旅の始まりは、北極圏最大の街トロムソから
東京からコペンハーゲン、オスロを経由して、およそ14時間30分で北部ノルウェーの街、トロムソに到着。トロムソは極北研究の最大拠点の街。また、オーロラの研究および鑑賞に適した土地でもあります。世界最北の大学である、トロムソ大学の研究所では、オーロラのほか、極北に関する研究がいろいろなされています。ちなみに、オーロラ鑑賞に適していると言われる時期は9月中旬から4月上旬。5月中旬から7月下旬は、ミッドナイトサン(白夜)で、日が沈みません。また、11月中旬から1月中旬は、ポーラーナイト(極夜)の時期で、白夜とは反対に太陽が昇らない時期なんです。
3月下旬に訪れたときは、春に近いとはいえ、まだ雪が積もっている時期。服装は、冬の北海道や東北地域に行くときぐらいの格好が必要です。トロムソに到着し、街を歩いて感じたのは、どことなく懐かしい空気。なんとなく、軽井沢にでも来た感じで、つい先ほど到着したばかりだというのに、まるで何年も住んでいるかのような既視感を感じる、不思議な街なんです。
トロムソの街は、トロムソイヤ島とトロムスダーレンに分かれ、この2つを約1kmのトロムソ橋が結んでいます。トロムスダーレンでひと際印象的な建物が「トロムスダーレン教会」。1965年に建築家ヤン・インゲ・ホーヴィによって建設された、北極海の聖堂とも呼ばれる教会で、トロムソの冬とオーロラをモチーフにデザインされています。西側はガラスのファサードで、東はモザイクガラスが入っています。モザイクガラスは1972年に後からつくられたもの。以前は西側と同じガラスのファサードだったそうなんですが、神父が話をしているときにまぶしくて、礼拝に訪れた信者が目を開けていられなくなり、サングラスをかける人が増えてしまったため、モザイクガラスにしたんだとか…。通常、ステンドグラスは比較的薄いガラスでつくられるんですが、日よけの意味もあるため、ガラスが厚いそう。モザイクの模様は、キリストと3つに分かれた光を表しています。白夜の季節には、コンサートが行われたりも…。この日も地元オーケストラのコンサートリハーサルが行われてました。
北ノルウェー科学センターでは、オーロラ体験フィルムを見ることができます。ノルウェーでは、300年前からオーロラの研究が行われていており、科学センターでは、オーロラがどのあたりに発生するかを見ることができるんです。オーロラベルトは、極の近くに出やすいと言われていますが、楕円形をしており、上下に動くため、数百年に1度、南ヨーロッパ、イタリアや日本の北海道でも観測することができたとか…。科学センターには1911年からのデータが入っていて、観測結果を基にオーロラの再現が可能なんです。
トロムソ大学は、世界最北の総合大学で、世界各地からの留学生がたくさんいます。トロムソ大学博物館では、スカンジナビア半島北部などに居住する少数民族、サーミ人の生活や化石などの展示を行っています。博物館内のショップでは、北ノルウェーでしか購入できないものがいっぱい。フォーク型の菓子楊枝みたいなナイフは、トナカイの骨でできたもの。描かれている模様は、サーミ人が文字代わりに使っていたものなんです。サーミ人は、文字を持たず、こういった模様や歌で後世に伝えていたとか。現在では、この模様をアルファベットに置き換えることもしているそう。
ホテルは「リカ グランド ホテル トロムソ」に宿泊。リカ ホテルは、ノルウェーに多いホテルチェーン。こじんまりとしつつも、清潔感があって居心地のいい感じ。アメニティは、石鹸、シャワージェル、シャンプー。ノルウェーのホテルは、歯ブラシがないんだそう。だから旅行の際には、忘れずに持参してね。
朝食はホテルのビュッフェ。リカ ホテルは、ビュッフェがおいしいので評判のホテルなんです。特に「リカ グランド ホテル トロムソ」は充実しているんだとか…。パンと言えばデンマークが有名だけど、ノルウェーのデニッシュやパンも負けずにおいしい。スムージーやヨーグルトなども充実してます。
撮影・文/森井真弓(ADVOX)
取材協力/スカンジナビア政府観光局