「煩」は中国語で「うっとうしいんだから」。実はこれ、常套語!
仕事は仕事、プライベートはプライベート。私はその線引きをきちんとしたい性分なのですが、台湾社会で働く上でいちばんチャレンジングだと感じたのが、この公私を分けるということでした。
まさに文化の違い、カルチャーショックなのでしょう。日本では絶対に聞かれないことを聞かれたり、言われないことを言われたり、どうやって回答すべきか幾度となくあたふたしたのを覚えています。
ヘビーな会話のキャッチボールが普通な文化?
驚いたことのひとつに、“会話の返し方” があります。
どういうシチュエーションでのどういう返しに驚いたのかというと、たとえば、〝痩せた〟〝パートナーにプレゼントを貰った〟〝株で儲かった〟〝昇進したなど〟、日本ではデリケートな話題だとされることに対してオープンに話すことと、それに対してのヘビーな返し。
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私自身、よくいわれたのが「你是不是變瘦了 (ちょっとあなた痩せたんじゃない?)」という体型についてのこと。
「到底有沒有在吃飯啊? (ほんとご飯食べてるの?)」「你就是個紙片人 (紙人間だよねー)」などもありましたが、どんなコメントの最後にも大体いわれるのが、「你很煩呢 (Nǐ hěn fán ne)」とか「你很討厭 (Nǐ hěn tǎo yàn)」などのトドメの言葉。これは直訳するとと、「うっとうしいんだから」とか「嫌い」という意味で、つまり「痩せててうっとうしい」「食べても太らないなんて嫌い」ということ。こんなことを立て続けに日本語でいわれようものなら、落ち込んでしまってどうしようもないものですが、こういう会話って台湾では冗談半分のようなもので割とよくあることなのです。
なので、要領がわかってきたころには、私も「沒有啦 你知道我食量大啊 (いや、私の食欲のすごさ知ってるでしょ)」とか「拜託 你在說什麼啦 (まじでさ、何いってんの)」とか「你看 我制服緊到快爆了 (見て、制服キツくて爆発しそう)」とか、うまくジョークで返答できるようになっていました (上達、笑)。そして、不思議なことにそんな会話を一度交わした人とは、仲良くなれるんです。
中国語メモ:※どれも直訳の意味であって、決してこんなに当たりが強い言葉ではない
你很煩呢 (Nǐ hěn fán ne)=うっとうしいんだから
你很討厭 (Nǐ hěn tǎo yàn)=嫌い
日本だと、デリケートな話題になってしまっただけでギクシャクしてしまう、またはそもそも話題にしないことが多いですが、ある意味そういう “余計な気遣い” みたいなものをしなくてよかった台湾での生活は、実は私にはとっても合っていたのかもしれません。
【続】
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美容ライター
有田 千幸
外資系航空会社のCA、建築設計事務所の秘書・広報を経て美容ライターに。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。環境を意識したシンプルな暮らしを心がけている。プライベートでは一児の母。ワインエキスパート。薬膳コーディネーター。