日本の「博打」の概念は「双六」から生まれた
「博打」という概念が誕生するきっかけになったのは、江戸時代に賭け事として盛んだった「双六（すごろく）」です。
罫（けい）の引かれた盤に6つのコマを並べ、さいころを振ります。勝敗は、上面に出た目の数によって決定されます。
この形式の「双六」は江戸時代後期にはすたれてしまい、一般的になったのがさいころのみを使って行う「博打」です。
【罫】けい
[１] 文字をそろえて書くために、紙上に一定の間隔で引いた線。罫線。「―の入った便箋」
[２] 碁盤（ごばん）などの上に引いた、縦横の筋。
[３] 輪郭や界線を印刷するために、活字と一緒に組む約物の一。表罫（おもてけい）・裏罫（うらけい）・飾り罫などがある。「―で囲む」
「博打」の類義語
「博打」の類似表現としては、次の5つの表現が挙げられます。
・賭博
・ギャンブル
・一か八か
・乾坤一擲
・伸るか反るか
上の2つは「博打」の持つ1つ目の意味と関連した類義語で、下の3つは2つ目の意味と関連しています。
「博打」には、似た意味を持つ言葉が多くあります。類似表現の知識を整理して、正しく使いこなせるようにしましょう。
賭博（とばく）
まず「博打」の類義語として挙げられるのが、本文でも何度か登場している「賭博」です。日本で「賭博」というと、金品をかけた勝負の中でも違法性がある賭け事を意味します。
「賭け」も「博打」や「賭博」と共通点のある言葉ですが、「賭博」より意味する範囲が大きいのが特徴です。禁止されている賭け事のみを表すわけではないという点では、「博打」により近い表現であるでしょう。
ギャンブル
「ギャンブル」は、違法な賭け事を意味する「賭博」とは対照的に、宝くじや公営ギャンブル、パチンコなどを含みます。
「博打」の中でも、日本では合法で楽しめる金品をかけたゲームを「ギャンブル」と呼んでいます。
一方で、日本でいう「賭博」と「ギャンブル」両方の意味を包括しているのが、英語圏における「ギャンブル」です。意味する範囲に微妙な違いがあるため、注意しましょう。
一か八か（いちかばちか）
「一か八か」は、結果の保証がない状態で運に任せて行動を起こすことを意味します。「博打」の2つ目の意味である、成功の望みが薄い状況下での挑戦と共通する部分が大きい言葉です。
そもそも、「一か八か」の由来も「博打」と関連があり、「丁半賭博」を指して使われていました。「丁」と「半」の漢字の上部が、一と八であることから生まれたのが「一か八か」です。
【丁半／重半】ちょうはん
[１] さいころの目の丁（偶数）と半（奇数）。
[２] 2個のさいころを振って、合計が丁か半かを勝負する賭博（とばく）。
乾坤一擲（けんこんいってき）
「乾坤一擲」は「けんこんいってき」と読み、運命の分かれ道となりうる大勝負を意味します。中国の政治家として活躍した、韓愈の詩『鴻溝を過ぐ』に登場したのが始まりとされます。
「乾坤」は天地、「一擲」はさいころを振るという意味です。つまり、天地をかけた大事な勝負とのニュアンスが強いでしょう。
賭け事だけでなく、人生においてビジネスやプライベートの大切な出来事を形容する際にも用いられます。
▼あわせて読みたい
伸るか反るか（のるかそるか）
「伸るか反るか」は、成功するかどうか分からないが思い切って挑戦する、という意味の言葉です。漫画や小説にも登場する場合が多く、耳馴染みのある方もいるかもしれません。
ときに「乗るか反るか」と誤って表記されている場合がありますが、正しい漢字表記は「伸るか反るか」であるため、気を付けましょう。
成功の保証がない状態で果敢に挑戦する姿勢から「背水の陣」などの表現にも共通点がある言葉です。
▼あわせて読みたい
まとめ
「博打」に込められた2つの意味は、金品をかけた勝負と成功の見込みが低い中でする試みです。どちらの表現にも、成功するか失敗するか分からないというニュアンスが共通しています。
両者の意味を正しく把握して、表現を使いこなせるようにしましょう。
「賭博」には、2つの意味に関連した類義語が多くあるのも特徴です。
類似表現として挙げられるのは、「賭博」や「ギャンブル」のような賭け事を意味する言葉と、「一か八か」や「伸るか反るか」などの成功の保証がない状況下での挑戦を意味する言葉です。
類似表現との微妙な違いを理解すれば、表現力アップの助けになるでしょう。
写真・イラスト／(C) Shutterstock.com
（引用全て〈小学舘 デジタル大辞泉〉より）
▼あわせて読みたい
