「紋甲烏賊」が生息する海域
「紋甲烏賊」は水温が高めの海底に生息するイカで、日本では房総半島以南に生息しており、国外では東シナ海、南シナ海に多く生息しているといわれています。漁獲量については九州を中心とした西日本エリアが主流で、東日本に比べて流通価格も高めです。
海底の砂に棲む「紋甲烏賊」は、底引き網での漁法で漁獲が主流ですが、かごや刺し網を用いた漁法も利用されています。釣船でのルアーフィッシングも人気で、「紋甲烏賊」釣りを毎年楽しみにしている釣り人も多いようです。
日本近海で獲れる「紋甲烏賊」は流通価格が高めであるため、ヨーロッパコウイカやトラフコウイカなどが欧州から輸入されており、「紋甲烏賊」に代わる食材として食卓に上っています。
「紋甲烏賊」のさばき方
自宅で「紋甲烏賊」をさばいてお刺身にできたら嬉しいですよね。そこで『菊乃井 本店』の総料理長である辻昌仁さんに特別に「紋甲烏賊」のさばき方をお聞きしましたので、紹介します。
1:まず背側(色の濃い方)の外皮の中央に切り目を入れる。
2:外皮を左右に広げ、中に甲と呼ばれる石灰質の固い物があるので、これを取り外す。
3:胴と足のつなぎ目から胴の先端にかけて、内臓を覆っている薄い膜に切り込みを入れる(内臓を傷つけないように気を付ける)。
4:3で入れた切り込みの胴と足のつなぎ目に左親指を入れ、胴の先端に向かって左側の内臓と胴の間に指を滑らせながら薄い膜をはずしていく。右側も同様にする。
5:片方の手で胴をおさえながら、もう片方の手で足を引きあげて、内臓ごと足を胴から外す(墨袋を破らないように気を付ける)。
6:胴の身と皮の間に指を入れ、身と皮を外していく。
7:身には薄皮が付いているので、まず内側を上にして置き、タオル等でこすり内側の膜を取り除く。
8:胴の足の付け根の方の端から5mmくらいの所に包丁で切り込みを入れる(下の皮まで切らないように端から端まで入れる)。
9:身を裏返し、8で入れた切り込みの部分をつかみ、ゆっくりと引っ張りながら薄皮を外す(もし皮が途中で切れたら竹串等で丁寧に取り除く)。
10:足の部分は最初に墨袋を破らないように取り除き、肝(茶色い部分)を足側につけて内臓を切り離す。
11:肝の廻りの薄膜を指で破り肝を取り出す。
12:足についている長い2本の触腕を付け根から切り取り、目とくちばしは包丁で押し出すようにして切り離す。
13:くちばしを切り取った後、裏側(白い方)から包丁を入れ、つながっている足を切り開く。
14:固い軟骨の部分と足を切り離す。
15:ミミの部分は軟骨がついているので包丁で切りとり、身と皮の間に指を入れて引っ張り、身と皮を外す。
16:胴をお刺身にする場合は、外側を上にして、表面だけ縦に細かく切り込みを入れる。
17:縦2~3等分にし、横向きにし、7~8mm厚さにへぐ。
18:ミミの部分は細かく切る。
この通りに紋甲烏賊をさばいたら、『菊乃井 本店』の味わいが感じられるかもしれません。ぜひ、お試しください。
「紋甲烏賊」の美味しい食べ方
「紋甲烏賊」は、昔から特に西日本エリアでは頻繁に食べられているとか。刺身や天ぷらだけでなく、煮ても焼いても美味しいですよ。和食にも中華にも適した食材として、近年のグルメブームに乗って人気が再燃しているとか。
ここでは、「紋甲烏賊」のおすすめレシピを紹介しましょう。
「紋甲烏賊」のおすすめレシピ
新鮮な「紋甲烏賊」なら、刺身が一番のおすすめです。食材としての「紋甲烏賊」は、肉厚ながら柔らか過ぎず固過ぎず、程よい歯ごたえで食感がよく、特有の甘さがあります。寿司ネタとしても人気があり、握り寿司やチラシ寿司の材料にも向いていますね。
「紋甲烏賊」を天ぷらにする場合は、胴体と足(ゲソ)が美味しく食べられる部位です。ゲソは、かき揚げにしても美味しく食べられます。
「紋甲烏賊」は煮付けの食材としても人気! みりんと醤油に、砂糖や調味料を加え出汁を作り、人参・大根・里芋・蓮根などの材料と一緒にじっくり煮込んで出来上がりです。
縁日の屋台でおなじみの「イカ焼き」も、「紋甲烏賊」を材料に自宅で簡単に調理できます。みりん・酒・醤油・砂糖・おろしショウガを調合して調味料を作り、はらわたを取った「紋甲烏賊」を胴体と足に分け、胴体を1cm幅に切って調味料に約10分ほど漬け込みます。
あとは水気を取ってサラダ油をひいたフライパンに入れて、ヘラで押さえつけながら両面を3分程度に焼きます。最後に、調味料の残りをからめ水分を飛ばしながら焼いて出来上がりです。
最後に
漢字で「紋甲烏賊」と書くと、食べ物というイメージが出てきませんが、日本ではイカとして昔から親しまれてきた食材です。「煮ても焼いても」という言葉がありますが、「紋甲烏賊」は、まさに煮ても焼いても、そしてもちろん生で刺身や寿司ネタにしても美味しく食べられる食材です!
自宅で「紋甲烏賊」を調理する機会があったら、「紋甲烏賊」の漢字の意味や由来などを、子どもと話しながら食べると食育としてもいい経験となりますね。
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