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「言わずもがな」が持つ2つの意味と語源
「言わずもがな」は「言わなくても良い(こと)」あるいは「言わないでいたい(こと)」を表現する際に使える言葉です。ここからは「言わずもがな」の意味や語源について詳しく解説します。
1. 言わなくても良い(こと)
「言わずもがな」は、「言わなくても良い」あるいは「言わなくても良いこと」の意味で用いられます。例えば、「彼女はかわいい。言わずもがなだが」と言えば、「あえて言わなくても良いことだが彼女はかわいい」というニュアンスが伝わるでしょう。
類語は「言うべきではない」など
「言わなくても良い」という意味で使用する場合、類語としては「言うべきではない」という言葉や「言う必要がない」「余計な」を挙げられます。言葉によってニュアンスが異なりますので、伝えたい意味に近い言葉を選ぶようにしましょう。
2. 言うまでもなく
「言わずもがな」は「言うまでもなく」あるいは「言うまでもないこと」の意味でも用いられます。例えば、「今日も彼女は素敵だ。言わずもがなだが」と言えば、「言うまでもないことだが彼女は今日も素敵だ」というニュアンスになるでしょう。
類語は「言わずと知れた」など
「言うまでもなく」の意味での類語は数多くあります。例えば「当然だが」「当たり前だが」「間違いなく」「妥当な」「明白な」「疑いようもなく」「無論の」「疑問の余地がなく」「今更ではあるが」などは、いずれも「言わずもがな」を「言うまでもなく」の意味で使用する際に置き換えることができるでしょう。もちろん、これらの言葉はいずれもニュアンスが異なるので、伝えたい意味を示す言葉を選ぶことが大切です。
<語源は「言わないでいたい」の意味の古語>
「言わずもがな」は古語由来の言葉で、「言わず」は現代語では「言わない」、また「もがな」は現代語では「でいたい、であればよい」をそれぞれ示しています。そのため、「言わないでいたい」あるいは「言わないでいたいこと」の意味で使われることが一般的です。
言わないでいたい理由は、色々あるでしょう。例えば、あまりにも恐ろしいために言いたくないのならば「言うべきではない」の意味で、また、あまりにも当然すぎて言いたくないときは、「言うまでもなく」の意味で使えるでしょう。
「言わずもがな」は英語では何という?
「言わずもがな」を英語に訳するときは、「without saying」と「needless to say」の2つが近い表現になります。それぞれの意味に分けて英語表現を見ていきましょう。
1. without saying
「言わなくても良い」の意味で「言わずもがな」を使用する際には、「without saying」のニュアンスが近いかもしれません。
・That goes without saying.
そんなことは言わなくても良い。
また、より強いニュアンスで「言わなくても良い」という意味を伝えたいときは、「should not say」で表現できます。
・You should not have said that.
君はそんなことは言うべきではなかった。
2. needless to say
「言うまでもなく」の意味で「言わずもがな」を使用する際には、「needless to say」でニュアンスを表現できるでしょう。
・Needless to say, you are smart.
言うまでもないことですが、あなたは賢い。
また、似たようなニュアンスの表現として「obvious」や「obviously」も使用できます。
・This is obviously correct.
言うまでもなくこれが正解だ。
「言わずもがな」は目上の人にも使える言葉?
古語由来の日本語「言わずもがな」は、正しい意味で使用すれば目上の人にも使うことができます。語彙が豊富な印象を与えることもありますが、場合によっては不躾で失礼な印象を与えかねません。注意すべきポイントをいくつか紹介します。
■相手への指摘になってしまったらNG
「言わずもがな」は「言うまでもなく」や「言うまでもないこと」の意味でも使用するので、話者にはそんなつもりはなくても相手を指摘する言葉として受け取られかねません。目上の人に誤解を与えないためにも、使わないでおきましょう。
例えば、「言わずもがなのことですが、書類はこの封筒に入れてください」と取引先の方に言うならばどうでしょうか。「さっき注意してくれたことを思い起こさせようとしてくれているのだな」と相手が感じてくれれば良いのですが、「わざわざ『言わずもがな』と言うことは、私が無知だと思っているのだろうか。普通に『書類はこの封筒に入れてください』と言えば良いのに」と感じるかもしれません。
相手のミスやうっかり忘れを指摘するニュアンスになりそうなときは、「言わずもがな」という言葉は使わないほうが良いでしょう。また、指摘と受け取られることを避けるためにも、「ご存知だったら申し訳ありません。書類はこの封筒に入れてくださると助かります」のように謝罪の言葉を事前に付け加えておくことができます。
■丁寧語や謙譲語を入れて敬語にすればOK
「言わずもがな」を目上の人や取引先の方に使用する際には、前後に丁寧語や謙譲語を入れて敬語表現として使うことができるでしょう。例えば「言わずもがなのことですが、明日までに連絡してください」というと、「言わなくても分かるでしょうが、明日までに連絡して欲しい」といったやや強い命令のようなニュアンスを感じるかもしれません。
そこで「いつもお世話になっております。言わずもがなのことで失礼ですが、明日までにご連絡をお願いできますでしょうか」と言うならばいかがでしょうか。最初にへりくだり、最後にも下手からお願いする意思を表現することで、相手に失礼な印象を与えることを回避できます。また、「言わずもがな」のすぐ後に「失礼ですが」と付け加えることで、「ご存知だったら申し訳ありません」というニュアンスもプラスすることが可能です。
ところで、ここまで配慮して「言わずもがな」を使うのならば、いっそのこと「言わずもがな」を取り去って「いつもお世話になっております。明日までにご連絡をお願いできますでしょうか」で良いのではと感じるかもしれません。
しかし、以前にも「連絡して欲しい」と先方に伝えている場合は、「言わずもがな」もしくは「言わずもがな」の意味にあたる言葉を含めないと、先方に「以前も連絡して欲しいって言っていたけれど、この人は自分で言ったことも忘れているのだろうか」という疑念を抱かせる恐れがあります。相手の誤解をできるだけ回避するためにも、「言わずもがな」を正しい意味で、なおかつ前後に丁寧語や謙譲語を散りばめて使用することができるでしょう。