「肝いり」の意味や語源とは?
「肝いり」の意味や語源について、知っていますか?辞書には何と載っているか、まずは見てみましょう。
意味
「肝いり」は「きもいり」と読みます。「かんいり」ではありません。「肝いりの企画」「友人の肝いり」など、「肝いり」という言葉は意外とよく使われていますが、正しい意味は知っていますか?
「肝いり」は辞書によると、次の4つの意味があります。
1 双方の間を取りもって心を砕き世話を焼くこと。また、その人。
2 江戸幕府の職名。同職中の支配役・世話役。高家肝煎・寄合肝煎など。
3 江戸時代、村役人をいう。庄屋(しょうや)・名主(なぬし)など。
4 奉公人・遊女などを周旋すること。また、それを業とする人。
(<小学館 デジタル大辞泉>より)
1〜4のうち、ビジネスシーンやプライベートで、多く使われるのは、1の意味です。双方の間に立って、配慮しながら世話を焼いたり、ものごとを取り持ったり、それをする人のこと。
「社長の肝いり」のように社会的に力のある人が目的を達成するよう、働きかけることに対しても使わます。また、友人や弁護士など、仲裁役となるような立場の人が、間に立って仲介したり、世話を焼く行為にもあてはまるので、「仲介や世話役」の意味でも使えます。
2と3は、江戸幕府や江戸時代の役職の名称。「支配役・世話役・庄屋・名主」など、人をまとめる役割をする人のことを言います。4は、江戸時代に奉公人や遊女の仲立ちをしていた人やその業の意味ですが、今ではほとんど使われていません。
語源「肝いり」の言葉の由来
では「肝いり」という言葉の由来は何なのでしょう? 「肝いり」の語源は、江戸時代の幕府の役職である「高家肝煎(こうけきもいり)」が由来。「高家の同職の中でも、頭だって職務を取り扱う者」のこと。もともと、上に立つ者の主導的な役割という意味があったようです。
さらに、町の代表として、世話をする人を指す言葉としても「肝煎」という言葉が使われていたという話も。「肝いり」が「世話を焼くこと」というのは、この役職が語源といえそうです。
「肝いり」を使う時の注意点とは?
「肝いり」は、「権力や地位のある人」と「仲介や世話を焼く行為」に使われることが多い言葉です。これまで説明したように「肝いり」という言葉は、双方の関係を良好に保つ為に、あれこれと気配りをして仲を取り持つこと。人の間に立ったり、一生懸命に人の世話を焼く気持ちが伝わるプラスのイメージがありますね。
ですが、「肝いり」を使う時の注意点があります。「肝いり」という言葉は、語源が「肝煎」という役職であったように、時に政界や企業のトップといった、地位や権力のある人物を意味する言葉が加わると、マイナスのイメージがつきまとうことです。
権力者がトップダウンの命令で、主導権を握ってものごとを動かす時に「肝いり」を使うと、辞書に載っている解釈と異なった用法になることがあるので、要注意です。「首相の肝煎りの政策」と使われる時は、「トップダウンで物事を決定し、実行する」といった一方的な印象になる場合も。
「肝いり」を仲介や仲裁といった使い方で用いると、マイナスのニュアンスにはなりません。「肝いり」という言葉の持つ本来の意味をしっかり理解して、正しく使うことができるようにしましょう。
「肝入り」と「肝煎り」、正しい漢字表記とは?
さて、「肝いり」の正しい漢字表記はどうなのでしょう? 語源となった「肝煎り」のほか「肝入り」の漢字表記も見かけます。ここでは「肝いり」について、「肝煎り」と「肝入り」のどちらの漢字表記が正しいのかを説明します。
本来は「肝煎り」と漢字で表記します。まず、「肝」と「煎る」の漢字について見ましょう。「肝」は人の内臓(肝臓)を表す漢字。胆力というように、肝は比喩として「精神(心)の宿るところ」を意味します。「煎る」は「焙煎する、気を配ってちょうどよく焦がす」ことなので、「肝煎り」という表現は、肝(心)を煎るほど大変な思いで、熱心に人の世話をするという意味に。「肝煎り」の表記が本来は正しいのです。
にもかかわらず、現代の辞書では「入り」「煎り」のふたつの漢字表記が載っています。「肝煎り」という言葉の語源からは、「煎り」が本来の日本語での使い方。ですが、実は「肝入り」と誤用する人が多いことにより、「肝入り」も辞書に掲載されるように。時代とともに、正しい言葉の使い方が変化することもあるのですね。
使い方を例文でチェック!
「肝いり」という言葉は、案外使いやすく、使う機会も多いため、正しく使いたいものです。ここでは「肝いり」を使った例文をいくつか紹介します。この例文を参考にして、「肝いり」の正しい使い方ができるようにしてみましょう。