「砂上の楼閣」の2つの意味
「砂上の楼閣」には、「見かけ倒し」と「実現不可能」の2つの意味があります。「砂上の楼閣」は、見かけは立派であるものの、基礎の部分がしっかりしていないため、長く維持できないときに使用します。
そのほかにも、実現できないことという意味も併せ持っており、正しく使い分けることが大切です。ここでは、「砂上の楼閣」の意味をご紹介します。
1.見かけ倒しという意味
砂上の楼閣(さじょうのろうかく)
見かけはりっぱであるが、基礎がしっかりしていないために長く維持できない物事のたとえ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「砂上の楼閣」は「さじょうのろうかく」と読み、不安定で移ろいやすいもののたとえとして用いられる言葉です。砂上とは「砂の上」を指し、楼閣とは「高層で立派な建造物」のことを表しています。
つまり「砂上の楼閣」とは、いくら高層で立派な建物であっても、砂の上のように不安定な場所に建てればたやすく倒壊してしまう、ということに由来してできた言葉です。
2.実現不可能という意味
砂上の楼閣(さじょうのろうかく)
実現不可能なことのたとえ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「砂上の楼閣」は、「実現が不可能なこと」「現実味がないこと」といった意味も併せ持っています。そもそも砂の上に高層で立派な建築物を建てることは、現実的に考えて無理があるといえるでしょう。
そのため「砂上の楼閣」は、現実的に不可能な計画や、継続できないような事案に対しても使用できる言葉です。ほかにも、長続きしない事柄に対しても使用できます。
「砂上の楼閣」の由来は聖書
「砂上の楼閣」の由来は、聖書だといわれています。「マタイによる福音書」によると、山上でイエスは以下のように説教したと記載されています。
「わたしの言葉を聞くだけで行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人のようである。雨が降って川があふれ、風が吹いてその家に襲いかかると、倒れて、その倒れ方がひどいありさまである。」
なお、マタイによる福音書の意味は、以下のとおりです。
マタイによる福音書(またいによるふくいんしょ)
新約聖書、四福音書の巻頭書。1世紀末ごろ書かれたと推定され、イエスの系図・誕生物語から、山上の垂訓を始めとする教え、受難と復活に至る生涯を記す。イエスを旧約聖書の預言の完成者、すなわちメシア(救世主)とする叙述が特徴。マタイ福音書。マタイ伝。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
つまり、マタイによる福音書に記載されたイエスの教えが、「砂上の楼閣」の由来になっているといわれているのです。
「砂上の楼閣」の使い方や例文
「砂上の楼閣」には見かけ倒しや、実現不可能という意味が含まれていることから、使うシーンを間違えてしまうと、相手に不快な思いを与えてしまいます。
例えばビジネスシーンにおいて、進行中だったプロジェクトがうまくいかず、失敗に終わってしまった相手に対して、「砂上の楼閣だった」と声をかけるのは誤りだといえるでしょう。「砂上の楼閣」には否定的な意味合いもあるため、使う際は注意が必要です。
【例文】
・資金の調達方法に無理があれば、そのプロジェクトは【砂上の楼閣】となるでしょう
・計画通りに進むとは到底思えないほど、無理なスケジュールを組んだこの生産管理表は、【砂上の楼閣】と呼んで問題ないだろう
「砂上の楼閣」の類義語2つ
「砂上の楼閣」の主な類義語は、「羊頭を掲げて狗肉を売る」「机上の空論」の2つです。「羊頭を掲げて狗肉を売る」は、見かけが立派で中身が伴っていないことを表現したいときに使用します。「机上の空論」とは、理論上の整合性はあるものの、実現不可能な考えという意味です。
ともに「砂上の楼閣」に似ている言葉ではありますが、多少意味合いに違いがあるため、正しい意味を理解しておくことが大切です。ここでは、「砂上の楼閣」の類義語を2つチェックしましょう。
【類義語1】羊頭を掲げて狗肉を売る
羊頭を掲げて狗肉を売る(ようとうをかかげてくにくをうる)
羊の頭を看板に出し、実際には犬の肉を売る。外見と内容が違うこと、見せかけが立派でも実質がそれに伴わないことのたとえ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「羊頭を掲げて狗肉を売る」とは「ようとうをかかげてくにくをうる」と読み、羊の看板を掲げながら、実際は低価格な犬の肉を売ることを表現した言葉です。実際には中身が伴っていないときに使用します。
「羊頭を掲げて狗肉を売る」には、見かけを立派にしてごまかすという意味があるものの、「砂上の楼閣」にはごまかすという意味合いはありません。しかし、ともに見かけ倒しであるという点において、類義語だといえるでしょう。
【類義語2】机上の空論
机上の空論(きじょうのくうろん)
頭の中だけで考え出した、実際には役に立たない理論や考え。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「机上の空論」とは「きじょうのくうろん」と読み、理論上は整合性があるように見えても、実際には実現できない考えのことを示す言葉です。
「砂上の楼閣」の持つ、実現不可能なことの意味に近い言葉といえるでしょう。ただし、「机上の空論」には「見かけ倒しで、基礎がしっかりしていない」という意味はないため、使用する際は正しく使い分けましょう。
「砂上の楼閣」の対義語2つ
「砂上の楼閣」の主な対義語は、「堅実」「用意周到」の2つです。「堅実」とは、考えややり方がしっかりしているという意味です。人の性格を表現する際にも使用します。
「用意周到」とは、事前準備が完璧にできている様を表現するときに使用する言葉です。何事にも慎重に物事を進めていくような人を指すこともあります。ここでは、「砂上の楼閣」の対義語をご紹介します。
【対義語1】堅実
堅実(けんじつ)
手堅く確実なこと。確かであぶなげのないこと。また、そのさま。「―な手段」「―に生活する」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「堅実」とは、「考え方ややり方がしっかりとしており、危なげがない」という意味です。砂上の楼閣のような不安定さは感じられないでしょう。
【例文】
・私の彼は【堅実】な性格をしており、数年前に交わした約束も守ってくれます
・子どもの教育費を貯めるために、【堅実】な計画を立てていこうと思います
・今度お見合いする相手は、【堅実】な性格の方だと嬉しいなと、期待しています
【対義語2】用意周到
用意周到(よういしゅうとう)
用意が行き届いて、手ぬかりがないこと。また、そのさま。「―な(の)実施計画」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「用意周到」とは、「事前準備が完璧にできている」という意味です。人の性格を「用意周到」と表現するときは、何事にも慎重で、どんなときも事前準備を怠らない神経質なタイプとの意味が込められているでしょう。
【例文】
・私は【用意周到】な性格のため、週末には翌週の献立を決めて、買い出しに行きます
・日頃の避難訓練で、【用意周到】な準備を行っていた成果もあり、今回の災害では大きな被害は発生しませんでした
「砂上の楼閣」の意味を理解しよう
「砂上の楼閣」とは、見かけは立派でも基礎がしっかりしていないため、長続きしないという意味です。砂の上に建築物を建てることが不可能であることから、実現不可能という意味も併せ持っています。
「砂上の楼閣」は使うシーンによっては相手に不快な思いをさせてしまう言葉のため、使用する際は注意が必要です。「砂上の楼閣」の類義語や対義語との違いもチェックし、正しく使い分けましょう。
写真・イラスト/(C) shutterstock.com
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