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LIFESTYLE子育て

2020.03.26

「子どもを叩きそうな自分」に気づき止める方法|時間に追われ追い詰められる親たちへ

2017年、日本でワーキングマザーの割合が初めて7割を超えました。ただ多数派になったとはいえ、子育てと仕事の両立に悩む母親は少なくありません。家事育児に仕事がプラスされる中、母親のストレスが子どもに向いてしまうことも少なくないかもしれません。 自身もワーキングマザーであり、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』著者の子育てアドバイザーの高祖常子さんに、「子どもと作り上げていく前向きな子育て」について聞きました。

Text:
高祖 常子(認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事)

仕事帰りのママはいっぱいいっぱい

先日の夜、仕事帰りの19時半過ぎにコンビニを通りかかったときのことです。子ども2人をママチャリの前後に乗せながら「もういい、一生宿題しなくていいから!」と叫んでいるスーツ姿のママに遭遇しました。

仕事終わりに子どもを学童からピックアップして、急いで帰って夕飯の準備をしなければ、という慌ただしいタイミングだったのかもしれません。学童で宿題をしてこなかった子どもに腹を立てて、思わず叫んでしまったのかも……?と想像しました。

私自身も働くママでしたから、心の涙があふれるようなママの叫び声を聞きながら、とても切なくなりました。

育児のポータルサイト「こそだて」(2018年)によると、パパの帰宅時間のトップは22時以降(21.4%)、19~20時が2位(20.0%)でした。22時以降の帰宅時間では、すでに子どもを寝かしつけた後。20時近い場合は、ご飯を食べ終えて、お風呂に入ったり、入り終えているころだと思います。

ひとりに育児が集中するいわゆる“ワンオペ育児”により、疲労とストレスが限界までたまっているというママも少なくないでしょう。

私がこれまでに聞いたママたちの声にはこんなものがありました。

「本当は叩きたくないのですが、新たな育児の問題が出てくるたびに、それがずっと続くような不安にかられ心に余裕がなくなり、(子どもを)叩いてしまうことがあります。そして叩いてしまったり激しく怒った後は大きな自己嫌悪の波が襲ってきて、私自身ぐったりしてしまいます」

「日常的に同じことで繰り返し注意をされても直らず、短時間に3回以上同じことをした場合、次やったら叩くと宣言したのち、子どもが守らない場合のみ叩いています」

「叩くときは、ご飯で遊んだときに手を叩くだけです。でも時には必要だとも思う。痛みを知ること、叩かれるということが嫌なことと感じることも子どもにとっては必要なのではとも思います。ただ、そのことがお友達を叩いてはいけないとかにつながるかというと、そこはわかりませんが。理想は怒らず冷静に言い聞かせてわからせたいけど実際は難しいですね」

皆さん、しつけに悩んで苦労されていることがよくわかります。しつけの方針や方法もご家庭によってそれぞれです。

各ご家庭の対応はOK?NG?

1つ目のコメントは、心に余裕がなくなってつい叩いてしまうという声です。このように、叩きたくないのに叩いてしまうという状況もありますが、
「しつけのためには、ある程度の体罰は必要」
「愛情を持っていれば、少し叩いてしつけても大丈夫」
といった風潮が日本にはまだまだ残っているのも事実。この考えのもとに叩いて教える育児を行っている家庭もあるでしょう。

といった風潮が日本にはまだまだ残っているのも事実。この考えのもとに叩いて教える育児を行っている家庭もあるでしょう。

ですが、「叩いたり罰を与えることは、子どもの成長に逆効果」であることがさまざまな研究によって知られるようになってきています。

実際、北欧では子どもへの体罰・暴力を法律で禁止する国も増えており、「叩かない」「怒鳴らない」子育てが主流になっています。子どもが悪いことをしたときには、感情をぶつけることなく、叱る、諭す、話し合うといった方法で望ましい行動に導くのです。叩いたり怒鳴ったりしなくても、しつけはできるのです。

では、2番目のママの声の「叩くと宣言したのちに、守らなければ叩く」というのはどうでしょう?

いきなり叩くのではないですから一見いいように思えるかもしれませんが、叩くと宣言して従わせようとするのは威嚇や支配にあたります。言ったのに守らなかったからという理由で叩いても、それはなぜ守らなければならないことなのかは伝わりません。

また、3番目の「手を叩く」というのもNGです。「この手が悪い」と言っても、手も子どもの一部。痛みで従わせようとするのは、子どもの権利に反する行為です。なぜその行動が悪いのかという根本を理解させるためにも有効ではありません。暴力は大小にかかわらず、どんなときにも必要ありません。それよりも、子どもが自分で考えて行動できるベースとして大事なのは、安心できる親子関係です。

子どもと作り上げていく前向きな子育て

確かに、忙しいとき、子どもが思いどおりに動いてくれないと、いら立ってしまいます。ですが、子どもに親自身の気持ちは伝わっていませんし、親が勝手に枠を決めて、そこに子どもをはめようとしているだけではないでしょうか。

