大事なのは、制度を活用できる空気感
ポーラでは、育休復帰率は94%。現在も、在籍する社員のうち10%が育休中だという。これらの数字から、女性が長く働くことのできる会社だと読みとることができるが、制度と同様に大事なものがあるという。
「私が部長職を兼任している商品企画部は、41人いる部員のうち36人が女性。そのうちワーキングママは17人です。私は制度も大事だと思うんですが、それと同じくらい空気も大事だと思っています。制度がきちんと整っていても、その制度が活用できる空気感がなければ、結局は、絵に描いた餅。もともとポーラは、91年という歴史の中で、販売現場や企画本部があまり分け隔てなく、女性が子育てをしながら働くというという空気がDNA的に醸成されているのが良かったと思います。
コロナ禍で、出社を前提としない働き方も定着しました。緊急事態宣言が解除された後もポーラとしては、出社を前提としない働き方を継続していこうと決めました。それによって、ますます育児との両立がしやすくなって、早く育休から復帰をしてキャリアを積んでいきたいと、今の若いメンバーは考えているみたいです。お子さんがいるいないにかかわらず、男性であろうと女性であろうと、家で出来る時は家で仕事する、というのがスタンダードになっています。」
山口さんは新卒でポーラに入社し、42歳で執行役員に抜擢された。意外なことに、もともとキャリア思考ではなかったという。
「色んなことがあって役員という立場をやらせていただいているのですが、その時々の上司だったり周りの人に『この試験をうけてみなさい』『このポジションをやってみなさい』という風に、後押しやチャンスを貰って、その立場がまた自分を育ててくれた感じがします。
30代前半くらいの私は、自分の仕事を極めていくのが向いていると思っていたのですが、上司に、『自分の仕事をやるだけでなく、人をまとめて行く事とか、人をモチベートする事が出来ると思うよ』という風に言われたんです。本当に不思議なもので、そうやって言われるとやっぱり意識してしまって、当時二人しかいなかった後輩たちを巻き込んで、この子たちもステップアップさせるには、色んな事を教えてあげるにはどうしたらいいんだろう?と考えるようになりましたね。自分が何か企画して成果を出すことだけでなくて、後輩が出来なかったことを出来るようになる嬉しさみたいなのも感じて。なるほどね、仕事ってこういう喜びもあるんだな、と気付きましたね」
「おじさん」「おばさん」といい合える戦友たち
今では、100人以上の部下を持つ山口さん。後輩が2人だった時とは、もちろん関わり方は全く同じではないが、向き合い方は変わらない。
「私自身もそうしてもらったからというのもあるのですが、相手の可能性を広げられるように、その人となりを観察するように心がけています。やっぱり話すことが大事だと思うんです。ミーティングの中でも、何でそれがやりたいの?今、業界をどういう風に見ているの?と、イエス、ノーだけでは答えられない質問をたくさんすることで、『この人ってこういうことに興味があるから、こういう業界のトレンドの捉え方をしているのね』と読み取るようにしています。
あとは小さいことですが、特に社内の打ち合わせの時には、皆で笑う瞬間を作りたいなと思っています。結構大人数、それも部門が違う人たちとミーティング(オンライン)をすることも多いんです。私は、皆のことを知っているのですけど、横同志は面識がないこともある。そういう時に、例えば工場勤務の男性を「おじさん、おじさーん、」みたいにちょっといじってみたりとか。この会社に入って、21年で培ってきた人脈はやっぱりすごい有難いですよね。一緒に仕事をしてきた人は、「おじさん」と呼べるし、私のことも「おばさん」って呼んでもらえる(笑)」
そんなさりげない気遣いに、周囲は「すごく和んで会話もしやすくなるので助かる」と話す。これも、上司や部下に信頼され、愛される理由のひとつだろう。
失敗から学んだ仕事の流儀「相手の土俵にあがる」
山口さんには、ある失敗から、ずっと変わらず、心がけていることがある。
「なるべく相手先の土俵にあがらせてもらうこと。昔、宣伝部に入ったばかりの頃、たくさん失敗して・・。出版社などに商品の掲載をしてもらうために訪問するのですが、全然載せてもらえなくて。そんな時に、他社さんのPRの方がたまたま隣にいて、お話しを聞く機会があったんです。その方、自分のところの商品をPRしないんです。その雑誌について、あの記事良かったよ、時にはこれ面白くなかった、ぐらいのこととかも言って。それで最後に、『この商品、あなたの雑誌の読者だったらこういう風に使うといいんじゃない。置いていくから後は好きにしてね』という感じで。それを見た時に、私は全然だめだって。これ載せてください、ここが特徴なんです!と、自社の商品の話ばっかりしていて、編集の方や読者が何を考えているか全く頭に入っていなくて、すごく恥ずかしい思いをしました。やっぱりコミュニケーションって、いかに相手先様の土俵にあがらせてもらえるのかがすごく大事だなというのを痛感して、それをすごく大切にしています。」
気分が落ち込んだ時、1日をリセットする時、大好きなお酒は欠かせない
毎日をエネルギッシュに生きているからこそ、疲れる時もある。落ち込む時もある。癒し、リセットするために欠かせないのがお酒だ。
「仕事をしているといろいろあって、理不尽なことやうまくいかないことも多いですよね。そんな時は、とにかくお酒をたくさん飲んで、やってられないよね!ということを言います(笑)。昔は、みんなで飲みに行って、『今日は電車がなくなるまで飲むよー!』って。体調が悪くなければ365日飲みます(笑)。夫とも飲みますし、一人でも飲みますしね。最近は、ワインか焼酎のソーダ割りがブームです。
あとは、特別な美容法をはないんですが、自社のBAと、リンクルショットはずっと好きで、ケアをする時間も大切にしています。『よし!今、肌開花されてるぞ!』ってマインドセットしています。
今はどちらかというと、自分の仕事というより、若いメンバーや部下のメンバーたちが、自分の殻を破って成長していくことに対して興味が沸いてきている。メンバーたちの成長を一緒に手伝っていくことをしたいなと思っています。」
株式会社ポーラ 執行役員
山口 裕絵
新卒でポーラに入社し、日本で初めて厚労省の認可を獲得したシワ改善商品などのマーケティングなどを経て、42歳で執行役員に就任。