「知己」とは自分を理解してくれる友人、知人のこと
一見すると簡単そうなのに正しく読むのが意外に難しい、「知己」。日頃の会話にはあまり出てこない言葉のため、どう読めばいいかわからない人も多いでしょう。「知己」の「己」は自己の「己」と同じ文字なので、「じこ」と同じように「ちこ」と読んでしまいそうになります。でも、スマホやパソコンで平仮名で「ちこ」と入力しても「知己」とは出てきません。
さて、何と読むのでしょうか?
正解は……【ちき】でした!
【知己】1 自分のことをよく理解してくれている人。親友。「この世に二人とない知己を得る」2 知り合い。知人。「知己を頼って上京する」
「知己」とは自分をよく理解してくれる友人や、知人を意味する言葉です。
言葉の由来を踏まえると、知人であっても単なる知人ではなく「自分のことをよく知ってくれている知人」に対して使用する方が適切です。シンプルに知人と表現するよりも、相手への敬意を含んでいる点が特徴です。
難しい漢字を使用しているわけではありませんが、日常的に耳にする言葉ではないため、読み方、意味ともに自信をもって答えられる人は少ないかもしれません。
「知己」と同じような意味をもつ類語には、下記のようなものがあります。
〔類語〕面識、顔馴染み、顔見知り、馴染み、幼馴染み、昔馴染み、知人、知り合い、知音、存じ寄り、隣人、旧友、旧知、旧識、故人、故旧、古馴染み、幼友達、竹馬の友、知る辺、近付き
由来は中国の「史記」
「知己」は、司馬遷が書いた古代中国の歴史書「史記」に由来する言葉です。簡単に逸話をご紹介します。
春秋時代末期の人物である豫譲(よじょう)は、晋の政治をつかさどっていた人物に仕えましたが、能力を認められることはありませんでした。そんな不遇の時代を経て、はじめて豫譲の実力を認め重用してくれたのが、伯爵の地位にいた智伯(ちはく)です。智伯は早くから豫譲の才能を見抜き、国士として登用しました。
しかし智伯は戦場で敗れ、無惨な死を遂げます。智伯に逃してもらった豫譲は、智伯の命を奪った人物への復讐を誓うのですが、そのときに言ったとされる言葉が「士は、自分を知ってくれる人(知己)のために命を投げ出す」というものです。
このときの豫譲による、自分を認めてくれたリーダーへの感謝と敬愛を込めた決意の言葉がもとになって、「知己」は自分をよく知ってくれている友人や知人をあらわすようになったとされています。