「求肥」とはもち米の粉から作られる和菓子の材料のこと
「求肥」は「ぎゅうひ」と読み、もち粉や白玉粉に水飴や水や砂糖を練りながら作られる和菓子を指す言葉です。
ほのかな甘みとモチモチとした弾力を感じられる食感が特徴です。時間が経っても硬くなりません。そのまま食べるだけでなく、大福やすあま、アイスなどの材料としてもよく使われます。
「求肥」を辞書で調べると「求肥飴の略」と記載されているため、ここでは求肥飴として記載されている意味を確認しておきましょう。
【求肥飴:ぎゅうひあめ】白玉粉を蒸し、白砂糖と水飴を加えて練り固めた菓子。白く半透明で弾力がある。求肥餅。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
(C) Shutterstock.com
牛の皮に似ていたことが名前の由来
「求肥」の名前は牛の皮に似ていたことが由来といわれています。現在の「求肥」はもち粉や白玉粉が原料のため白いですが、昔は玄米から作られていたため黒っぽい色をしていました。その色が牛に似ていたことから、「牛皮」といわれていたそうです。
しかし、当時の日本では牛や豚などの肉を食べることは忌避されており、牛皮ではなく「求肥」と表記されるようになったという説が有力です。
「求肥」の原料
「求肥」は、白玉粉やもち粉などの粉類と、砂糖や水飴などの糖類から作られています。
白玉粉ともち粉の原料は、実はどちらももち米です。しかし、白玉粉を使うかもち粉を使うかで「求肥」の仕上がりが異なります。白玉粉はつるりとした食感、もち粉はモチモチした食感が特徴です。一般的に、「求肥」を作る際にはもち米が使われることが多いといえます。
平安時代に中国から日本に伝わった
「求肥」の歴史は古く、平安時代には既に中国から伝わったといわれています。唐の時代であったため、遣唐使によって日本にもたらされました。
原料に玄米を使っていたため黒っぽく牛の色のようであることから、かつて日本では牛皮と呼んでいたことは既にお伝えしました。中国では「牛脾(ぎゅうひ)」と書き、祭り事に用いられていたとされています。
3種類の製法がある
「求肥」の製法には「水練り」「茹で練り」「蒸し練り」の3種類があり、茹で練り、蒸し練りは基本の水練りに、それぞれ茹でる、蒸す、という工程が加わる製法です。
水練りはもち粉や白玉粉を加熱しながら、砂糖や水飴を加えてこねて作ります。茹で練りはもち粉を一度練った後に茹でてから砂糖や水飴を加え、蒸し練りはもち粉などを蒸してから砂糖や水飴を加えるものです。
3種類の製法のうち、もっとも主流なのは水練りです。水練りの「求肥」はなめらかで柔らかいことが特徴とされます。また、蒸し練りは水練りで作られたものよりも保存期間が長いなど、同じ「求肥」でも製造方法によって違いがあります。
昆布の粉末を練り込んだ和菓子「求肥昆布」も
「求肥」と昆布の粉末を用いた和菓子が「求肥昆布(ぎゅうひこんぶ)」です。福井県敦賀市の名物菓子で、もち粉を蒸して昆布粉や糖類を練り合わせ、薄く伸ばし短冊状に切って作ります。
もともとは小さく切った昆布を酢に漬け、蒸して乾燥させ白く粉をふかせたものでした。明治時代に、福井市の羽二重餅(はぶたえもち)にヒントを得て考案されたといわれています。
「求肥」とお餅との違い
「求肥」とお餅は一見似ていますが、原料が異なります。お餅はもち米を蒸し、ついて作るものです。そのため、独特の粘りや柔らかさが特徴といえるでしょう。
一方「求肥」は、もち米を粉状にしたもち粉を使い、さらに水を加えて作ります。もち米をそのまま使うのではなく粉状にして使う点、またお餅には入れない水が加わる点が異なります。
(C) Shutterstock.com
「求肥」は製造過程で砂糖を入れる
さらに、「求肥」は製造過程で砂糖を加えます。この点がお餅との大きな違いです。「求肥」は、もち粉に砂糖や水飴などの糖分を加えてこね上げて作ります。そのため、お餅とは違いそのままでも強い甘みが感じられ、和菓子として美味しく食べることができるのです。
一方でお餅には糖類が入っていないため、そのままでは強い甘みを感じることはありません。