「さっき言ったじゃん!」「いいって言ったよね!?」「やってるじゃん」…親が何か聞くと、このような返答が返ってきたことはありませんか? 特に小学校中学年以上の女子に多いようで、〝母vs娘〟の関係性に悩む人も。臨床心理士でスクールカウンセラーとしても活動している吉田美智子さんに【母と娘の関係性】についてお聞きしました。
昔にはなかった〝友だち親子〟 が要因に!?
「一般的に『母と娘はライバル関係』などと言いますが、その原因のひとつとして現代の親子関係にあると思います。戦前の親子関係は上下関係が強かったと言われています。親にとって子どもは、いずれ跡取り・働き手にするため厳しくしつけ、教育する対象でした。しかし戦後、高度経済成長期を経て、子どもの教育は学校や塾、お稽古などに託し、職業人としてのトレーニングも就職先に任せるため、家庭内で親子関係が上下から水平へと変化しました。
特に現代では、〝友だち親子〟という言葉があるように、親子がフラットな状態であることが伺えます。昔は『親は偉大である』『親に感謝しなくては』という、尊敬といった気持ちで子どもは親を見ていましたが、フラットになった現代では親と子どもは対等になっています。自分の気持ちと反対のことや、ちょっと機嫌が悪いときなど、子どもは我慢せず親にその気持ちをぶつけてきます。それが『言ったじゃん』『言ったよね』など強い口調になるのです」(吉田さん)
前思春期突入の証であり、実は本人もちょっと苦しい…
「小学校中学年になってくると徐々に前思春期が始まります。親に守られていた子どもから、自立した大人への一歩を踏み出すのです。『言ったじゃん』『言ったよね』もそのひとつです。自分はしっかりしている、もう子どもではないと主張しているのです。しかし、本当は『そんな強い言葉で言わなくてもよかったな』とも感じています。自分の変化に戸惑いつつも、1番の味方で、何を言っても裏切らない親を試している状態ではないでしょうか。
しかし、親だって子どもの発する言葉に傷ついたり、頭にくることもあると思います。ついつい叱ってしまいたくなりますが、それは逆効果になる可能性も。子どもは成長過程の万能感で対等言葉を使っているので、強く叱ったり否定すると『わかってもらえない』という気持ちになりやすいからです。この時期の子どもは態度に波があり、素直に甘えてくるときもあるため、親はあまり反応せず【成長過程】と思って見守ってくださるとありがたいです」(吉田さん)
まるで、正当性を突き付けるような『言ったじゃん』『言ったよね』という言葉。その言葉の裏を返せば、『言ったことをちゃんと覚えてるよ』『私はしっかりしてるから大丈夫だよ』ということ。つまりは子供扱いしないでという訴えなのかもしれません。子どもの言葉にイライラせず、強い口調ならば〝親でも傷付く〟ことを伝え、自立への手助けをしてあげたいですね。
イラスト/(C)Shutterstock.com 構成・文/福島孝代
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臨床心理士
吉田美智子
東京・青山のカウンセリングルーム「はこにわサロン東京」主宰。自分らく生きる、働く、子育てするを応援中。オンラインや電話でのご相談も受け付けております。
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