我が子の口から汚い言葉。叱るべき?それとも…
男子なら「オマエ」「クソババア」。女子なら「キモっ」「ウザ」など、暴言にも取れるような汚い言葉を口にする子ども。特に小学校高学年頃の〝前思春期〟から始まることが多く、親としては悲しいやら、切ないやら、苦しいやら…。
どうして子どもたちはこのような汚い言葉を使うようになるのでしょうか。スクールカウンセラーとしても活動している、臨床心理士・吉田美智子さんにお話を伺いしました。
汚い言葉を使う理由は2つ
子どもが汚い言葉を使うには、大きく分けて2つあります。
<1>〝子ども〟から〝大人〟になる大きな成長期
「小学校高学年(前思春期)になると、子どものとき当たり前だったことが、当たり前でなくなるという状況になります。例えば、重い荷物は親が持ってくれたけれど、その荷物も自分で持たなければならないとか、習い事は親が送り迎えをしてくれていたけれど、ひとりで行ってひとりで帰ってこなくてはいけないとか、そういったことです。今まで親の下で絶対的な安心感の中で生活していたけれど、子どもにとってそうとも言い切れなくなってきたと感じる出来事が増えていくのです。
ただでさえ価値観がゆらぐ時期に、頼りにしていた柱(親)もゆらぐ。子どもの心は不安でたまらないときがある一方で、成長する喜び、楽しさ、勢いもあります。この両方を行き来すると情緒不安定になります。このストレスのうっぷんを晴らすのに、汚い言葉は子どもにとってしっくりくるのです」
<2>仲間同士の共通言語
「大人に対して、これまでとは同じ安心感・信頼感を持ちにくい子どもたちにとって、仲間との関係性が何より大事(ギャングエイジ、チャムシップ)になります。汚い言葉を使うことで仲間意識が深まり、また大人(とりわけ彼らが距離を置きたいと願う頭の固い大人)との間に距離を持つことができるからです」
心も身体も大人へと成長する子どもにとって、そのむず痒さを表現するには汚い言葉の破壊力がしっくりくるのかもしれません。とはいえ、そのままにしておくこともできません。では、どのように大人は接するのがベストなのでしょうか。
親は〝叱らない〟〝否定しない〟〝共感する〟
「親はしつけとして、汚い言葉を使ったら叱りたくなります。しかし、それは逆効果かもしれません。大人がムキになればなるほど、この時期の子どもたちは面白がって汚い言葉を繰り返します。まずは叱らず、否定しない態度を見せてください。そして、汚い言葉の裏に隠された想いを言語化してみましょう。
例えば『ウザ』と言われたら、『ちょっとしつこかった?』『もう親がそんなこと教える年齢じゃなかったね』など。最初は無反応かもしれませんが、しばらく続けてみてください。また『そのウザいって気持ちわかるよ』とできる範囲で共感するのも効果的です。
これらの〝叱らない〟〝否定しない〟〝共感する〟という行為は、信頼関係を維持するのに大切なことです。高学年ともなると別々に行動することが多くなりますが、心は常にそばにいると認識させてあげられるといいですね。良き理解者がいれば、捨て台詞のように汚い言葉を使うことなく、気持ちを言い表せると思います」
取材・文/福島孝代
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臨床心理士
吉田美智子
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