「標準時間」とは標準的に作業をこなす時間のこと
標準時間とは、標準のスキルを持つ作業者が作業を行うために必要な時間のことです。製造現場の工程管理で用いられるもので、作業が予定通り進んでいるか、改善点は何かを判断する指標になります。
また、作業のどの部分を訓練すれば良いかを確認する基準にもなるものです。ここでは、標準時間を設定する目的などをご紹介します。
■設定する目的
標準時間を設定するのは、製造工程を常に正しく調整するためです。標準時間を基準にすることで、作業者の仕事量や必要な人員、設備、生産工程の時間などが決めやすくなります。
また、工程管理では適切な原価で作業することも求められますが、原価計算するためにも標準時間がなければなりません。原材料の価格だけでなく、人が働いた時間も原価に影響するからです。
標準時間の計算を間違えて実際の作業時間が長くかかった場合、原価が高くなり赤字になる可能性もあります。現状の問題点を把握するためにも、標準時間は必要です。標準時間がなければ、問題なく作業できているのかどうかも判断ができません。
■科学的に設定されることが必要
標準時間の設定は、科学的に行われることが重要です。作業ベースの基準となるため、使用する誰もが納得できるものでなければなりません。部門によって基準が甘いなどの違いがあってはならず、すべて一律で公正なものにする必要があります。
客観性のある数字であることはもちろん、設定が適正に行われ、正しい目的で使用されることが大切です。
標準時間を構成する要素
標準時間は、大きく「作業標準時間」と「準備標準時間」に分けられます。さらに、作業標準時間は、実質的な作業時間や作業が中断された余裕時間など、いくつもの要素に分けられているのが特徴です。
ここでは、作業標準時間と準備標準時間について説明し、それぞれ分かれている要素について詳しくご紹介します。
■作業標準時間
作業標準時間とは、実際に作業に就いている時間のことです。実質的に作業をしている「正味作業時間」と、作業が中断されたために生じる「余裕時間」で構成されます。
正味作業時間と余裕時間は、さらにそれぞれいくつもの時間に細かく分かれている仕組みです。正味作業時間と余裕時間からさらに分かれる内容について、詳しく見てみましょう。
正味作業時間
正味作業時間は「主作業時間」と「付随作業時間」で構成されています。主作業時間とは実質的な作業時間のことで、製品の形状や寸法を変更させる作業です。機械操作や組立作業などの手作業がこれにあたります。
付随作業時間とは、工具や機械の手入れなどを行った時間であり、機械に材料を取り付ける、取り外すなどの作業です。
余裕時間
余裕時間とは、作業の実施中、管理上の問題や疲労などで作業が中断されたために生じる遅延時間のことです。作業者によって避けることができないとみなされる時間で、作業に必要な時間として見込んでおかなければなりません。
「作業余裕」「職場余裕」「用達余裕」「疲れ余裕」の4つに分けられます。
作業余裕とは、工具の取り替えや注油、掃除などにあてられる時間のことで、職場余裕は材料や工具などを待つ時間や連絡などに使われた時間です。
用達余裕は水を飲む、トイレに行くなどの時間で、疲れ余裕は休憩時間を指します。
■準備標準時間
作業を準備する時間で、「準備正味時間」と「準備余裕時間」に分けられます。準備正味時間は作業に関する準備や後始末を行う時間です。工具の準備や片づけがこれにあたります。
準備余裕時間は、作業標準時間における余裕時間にあたるものです。主に疲れ余裕となり、準備の時間にも適度に疲労を回復する時間が設けられます。
準備正味時間
準備正味時間は、作業場や機械・工具の準備、作業の片づけなどに必要な時間です。どの作業でも1回だけ生じる時間で、作業数量に関係ありません。
準備正味時間における段取りは誰がいつ行っても同じようにできるようにすることが大切で、そのために手順書を作り、手順通りにできるように訓練することが求められます。
準備余裕時間
準備余裕時間でも、作業標準時間の余裕時間と同じように「作業余裕」「職場余裕」「用達余裕」「疲れ余裕」の4つを想定します。
準備作業の特殊性から不規則に発生する遅れや、工場の管理方式によって左右される遅れなどが考えられます。ただし、作業標準時間ほどには大きな時間をとらず、主に疲労回復の休憩時間が大きな割合を占めるでしょう。
標準時間の設定方法
標準時間は正味作業時間と余裕時間から求めますが、計算のためには正味作業時間の具体的な数字を設定しなければなりません。
設定方法は、作業を直接測定する方法と、あらかじめ実験や経験で得た一定の基準をもとに設定する2つの方法があります。基準値をもとに設定する方法は、「PTS法」や「標準資料法」「実績資料法」の3つです。
2つの設定方法について見ていきましょう。
■時間を観測して設定する
実際に作業をストップウォッチやビデオカメラなどで観測する方法です。観測した時間はレイティングという補正を行います。
例えば、観測対象の人が通常の作業員の1.5倍の速さで作業できる場合、正味作業時間にするために1.5で割るのがレイティングです。
このほか、統計的手法で正味作業時間を推定する方法もあります。
■一定の基準をもとに設定する
一定の基準をもとに設定する方法は、「PTS法」「標準資料法」「実績資料法」の3種類があります。PTS法は人が行う作業を細かい基本動作まで分解して作業時間を算出する方法です。「あらゆる作業は基本的な動作の組み合わせにより成り立っている」という考えがベースになっています。
標準資料法とは、過去に測定したデータをもとに、作業別の標準時間を決める方法のことです。実績資料法は、これまでの実績をもとに作業時間を計算します。
標準時間の計算方法
標準時間の計算方法は、正味時間に余裕時間を加えて求めます。そのため余裕時間も算出しなければならず、余裕率を計算する必要があります。
余裕率は職場で数週間から数カ月の調査を行い、算出した平均時間をから一定の計算方法で求めなければなりません。
ここでは、標準時間の計算方法についてご紹介します。
1.正味作業時間を明らかにする
標準時間を設定する方法のうちどれかを選び、実際に正味作業時間を計算します。作業員を計測する方法であれば、計測した時間にレイティング補正を行ったものが正味作業時間になります。
まだ作業が実際に行われていない場合は、PTS法が便利です。作業の方法や条件がわかれば必要時間を算出でき、正味時間が算出できます。
2.余裕時間を求める
次に、余裕時間を求めます。通常、余裕率は職場で発生率や平均時間などを調査し,外掛け法や内掛け法という計算方法で求めますが、一般的に目安とされている数字は次の通りです。
・作業余裕:3〜5%
・職場余裕:2〜4%
・用達余裕:2〜3%(平均は3%程度)
・疲れ余裕:7%程度(作業により異なる)
余裕時間は、正味作業時間に余裕率を乗じて求めます。
標準時間を設定して業務を改善しよう
標準時間とは、一定の条件で標準的な作業を行うときに必要な時間です。製造工程を調整し、業務の改善点を見つけ出す目的で設定されます。
標準時間は正味作業時間と余裕時間に分けられ、正味作業時間は直接観測法、もしくは一定の基準値をもとに設定する方法のどちらかで計算しましょう。標準時間を設定するためには、正味作業時間と余裕時間それぞれの数字を正しく求めなければなりません。
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