「縮緬」とは表面にしぼのある絹織物の総称
「縮緬」とは表面に細かいしぼと呼ばれるしわのある、染生地として使われる絹織物の総称です。読み方は「ちりめん」です。漢字から判断するのは難しいので、読み方と意味をセットで覚えておくと良いでしょう。
【縮緬:ちりめん】
表面に細かいしぼのある絹織物。
縦糸に撚(よ)りのない生糸、横糸に強く撚りをかけた生糸を用いて平織りに製織したのち、ソーダをまぜた石鹸(せっけん)液で煮沸して縮ませ、精練したもの。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
もともとは高級な絹織物の一種として知られていましたが、現在では絹だけでなくレーヨンやポリエステルなどの化学繊維で作られた縮緬もあります。
「縮緬」は南蛮貿易で日本に伝わった
「縮緬」は16世紀末に南蛮貿易によって明から堺へ伝えられました。その後、堺から京都の西陣、丹後、桐生、長浜、岐阜など日本の各地に時間をかけて広まりました。
「縮緬」が一般に普及したのは江戸時代中期の17世紀末です。大きなきっかけとなったのは「縮緬」を染め生地として使った友禅染の流行でした。現在では京都の丹後縮緬、滋賀の長浜縮緬、新潟の越後縮緬など、地方ごとの特色のある縮緬が知られています。
「縮緬」の特徴と種類
「縮緬」はしぼによる独特の風合いを持っていて、しわになりにくく、伸縮性があることなどから、着物から小物まで、さまざまなシーンで使われている絹織物です。
16世紀末に日本に伝わって以降、各地で独自の製法が編み出されて発展を遂げ、個性的な縮緬が作られてきたという背景があります。ここでは縮緬の特徴と種類を解説します。
「縮緬」の特徴はしぼがあること
「縮緬」の大きな特徴は表面にしぼがあることです。しぼとは横糸か縦糸、あるいは両方を強撚糸(きょうねんし)と呼ばれる撚り(より)をかけた糸を用いて織ることによって生まれるシワです。
強撚糸によって平織りし、ソーダの入った石鹸液で煮沸することで縮ませたのち、さらに水洗いして乾燥させると、表面に独特の縮みができます。このしぼがあることにより「縮緬」ならではの風合いが生まれます。
強撚糸をどこに使うかで3つに分類される
緯糸に強撚糸を使いシボを出したものを「緯縮緬(よこちりめん)」経糸に強撚糸を使いシボを出すものを「経縮緬(たてちりめん)」と言います。「縮緬」と聞いてイメージするものは「緯縮緬(よこちりめん)」であることが一般的です。
また、経糸と緯糸両方に強撚糸を使ったものは「経緯縮緬(たてよこちりめん)」と言います。夏の和服などで用いられ、ジョーゼット生地が代表的です。
「しぼ」のつけ方は2種類ある
織物のシボのつけ方は2種類あり「両しぼ(両縮み)」と「片しぼ(片縮み)」に分類されます。
緯糸に、右撚り左撚りの強撚糸を交互に打ち込むことで、全体に均等なシボをあらわしたものを「両しぼ」や「両縮み」と言い、一般的な縮緬はこれにあたります。洋生地ではクレープ・デシンも「両しぼ」です。
「片しぼ(片縮み)」は、緯糸に強撚糸を用いて平織にして、たて方向にシワ状のシボをあらわしたものです。代表的な「片しぼ」の素材に楊柳が挙げられます。
「一越(ひとこし)縮緬」「二越(ふたこし)縮緬」など多くの種類がある
「縮緬」には製法や生産地の違いによって、多くの種類があります。まず製法の違いによって、大きく「一越縮緬」と「二越縮緬」の2つに分かれます。
「一越縮緬」は縦糸に撚りをかけていない糸を使い、横糸に右に撚りをかけた糸と左に撚りをかけた糸を1本ずつ交互に織り込んだ生地です。細かなしぼができるため、一越縮緬の絹織物は高級品とされています。
「二越縮緬」も「一越縮緬」と同様に、縦糸には撚りをかけていない糸を使います。横糸は右に撚りをかけた糸と左に撚りをかけた糸を使い、交互に2本ずつ織り込むのが大きな特徴です。横糸の数が多いので、しぼが大きくなっています。また一越縮緬よりも伸縮性があることも特徴です。
この他にも横糸を4本もしくは6本使うことによる大きなしぼが特徴となっている「鬼縮緬」、縦糸と横糸ともに細い糸を使うことによって、細かく密に織り込んだ「錦紗縮緬」などがあります。
化学繊維を使った「縮緬」もあります。化学繊維を使った「縮緬」は比較的安価で丈夫です。虫食いされる心配がなく、家庭で洗濯することもできるという利点もあります。ただし、光沢や風合いは絹織物と比べると、やや見劣りするでしょう。
化学繊維を使った「縮緬」には、ポリエステルを使ったポリエステル縮緬、レーヨンを使うことで光沢が出ているレーヨン縮緬などがあります。
「縮緬」は産地によっても、いくつかの種類があります。有名なものでは、京都府の北部で生産されている丹後縮緬、滋賀県の北東部で生産されている長浜縮緬、新潟県の北部で生産されている越後縮緬などがあげられます。
縮緬の製作方法
「縮緬」を語る上で欠かせない「撚り(より)をかけた糸」とは、ねじりあわせた糸のこと。
ほとんど撚らない「無撚糸」と右や左に撚りをかけた「強撚糸」を使って平織りし、煮沸することで、撚りをかけた糸が収縮します。撚りが戻ろうとする力を使うことで、生地の表面に独特のしぼが生まれるのです。このしぼが入った布地のことを総称して「縮緬」と呼びます。
「縮緬」を使った例文
「縮緬」は絹織物の総称ですが、しぼがある独特の見た目から、物の状態を形容する場合にも使われます。「縮緬」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
【例文】
・このところ仕事が忙しくて寝不足が続いたせいか、肌に【縮緬】のようなしわができています。
・心地良い秋の風が吹いていて、湖には【縮緬】のような模様ができていました。
・お気に入りの服を乾燥機にかけたら、【縮緬】のようなしわができてしまいました。
「縮緬」が使われている語句
「縮緬」はしぼがあることが大きな特徴となっているため、表面にしぼを連想させる模様が浮かび上がっている物に対して、「縮緬」という言葉を使って形容することがあります。つまりしぼはそれだけ個性的なものであるということでしょう。
「縮緬」という語句が使われている代表的なものは「縮緬雑魚」、「縮緬皺」、「縮緬紙」です。それぞれの語句について、くわしく解説します。
縮緬雑魚(ちりめんじゃこ)
「縮緬雑魚」とはカタクチイワシやウルメイワシなどのイワシの稚魚を塩水で釜揚げした後に乾燥させた食品です。「ちりめんざこ」もしくは「ちりめんじゃこ」と読みます。
乾燥させた姿形が「縮緬」のしぼに似ていることから、「縮緬雑魚」という名称がつけられています。関東では「しらす干し」、関西では「ちりめん」と呼ばれることが多いようです。