日本ではブラック校則が話題になっています。私が北欧などの取材で出会った子どもたちは、学校でも自由な髪形をして、自由な服装をしていました。小学生でもピアスをしている子もいました。子どもの意思を尊重し、それを認めていこうということが国の考え方のベースとしてあるので、誰も問題視しません。

そもそも日本の「しつけ」の考え方が、「親(大人)が決めた枠にはめようとする」というところに基づいているので、子どもがその枠にはまらない行動や発言をするといら立ち、腹を立て、つい怒鳴りたくなったり、叩きたくなったりしてしまうのではないでしょうか。

もちろん、親は子どもより長く生きてきていますし、経験値もあります。だから、子どもの考えや選択について、不安になったり、「うまくいかないのでは?」と懸念を持ったりすることもあるでしょう。そのために、アドバイスしたり、経験談を話すことはとても大事ですばらしいことです。

でも、子ども自身も、自分の気持ちや考えを持っています。子どもの気持ちや考えを聞きながら、親としての考え方も伝えて共有する。子どもが迷ったときには、どうしたらいいのかを一緒に考え相談しながら、見つけていく。そんなやりとりをして方向を決めていくことが、私が考えるポジティブな子育てです。

先ほどのコメントにもあった「ご飯で遊ぶ」という行為も、叩かず「投げちゃダメだよ」と制すればいいですね。投げるのをやめなければ、食べることへの興味がなくなっている可能性もあるので、「もうおなか一杯かな、ごちそうさまにしよう」とご飯を終わりにするなどの対応もあるでしょう。子どもの気持ちや成長を考え、「食べ物の感触を手で確かめたい年齢なんだ」「成長の過程なんだ」と解釈することで、ママの心が軽くなるかもしれません。

「いえいえ、うちの子はもう物事の善悪はわかる年頃なのに、何度“ダメ”と言ってもやめないんです」というお家もあるでしょう。

ですが、しつけというのは即効性を求めるものではありません。年齢などにより1~2回注意すればわかる聞き分けのいい子も中にはいますが、何回も同じ注意をし続けて、やっと心に届くという子どももいます。

「今、その場で正しい行動に導かなければいけない」のではなくて、時間をかけてゆっくり行動を学んでいくという感覚も必要でしょう。数カ月たって、以前の我が子と比較して「最近しなくなったな」ということでいいわけです。その証拠に、大人になって遊び食べをしている人はあまり見かけませんよね。焦らなくても大丈夫です。

怒りの奥にある感情を考える

例えば「子どもが遊び食べをするのでイライラする」という感情の裏には、「食べる量が少なくて心配」「きちんとしつけをしないと、大人になったときにこの子が困る」といった感情が隠されていることもあります。

怒りは「不安」「心配」「困惑」といった感情によって引き起こされる第2次感情なのです。

例えば、何度言っても子どもが片付けをせずについ怒鳴りつけてしまった場合、親としてどんな心境でしょうか。

● 何度言ったら伝わるのか?
● 言い方が悪いのか?
● 子どもは、なぜ協力してくれないのか?
● 片付けないと、ご飯が食べられないし、寝る時間も遅くなって困る。
● 片付けられない子になる?
● 私(人)の気持ちがわからない子になる?
● そもそも私は疲れている。
● 時間が足りなくて焦る……。

など、もっとさまざまな理由があるかもしれません。

落ち着いて、自分のイライラのもとの心(不安、心配、困惑、疲れなど)を客観的に確認してみましょう。そして、手当てできるものには対応してみましょう。

また、この心を見つめる方法は、子どもの怒りの爆発のときにも使えます。それは乳幼児期でも思春期でも同じこと。この子はなぜ、こんなに怒っているのか、いら立っているのか、「イヤだ」というのか。怒りの爆発の手前の気持ちに着目してみると、解決の糸口が見えてくるでしょう。

さらにママたちからはこんなコメントもありました。「いけないとは思いつつもつらくなったときは子どもの前でも泣いてしまっています。やっぱり人間なのでこらえきれないときもある。抱え込んでしまうことがいちばん危険な行動を招いてしまいそうで」。

いつもニコニコしているママが理想かもしれませんが、「ママもつらいよ」「困っているよ」と伝えることも大事ですね。

喜怒哀楽を表現できることはとても大切なこと。怒りを爆発させることは、自分自身も疲れますし、心も休まりません。

今、何にイライラしているのかを紙に書き出して、ストレスの原因などを知ることで心が落ち着くこともあります。「自分が機嫌よく過ごす」ことはとても大事なことです。自分自身が笑顔で過ごすには、どうしたらいいのか。まずそこからスタートしてみましょう。


こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て

写真/Shutterstock.com

認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事

高祖 常子

子育てアドバイザー。育児情報誌『miku』編集長。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事など多数の子どもの人権を守るための委員を歴任。所属学会は、日本子ども虐待防止学会、日本子ども家庭福祉学会など。東京都出身。短期大学部卒業後、株式会社リクルートで約10年、学校・企業情報誌の編集にたずさわり、妊娠・出産を機にフリーに。幼稚園教諭、保育士などの資格を持っている。著書に『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』『パパ1年生』(かんき出版)など。

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