、簡単に別れられるのではないかと不安です。(栃木・43歳・15歳の息子のママ)
A.「まず、内縁の妻の法的権利を申し上げると、事実婚の場合でも法律婚の場合と同様、同居義務や扶養義務は発生し、一緒に暮らしている間の婚姻費用は請求することが可能です。また、正当な理由もなく一方的に関係を破棄された場合、慰謝料請求をすることもできます。
法律婚と同じように浮気は不貞行為とみなされ慰謝料の請求は可能ですが、法律婚と異なるのは、相手が出て行った事により内縁関係は解消されたと言えることから、別居後の婚姻費用は請求できないと言った点でしょうか。これが法律婚であれば、別居後であっても婚姻費用の請求は出来ますので。
また離婚と同様、事実婚の開始後に双方で築いた資産に関しては財産分与も認められますが、財産相続はできないため、内縁の夫が亡くなった場合、内縁の妻である相談者様はもちろんのこと、養子縁組をしていないのであれば、ご相談者様の息子さんへの財産相続も発生しないことになります。
ちなみに、ネット上では『3年以上同棲すると事実婚と認められる』というような説がまことしやかに囁かれていますが、これは少なくとも民法上は全く根拠のない話です。
事実婚かどうかというのは、婚姻届は出していなくとも双方に夫婦だという婚姻意思があるかという点と婚姻の実態があるかという点にかかっており、これはそれぞれのカップルの状況によって判断されるため、明確な判断基準は存在しません。
過去の判例では、挙式したけれど事実婚のまま入籍していなかった夫婦が結婚1年未満で夫が事故死したというケースで、内縁の妻に対する賠償命令が認められたこともあります。
余談ですが、最近ですと同性婚の内縁関係においても、不貞行為に基づく慰謝料請求が認められた裁判例も存在します」(中川裕一郎先生)
●本連載では離婚に関する慰謝料や養育費など、法律的な悩みや疑問にプロの弁護士が直接回答します!ご相談ごとがあるかたは、domani2@shogakukan.co.jp またはこちらのフォームよりお寄せください。 メールの場合は件名に「離婚相談」と書いてなるべく具体的な内容をお送りください。すべてのご相談にお答えできるとは限りません。あらかじめご了承ください。
過去の相談はこちら▶︎離婚駆け込み寺
お悩みに回答してくれたのは・・・
中川裕一郎先生
弁護士。東京中川法律事務所経営。https://tokyo-nakagawa.com
商社勤務時代にバックパッカーとして世界に飛び出し、地球を一周回ってみつけた社会的正義を実現するという生涯の目標のため弁護士に。紛争を未然に防止し、目の前の依頼者を笑顔にすべく日々奮闘中。親身になってアドバイスをくれる人情派弁護士として、依頼者たちからの信頼も厚い。フルマラソン、3時間切りのランナーでもある。
インタビュー・文
さかいもゆる
出版社勤務を経て、フリーランスライターに転身。女性誌を中心に、海外セレブ情報からファッションまで幅広いジャンルを手掛ける。著書に「やせたければお尻を鍛えなさい」(講談社刊)。講談社mi-mollet「セレブ胸キュン通信」で連載中。Web Domaniの人気連載「バツイチわらしべ長者」で様々なバツイチたちの人生を紹介している。withオンラインの恋愛コラム「教えて!バツイチ先生」では、アラサーの婚活女子たちからの共感を得ている。