「人心掌握」という言葉を聞いたとき、あなたはどんなイメージを持ちますか? 他人の心を掴み、思い通りに動かす術というと、あまりいい印象を持たないかもしれません。しかし、「人心掌握術」を知ることで、職場や人間関係が驚くほどスムーズになるかもしれませんよ。
本記事では、ポジティブにもネガティブにも使われる「人心掌握」を掘り下げ、日常生活や仕事に役立つテクニックを紹介します。
「人心掌握」の意味と使われ方
「人心掌握」は、「人心」と「掌握」2つの言葉を組み合わせてできた四字熟語です。意味を詳しくみていきましょう。
【人心】じんしん
人間の心。また、世の人々の考えや気持ち。「―を掌握する」「―を惑わす」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用【掌握】しょうあく
[名](スル)《手ににぎる意》自分の思いどおりにすること。全面的に自分の支配下に置くこと。「政権を―する」「部下を―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「人心掌握(じんしんしょうあく)」とは、他人の心を意のままにコントロールすることを意味します。「人心」は人間の心や世の人々の考えを、「掌握」は自分の意のままにすることです。
良い意味と悪い意味の両方で使われる
「人心掌握」は、ポジティブな意味とネガティブな意味の両方で使われます。良い意味では、有能なリーダーが、メンバーの心を上手にコントロールし、方向性を定めることです。例えば、プロジェクトの指揮を取るリーダーが、メンバーの心を掴んで成功に導くことが「人心掌握」です。
一方、悪い意味では、他人の心を操作して利益を得ようとする行為を指します。例えば、自分の都合の良い目的のために他人を操ることも「人心掌握」といえるでしょう。
「掌握」の2つの意味
「人心掌握」が2つの使い方をされるのには、「掌握」という言葉に次の2つの意味があることが関係しています。
・心を掴む(ポジティブな意味)
・支配する(ネガティブな意味)
心を掴むという意味で使う場合は「センスのある店主の人柄に、店を訪れる客たちは「すっかり心を【掌握】された」と表現できます。
「掌握」が支配するの意味で使われるのは、掌握する対象が個人である場合が多く「課長が部長を【掌握】してからは、部の雰囲気が変わってしまった」のように使えるでしょう。
「人心掌握」の基本は「与えること」
「人心掌握」の基本は「与えること」です。人は、誰しも他人から認められたいという欲求を持っています。相手の欲求に応え、信頼や賞賛を与えることで、相手は「あなたの力になりたい!」と考えるようになるでしょう。
安心感や受容感を相手に与える
「人心掌握」をするために相手に与えるものは次のとおりです。
・安心感:警戒しないで居られる状態
・受容感:自分が認められているという実感
・期待:自分があてにされていると感じられる状況
これらの要素を受け取った相手は、自分が重要な存在として認められていると感じて、力になりたいと考えるようになるでしょう。
人の心を掴む「人心掌握術」の具体例
「人心掌握術」とは、相手の心を掴む手段を意味します。「人心掌握術」を上手く活用することで、人間関係の悩みに対する解決の糸口が見つかるかもしれません。
コミュニケーションを円滑にするために、普段の生活の中でも実践できる4つの「人心掌握術」を紹介します。
秘密を共有する
秘密の共有は、相手の心を掴むのに有効な方法とされています。秘密は、他の人が知ることができない情報です。そんな限定された情報を、自分に打ち明けてくれるという点で、相手は自分が信頼されているんだと感じられます。
また、秘密の内容にまで共感してもらえた場合は、同じような秘密の情報を打ち明けてくれるきっかけになるかもしれません。
相手に合わせる
相手の仕草や言葉に合わせるのも、「人心掌握術」として効果があります。
友人や取引先の担当者と話をしていて、気付いたら同じポーズをしていた経験があるかもしれません。人間には、自分と似ている人に好意を抱きやすいという特性があり、無意識に同じ姿勢を取ることがあるからです。
一方で、意識的に仕草や言葉を相手に合わせて、好印象を与える技法をミラーリングといいます。あくまで自然に相手の言葉を繰り返したり、同じ姿勢をとったりすることで、相手に与える印象が良くなるでしょう。
アメとムチを使い分ける
「人心掌握術」のコツは与えることだと紹介しましたが、いつも甘い言葉ばかりをかけていては、相手に信頼され尊敬される存在にはなれないでしょう。
部下や友人が間違った方向に進もうとしている時には、しっかりと助言を行い自分の意見を表現する必要があります。そのうえで、褒めるべきポイントがあれば惜しげなく褒めることができるのが、人の心を掴むリーダーです。