これはネガティブ・バイアスと呼ばれていて生物としての生き残り戦略に由来するこの性質なのですが、社会生活を送ったり、感情をコントロールしたりする場合には不都合になることが多いのです。ネガティブなことばかり記憶に残っていると不安になりやすく、自信が持てなくなったり、人間関係の悪化につながったり、健康的な生活ができなくなるからです。
ただ最新の脳科学でわかってきたのは、脳は人の思考に合わせて変化していく性質があることです(神経可塑性)。ネガティブに物事を考える傾向にある人の脳は、物事をよりネガティブに考えやすく変化していき、逆にポジティブに物事をとらえる人の脳は、物事をよりポジティブにとらえるように変化していきます。このことを知っておけば、ネガティブな人とはつき合わないと決めるだけで、ムダにイライラしなくなります。
イライラしない人は、積極的に誰かの幸せ話や成功体験を聞く習慣があり、脳がポジティブなものに変化している。いい習慣は「よく聞く」のほうです。
【目次】
「惰性」はとても厄介な存在
毎朝同じテレビ番組を見ている? 見ていない?
おそらく、ほとんどの人は毎朝、同じテレビ番組を見ているでしょう。ではなぜそのテレビ番組を見ているのか。何かしらの理由があるでしょうが、それは「惰性」ではないでしょうか。怒りの感情と上手につき合う上で、惰性とはとても厄介な存在なのです。
基本的に私たちは「変わりたくない」と思っています。理科の時間に、ホメオスタシスという言葉を習ったことがあると思います。生命が同じ状態を維持しようとする性質のことです。気温や湿度など外部の環境が変化しても、この性質があるから私たちは健康を維持できるのです。
ホメオスタシスは本来、生体を一定に保とうとする性質なのですが、生活全体にも大きな影響を与えて「生活パターン」を形成しています。毎朝、同じテレビ番組を見て同じ時間に家を出て出社するというのは、その典型的なものです。
パターンで生きることは効率よい面もありますが、パターンがほんの少しでも崩れるとイライラしやすくなるという大きな欠点があります。だから、自らパターンを壊す努力をしてパターンが壊れても大丈夫という準備をしましょう。おすすめのいい習慣は「見ていない」となります。