この内申点が入試に関わるとは、いったいどういうことなのだろうか。都立高校に進学する場合はこの内申点がかなり影響する。都立に不合格だったときのための“保険”として私立高校の合格内定をとる際も、内申点によって評価される。私立高校を第一希望にしたとしても、内申点を参考にする学校は増えている。この内申点をとるのが難しいので、実態を知った人は中学受験に向かっていく。
公立中学校の内申とはどのようなものなのかを知るため、2021年3月に都内の公立中学校を卒業した生徒5人、保護者15人から話を聞いた内容をまとめた。
95点をとっても、5段階評価の“5”はとれない
現在、中学生の親世代(40~50代を想定)にとって、テストでいい点を取れれば、成績は上がると考えている人は多いはずだ。なぜなら、最終目標が大学入学試験突破という時代を生きてきたからだ。ひたすら暗記し再生し、試験が終わればすべて忘れても問題はなかった。「試験に出ない教科は勉強しなくてもいいし、覚えなくてもいい」と指導された経験がある人もいるはずだ。
しかし、今はそうではない。問を立てる力や、思考力が問われる。そこで重視されるのは、思考力がどのようについているかが判断できる提出物だという。
現在都立高校に通う男子生徒は「先生が200人近い生徒の提出物の内容をきちんと見ていたかどうかは不明。返ってきた先生のコメントを見ると、“最後まで文字をうめよう”とか、“冒頭は一文字開けよう”とか書式に赤字が入っていた」と振り返る。
加えて、「たとえテストで100点をとっても、提出物が出されていなかったり、授業態度が悪かったりすると、“3”がつきます。僕は家庭の経済状況から都立しか行けないので、中3の2学期は内申を1点でも多く上げるために頑張った」と語る。
都立高校の一般入試は複雑で、都の教育委員会によると、学力検査と内申点が7:3の比率で合否が判断される。しかも実技(技術家庭、美術、音楽、保健体育)の4科目は2倍で計算されるのだ。
前出の生徒は、実技教科の内申点を上げるべく、ペーパーテストは95点をとったものもあったが、評価は全教科“3”だった。
「特に音楽を頑張って、ペーパーでは98点をとりました。でも僕は1年の頃授業態度が悪く、音楽の先生に嫌われていた。さらに変声期で歌がうまく歌えない。そういうところで評価が下がったんだと思う」
結局、彼は志望校をワンランク落として、都立高校の試験に挑み、結果的に合格した。彼の経験から、多くの生徒と保護者が指摘する、内申点の不透明さがわかる。
彼は「ピアノや体操など、習い事をしている人の実技の点数は高い。ウチはその余裕がないから」とも言っていた。