危なっかしい
「危なっかしい」は、保証や確証がなく、誰が見ても危なく見える状況を意味する言葉です。頼りない相手に不安を覚えるという点では、「心許ない」に近いといえます。
あぶなっかし・い【危なっかしい】
[形]いかにも危ない感じがするさま。「―・い手つき」
[補説]「あぶない」に比べて、わきで見ている者の主観的判断が強く含まれている。
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
ただし、危なっかしいが表現するのは不安感だけではありません。危なげな状況にハラハラしてしまう状況を言い表す言葉であり、ニュアンスに若干の違いがあるのです。具体的な例文は、以下の通りです。
例文
・ぼろぼろの橋を渡ろうとしている彼女は危なっかしい。
・料理に慣れない子どもが包丁を使うのは危なっかしいので、大人が一緒におこなう。
おぼつかない
「おぼつかない」とはなんとなく頼りない様子のことを指す言葉です。はっきりとしないときや、ぼんやりとしているとき、また、確実には信用できないときなどに用いることがあります。
また、あまり相手と付き合いがないために様子がわからないときにも使うことがあるようです。そのほかにも、待ち遠しいけれども、自分からは行動を起こせないときも「おぼつかない」と表現することができます。
おぼつか‐な・い【覚束ない】
〘 形容詞口語形活用 〙
[ 文語形 ]おぼつかな・し 〘 形容詞ク活用 〙 ( 「おぼ」は、ぼんやりした、不明確な状態を表わす。「覚束」はあて字。古くは「おほつかなし」 ) 対象の様子がはっきりせず、つかみどころのないさまをいい、また、そのためにおこる不安な気持を表わす。
(引用:小学館『精選版 日本国語大辞典 』より)
例文
・このままでは就職どころか卒業すらおぼつかない。
・祖母はおぼつかない手つきで箸を持っている。
頼りない
心許ないは、頼りなく不安で、心が落ち着かないさまを表す言葉ですから、たよりないことや、あてにならないことを意味する「頼りない」 も類語と言えるでしょう。
たより‐な・い【頼り無い】
[形][文]たよりな・し[ク]
1 たよりにならない。あてにならない。心もとない。「―・い返事」「―・い人」
2 たよりになるものがない。
「由縁ゆかりの人を失い、―・き身となりしにつけ」〈逍遥・当世書生気質〉
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
例文
・彼の頼りない返答を聞いて不安になった。
・彼女はいつもぼんやりしているので、一緒に海外に行くと頼りない気持ちになる
【目次】
「心許ない」の対義語
「心許ない」の対義語に「心強い」「安心」「心配無用」の3つが挙げられます。不安感や頼りなさなどネガティブな意味の逆で、ポジティブな意味の対義語を確認しましょう。
対義語の中でも、使う場面の違いやどの意味が強いかによって使い分けると相手に伝わりやすくなります。「心許ない」の対義語である3つについて、例文も含めて紹介します。
心強い
「心強い」の意味は、頼りになり安心できることです。基本的に他者に伝えるときの言葉で、頼りになる相手に安心感を表現しています。
こころ‐づよ・い【心強い】
[形][文]こころづよ・し[ク]
1 頼りになるものがあって安心である。心丈夫だ。気強い。「君が味方になってくれれば何よりも―・い」⇔心細い。
2 情にほだされない。つれない。
「あなたは恋に冷淡です。余あんまり―・いと思います」〈荷風・地獄の花〉
3 意志が堅固である。気丈だ。気強い。
「上は、御息所の見ましかばとおぼし出づるに、堪へがたきを、―・く念じかへさせ給ふ」〈源・桐壺〉
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
そのため、頼りがなく不安だと表現する心許ないとは反対の意味となります。上司や目上の人に使うのはおすすめしません。「心強い」と感じた自分が上から相手を見下ろして評価するように聞こえる場合があるからです。使用する際は、心強く+動詞で特定の相手に対してではない伝え方をしましょう。具体的な例文は、以下の通りです。
例文
・後輩からの後押しは、心強い。
・皆さんからのアドバイスがあったので、心強かったです。
安心
「安心」は気がかりなことがなく、心が落ち着いていることを意味します。不安の反対言葉である「安心」は、日常会話でも頻繁に使用する言葉のひとつです。
あん‐しん【安心】
[名・形動](スル)
1 気にかかることがなく心が落ち着いていること。また、そのさま。「列車で行くほうが安心だ」「安心して任せられる」
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
安心の語源は、仏教用語である「あんじん」からきているといえます。「仏教の功徳によって迷いがない安らぎの境地」という意味があり、心が落ち着くという現代の意味につながっています。具体的な例文は、以下の通りです。
例文
・仲間がいてくれるから、私は安心して挑戦できる。
・無事に山道から抜け出せて、ひと安心した。
あん‐じん【安心】
仏語。
1 仏法の功徳によって、迷いがなくなった安らぎの境地。
2 阿弥陀仏の救いを信じて、浄土往生を願う心。
心配無用
「心配無用」の意味は、漢字そのままに心配はいらないということです。不安や心配はしないで安心してよいという点で、不安を感じている表現の「心許ない」の対義語といえます。
しん‐ぱい【心配】
[名・形動](スル)
1 物事の先行きなどを気にして、心を悩ますこと。また、そのさま。気がかり。「親に心配をかける」「将来を心配する」「心配な天気」
2 気にかけてめんどうをみること。世話をすること。「近くに住む娘が食事の心配をしてくれる」む‐よう【無用】
[名・形動]
1 役に立たないこと。使い道のないこと。また、そのさま。無益。「無用な(の)臓器はない」⇔有用。
2 いらないこと。また、そのさま。不要。「ここでは遠慮は無用です」「心配御無用」「問答無用」
3 用事のないこと。「無用の者立ち入るべからず」
4 してはいけないということ。禁止。「立ち入り無用」「開放無用」「貼紙無用」
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
相手から心配されたときに、その人に敬意を払いながら心配は不要だと伝えられるため、ビジネスシーンでも使用されるでしょう。具体的な例文は、以下の通りです。
例文
・体調もすっかりよくなったので心配無用です。
・天気予報も晴れに変わったので、明日の運動会は心配無用ですよ。
まとめ
「心許ない」は、不安の表現として古くから使われていた言葉です、現代では、日常的にはあまり使われませんが、目上の人の誘いを断ったり、状況を伝えた上で心配なことを訴えたりする際に活用できます。正しく理解して使用すれば、ビジネスシーンでも有効な表現です。しかし、ただ言葉を知っているからと乱用するのはおすすめしません。類義語である「気がかり」や「心細い」の方が伝わりやすいシーンもあるでしょう。それぞれの特徴を知って上手に使い分けてください。
写真・イラスト/(C) Shutterstock.com
▼あわせて読みたい