「蜻蛉」の意味や読み方とは?
「蜻蛉」は馴染みのある昆虫ですが、なんと読むかわかりますか? 「蜻蛉」は「カゲロウ」、もしくは「トンボ」と読みます。その名前の由来や、季語として使われる際の意味合いについても紹介します。
■意味・読み方
「蜻蛉」は、「カゲロウ」と読みます。そのほか、「トンボ」、「アキツ」、「セイレイ」と読むこともできます。「カゲロウ」と「トンボ」は全く異なる昆虫ですが、「アキツ」は「トンボ」の古名で、「セイレイ」は「トンボ」の別名です。
「蜻蛉」は、「トンボ」と見た目が似ていますが、まったく別の昆虫です。「蜻蛉」は、体長は0.5cm〜2cmほどのカゲロウ目に属する昆虫の総称のこと。早春から秋にかけて羽化しますが、最も多く羽化するのは5月頃です。
なぜ「カゲロウ」も「トンボ」も、同じ「蜻蛉」と書くのか気になりますよね。これは、もともと「カゲロウ」のことも「トンボ」のことも、「蜻蛉」と表記していたことが由来だったようです。現在は、「カゲロウ」であれば、「蜻蛉」もしくは「蜉蝣」、「トンボ」であれば、「蜻蛉」と表記するのが一般的です。
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■由来
次に、「蜻蛉(カゲロウ)」という名前の由来について紹介します。諸説ありますが、代表的なのは、同じ読みの言葉「陽炎」からきているもの。「陽炎」とは、太陽光で熱くなった地面の上や、焚き火越しに見えるものが揺らいで見える現象のこと。「蜻蛉(カゲロウ)」が飛ぶようすが、この「陽炎」のようにひらめいて見えることから、その名前がつけられたといわれています。また、「蜻蛉(カゲロウ)」は、命が短いことからも、「陽炎」のような儚さにたとえられています。
ちなみに、「トンボ」という名前の由来についても紹介しておきます。「トンボ」はもともと、「秋津(アキヅ)」と呼ばれていました。後に、「飛ぶ棒」という別名が生まれ、やがてそれが「トンバウ」、「トウバウ」、「トバウ」、「トンボ」と呼ばれるようになったという説があります。
また、「蜻蛉(カゲロウ)」の儚さにちなんだ言葉や古典があるので、そちらも紹介します。まずは、「蜉蝣の命」という言葉です。こちらには「蜉蝣」という漢字が使われます。辞書を引くと、以下の通り。
蜉蝣の命のように、人の一生が短いことをたとえていう語。はかない命。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
「蜻蛉(カゲロウ)」は、成虫になると、数時間から数日で死んでしまうので、こうした表現ができたのですね。
また、平安時代、藤原道綱(ふじわらのみちつな)の母によって書かれた『蜻蛉日記』という古典があります。これは、身分の高い人と結婚したものの、自身の社会的な立場は保証されていないことや、一夫多妻制により夫からの愛を一身に受けられなかったことなど、その辛い心情を綴った自伝的な古典です。
この日記の中に「あるかなきかの心地(ここち)するかげろふの日記といふべし」という文章があります。「蜻蛉(カゲロウ)」のように、儚い身の上であることをあらわしたもので、本の名前はこれに由来しています。
■「蜻蛉」は秋の季語
「蜻蛉」は秋の季語として使われます。最近は一般的には、「カゲロウ」は「蜉蝣」、「トンボ」は「蜻蛉」という漢字が使われますので、漢字ごとに紹介します。まずは「蜉蝣(カゲロウ)」の季語から見ていきましょう。「蜉蝣(カゲロウ)」は、秋の季語として用いられます。すでに説明しましたが、「蜉蝣(カゲロウ)」は儚さの象徴として使われます。
次に、「蜻蛉(トンボ)」の季語をについて解説します。「蜻蛉(トンボ)」も「蜉蝣(カゲロウ)」と同じく、秋の季語です。「蜻蛉(トンボ)」が成虫として飛ぶのを見られるのは、早いもので春の終わり頃、夏にはたくさんの「蜻蛉(トンボ)」が飛び交うのを見られます。しかし、「蜻蛉(トンボ)」が最も多く見られるのは8月〜9月頃。「蜻蛉(トンボ)」が飛び交うのを見ると秋を感じられることから、秋の季語として使われているのでしょう。
「蜻蛉」とはどんな虫?
「蜻蛉(カゲロウ)」は、カゲロウ目の昆虫の総称のこと。細長い胴体に長い尾、透明な翅がついています。「蜻蛉(カゲロウ)」の幼虫は、川の中に棲んでおり、その幼虫期間は平均で1年ほど。幼虫期間が終わると水中から飛び立ちますが、成虫の寿命はとても短く、数時間から数日なのです。そのようすが、「蜻蛉(カゲロウ)」が儚いもののたとえとして使われる所以です。
「蜻蛉」とトンボとの違いは?
漢字も一緒で、見た目も似ていることから、よく混同されがちな「蜻蛉(カゲロウ)」と「トンボ」。実際にはいくつかの違いがありますので、ここで覚えておきましょう。
分類
まず大前提として、「蜻蛉(カゲロウ)」と「トンボ」では、分類が異なります。「蜻蛉(カゲロウ)」はカゲロウ目に属しますが、「トンボ」はトンボ目に属します。そのため、見た目は似ていますが全く異なる昆虫です。
寿命の長さ
すでに説明した通り、「蜻蛉(カゲロウ)」の寿命は数時間から数日と、とても短命です。幼虫期間は1年ほどなのに、成虫になると長く生きられないのは、まさに儚い命を象徴するような昆虫ですね。いっぽう、「トンボ」の成虫は、約2か月生きます。ちなみに、「トンボ」の幼虫期間は、たいてい1年〜3年です。