「ウェブ会議」の「見映え」
私の職業はアナウンサーですが、「テレビやラジオ番組のナレーション」「スピーチレッスンの講師」「番組のパーソナリティー」など、さまざまな仕事をしています。
そのため、毎日のボイストレーニングが欠かせません。
とくに毎日の日課として欠かさず行っているトレーニングが「朗読」です。
なぜなら「朗読」をすることで、「表情が豊かになる」「笑顔に磨きがかかる」「コミュニケーション力が上がる」などの絶大なメリットがあるからです。
緊急事態宣言が解除になってもテレワークを取り入れている会社が多くなり、ウェブ会議も増えてきました。
ウェブ会議でこんな経験はないでしょうか?
・画面上の自分の顔や、相手の顔が暗いので、元気がないように見えてしまう
・自分が話していると、みんなが聞いてないように思う。逆に、相手の話に飽きてしまう
・内容が伝わらない、相手の話が頭に入ってこない
・対面だと盛り上がるのに、ウェブ会議だと会議があまり盛り上がらない
会社での会議と環境が違うので、「いつもと違うな」と感じてしまうことも少なくないと思います。「画面を通してだから仕方がない」と思われがちですが、ちょっと工夫をするだけで、そんな悩みが解消できます。さらに表情も声もよくなるので、好感度もアップします。
では、ウェブ会議で「イヤな印象」をなくす秘訣とはどのようなことでしょうか。ここでは6つの秘訣を紹介します。
部屋の中は明るいと思っていても、画面を通すとその明るさが反映できていない場合が多いです。この明るさを調整するだけでも、画面の印象は大きく変わってきます。1つ目は「『照明』を置いて顔に光を当てる」ことです。
事前に「画面に自分が映る状態」を確認しておく
【1】「照明」を置いて、顔に光を当てる
ウェブ会議は、パソコンの種類にもよりますが、画面がぼんやりするなどして、顔が影になって映りが暗くなりがちです。できれば「照明」を置いて、顔に光を当ててみましょう。
大きなライトを準備しなくても大丈夫です。ブックライトなど卓上における簡易的なライトや、パソコンやスマートフォンに取り付けるタイプのものもあります。スタンド型であれば、自然な明るさになるリングライトがおすすめです。
ライトがないときは、窓のほうに向いて座るようにしてみましょう。自然光でもきれいに明るくしてくれます。しかし、窓が近いからといって窓を背にすると、逆光で顔が真っ暗に映ってしまいますので、くれぐれも注意してくださいね。
【2】画面に映る「角度」と「距離」に気をつける
画面に映るとき、角度が下からになると、「二重アゴ」に見えたり「伏し目がち」に見えたりしてしまい、いい印象に映らなくなる可能性があります。
そんなときは、パソコンやスマートフォンを、ほんの少しだけ「上から顔が映る」ようにセッティングするようにしましょう。気になる人は、会議前に自分の映りを確認しておくのがおすすめです。
また、顔の位置が画面から離れすぎると、違和感が生じる場合があります。背筋を伸ばし、ドアップにならないくらいの位置で調整しましょう。上半身の動きを使って、少し顔を前に出したり、元に戻したりする表現もできます。
また、背筋を伸ばすことにより、見た目もよくなり好印象になります。
【3】「表情」をいつもより豊かに
画面を通すと、どうしても表情や感情が読み取りづらくなりがちです。表情が乏しかったりすると「興味がないのか」と誤解されやすいので、いつも以上に、表情を明るく豊かにすることを意識しましょう。
いちばんやりやすく、なおかつ好感度が高いのは、「口角を上げる」こと。口角を上げながら笑みをたたえて話したり、聞いたりするといい印象になります。「朗読」でも、口角を上げるとやさしい雰囲気が出ます。
また、話しに合わせて顔を間に出して話す、うなずく、あいづちを打つ、などを入れるようにすると、コミュニケーションを積極的に取っている印象になります。
4つ目は、「メリハリをつけた話し方」を意識することです。
【4】「メリハリをつけた話し方」を意識する
