数か月で大きく変わった勉強・仕事のスタイル
先日、なにげない会話のなかで、夫がこんなことを言いました。
「リモートで会議をしていると、相手の顔をほとんど見ないまま進むことが増えているんだよね。今後は仕事もアバター化していくかもね」
数か月前はリモート会議をするのに四苦八苦していたのに、今では当たり前の光景になりました。モデルという仕事はそうはいきませんが、企業の多くでは夫が言うように、相手の顔も見ずに仕事を進めることも増えていくかもしれませんね。
一部の学校や習い事ではzoomを使った授業が普通になり、課題のやりとりもオンラインに。先生や友達と顔を合わせないまま新学年、新学期が進み、その環境も常に変化しています。我が家の子どもたちも週ごとに変わる状況には慣れたもので、授業中にカメラをミュートにしたまま別のことをするものだから、私がカミナリを落としたこともありました。アメリカでは日本以上にオンラインシステムが整っていて、生徒は何か月もの間登校していないというケースもあるそうです。
これまでなら肌を触れ合いながらお互いの温もりを感じ、また表情から相手の気持ちを察しながら進めていたことも、声や文字だけに頼ることが増えていると感じます。子どもたちを見ていると、マスクによって伝えたいことが伝えづらくなっていることもあるようです。学校は、集団生活を送ることによって人間関係の構築を学ぶ場ですが、友達との距離を取り続ける生活を続けたら、彼らの中の何か大きなものが欠けてしまうのではないか…。漠然とした不安に襲われているのは、私だけではないはずです。
バーチャル時代に家族が子どもに伝えるべきこと
オンラインでのコミュニケーションが当たり前になった今の生活の中で、家庭の役割はさらに大切になってきていると思います。私は今まで以上に「愛情をもって心と心で接する」ことを、意識するようになりました。学校で友達や先生と触れ合う機会が限られているぶん、人とリアルに接するときにはどうするべきか意見を出し合い、親が手本を見せていく。目を見る、肌を触れ合わせる、という気持ちを表現する方法を共有する。マスクを外して過ごす唯一の場所である家庭で、愛情について伝えなければならないことは、とても多いと思っています。
こうした教育が抜け落ちて、子どもがバーチャルの世界で育っていったら…。感情のコントロールが苦手になってしまわないかしら。十分にコミュニケーション能力を高めることはできるのかしら。恋愛感情さえももつことができるかどうか…?
こんな怖い未来都市の姿が描かれているのが、2015年に発表された小説『消滅世界』(著/村田沙耶香)です。子どもは家庭単位ではなく社会で共有し、愛情の表現方法もとても不器用です。こんな不気味な未来はこないでほしいと願いますが、一方で、映画『her/世界でひとつの彼女』(2013年)では、人工知能をもつコンピューターと人間の恋愛を描いていて、こんな新しい形もあるのかと考えさせられたり…。この先も、予想もつなかい変化が起こってそれに私たちは適応していくことにアタフタすることでしょう。変化が大きいほど、最小単位である家族の関係は強固に、そしてしっかりと愛情を伝えていきたいと思っています。
▲エコバッグもマスクも今や当たり前に。習慣や常識はあっという間に変わることを実感します。
モデル
牧野紗弥
愛知県出身。小学館『Domani』を始め、数々のファッション誌で人気モデルとして抜群のセンスを発揮しながら、多方面で活躍中。キャンプやスキー、シュノーケリングなど、季節に合わせたイベントを企画し、3人の子供とアクティブに楽しむ一面も。今年は登山に挑戦する予定。自身の育児の経験や周囲の女性との交流の中で、どうしても女性の負担が大きくなってしまう状況について考えを深めつつ、家庭におけるジェンダー意識の改革のため、身を持って夫婦の在り方を模索中。