「蜉蝣」の読み方と意味とは?
繊細な体に透明の羽をもつ「蜉蝣」。水のきれいなところを好み、自然豊かなところで見られることが多い昆虫です。そんな「蜉蝣」は、寿命がとても短いことから、古くから「はかないもの」の象徴としても用いられてきました。今回は、「蜉蝣」の特徴や名前の由来、そして見た目がよく似ているトンボとの違いを紹介します。
「蜉蝣」は「かげろう」または「ふゆう」と読み、カゲロウ目の昆虫の総称です。
体長は大体10〜15mmほど。成虫は繊細な体をしており、きわめて短命です。夏頃に見られることが多い風流な印象を持つ昆虫で、主に水質がきれいな水辺に生息するといわれ、自然豊かな田舎で多く見られます。
幼虫は、カワゲラ類、トビゲラ類とともに、水生昆虫の代表です。成虫の「蜉蝣」は、細長い円筒形の体をしており、透明で大きな前羽を持っています。なんと口器は退化していており、食事をとらないそう。幼虫は若虫(わかむし)と呼ばれ、河川の渓流や湖沼に生息しています。幼虫は成熟すると、水辺で羽化して亜成虫(あせいちゅう)になり、もう一度脱皮して成虫になります。
ちなみに「蜉蝣」の名前の由来は、成虫になって飛び交うさまを「陽炎(かげろう)」になぞらえたとされています。「陽炎」とは、地上から立つ水蒸気によって、空気が揺らぎぼんやりと見える現象のことです。
「蜉蝣」の一生ははかない?
「蜉蝣」は水中で卵からかえり、幼虫である期間は平均1年、長いもので3年ほどだそう。その後、亜成虫の時期はおよそ1日程度。すぐに脱皮して成虫になりますが、なんと成虫期間も1日程度だとか。短い種類では、さらに4〜5時間しか生きられないそうです。あまりに寿命が短すぎますね… 。
このように成虫期間が短いことから、「蜉蝣」は、はかないもののたとえに用いられるのです。「蜉蝣の命(短命のたとえ)」という言葉もあるほど。
古くは文学の中でも、はかないものの象徴として登場します。日本三大随筆のひとつ『徒然草 (つれづれぐさ) 』には、「かげろふの夕を待ち、夏の蝉 (せみ) の春秋をしらぬもあるぞかし」という記述がみられます。「蜉蝣」が夕方を待たずに死んでしまうことを挙げて、生命の儚さを説いているのです。
また、「蜉蝣」の分類階級には“目”という名称が使われていますが、これはギリシア語の「ephēmeros(わずか1日の命の意)」に由来するそうです。
「蜉蝣」の種類とは?
「蜉蝣」は世界に2000種類以上あり、日本にはフタオカゲロウ科、コカゲロウ科、ヒラタカゲロウ科、ヒトリガカゲロウ科など、10科21属60種以上が知られています。ここでは、主に日本に生息する「蜉蝣」を紹介します。