ウェブ会議で発言していると、「自分の話を聞いてもらえていない気がする」と思ってしまうこと、ありますよね。対面(リアル)でないのでどうしても不安な気持ちになってしまいがちです。
そんなときこそ、発言に「抑揚」をしっかりつけるようにしましょう。普段話すときよりメリハリをつけた話し方になるくらいでも大丈夫です。
「朗読」では、強調したいポイントは、「(1)高めの声で話す」「(2)ゆっくりはっきり話す」「(3)強く発音する」「(4)ポーズ(間)を置く」「(5)気持ち(感情)を込める」などがあります。「朗読」のスキルをうまく取り入れて、発言にメリハリをつけましょう。
【5】声の「トーン」を変えてみる
お互いの地声は、パソコンやマイクのスピーカーを通した機械的な声に変換されます。機械を通した声だと、微細なトーンや気持ちの変化を感じづらくなります。そんな状況で「力んでずっと大声」「ずっとハイテンション」「甲高い声が続く」「早口でまくしたてる」と聞き手は疲れてしまいます。
対面のときは、声量は大きく保つべきですが、イヤホンマイクなどをする場合は声をよく拾うので、力んで話さないように注意しましょう。
大声の人は……リラックスして、普段よりほんの少し頑張るくらいの声量で
甲高い声の人は……落ち着いて少しトーンを下げて
早口の人は……一音一音、丁寧に発音する気持ちで
【6】「1文を短く」して「語尾」をはっきり言い切る
「~なので」「~なんですが」「~ですけど……」と、読点で延々つなぐような1文が長い話し方はやめましょう。1文を短くまとめると、歯切れがいい発言になり、信頼感にもつながります。
語尾も、自信をもってはっきり言い切ります。「~です」「~ます」「~ですよね」など、「語尾まではっきり発音し、言い切る」ように心がけましょう。
対面より、より語尾が聞き取れない状況になる可能性もあります。テンポよく、歯切れよく話しましょう。歯切れが悪いと、自信のない印象になりますので気をつけましょう。
「朗読の話し方」で表情や発言に磨きをかける
ウェブ会議など、画面を通して話すことに「自分の意思がうまく伝わらなくてなじめない……」と、苦手意識を持っている人も少なくないと思います。しかし、今まで気づかなかったことを見つけて、自分の表情や発言にさらに磨きをかけられるチャンスでもあると思います。
「朗読」の話し方を応用できるところも多いと思いますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
アナウンサー
魚住 りえ(うおずみ りえ)
フリーアナウンサー。元日本テレビアナウンサー。ボイス・スピーチデザイナー。大阪府生まれ、広島県育ち。1995年、慶応義塾大学卒業後、日本テレビにアナウンサーとして入社。報道、バラエティー、情報番組などジャンルを問わず幅広く活躍。代表作に『所さんの目がテン!』『ジパングあさ6』(司会)、『京都心の都へ』(ナレーション)などがある。2004年に独立し、フリーアナウンサーとして芸能活動をスタート。これまでおよそ500本の作品に携わる。とくに各界で成功を収めた人物を追うドキュメンタリー番組『ソロモン流』(テレビ東京系列)では放送開始から10年間ナレーターをつとめた。各局のテレビ番組、CMのナレーションも数多く担当し、その温かく、心に響く語り口には多くのファンがいる。また、およそ30年にわたるアナウンスメント技術を活かした「魚住式スピーチメソッド」を確立し、現在はボイスデザイナー・スピーチデザイナーとしても活躍中。声の質を改善し、上がり症を軽減し、相手の心に響く「音声表現」を教える独自のレッスン法が口コミで広がり、「説得力のある話し方が身につく」と営業マン、弁護士、医師、会社経営者など、男女問わず、さまざまな職種の生徒が通う人気レッスンとなる。現在は、定期的に10~15人を募集し、スクールでグループレッスンを行っている。魚住式スピーチメソッド
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