「揺蕩う」はゆらゆら揺れる、ためらうという2つの意味
「揺蕩う」にはゆらゆら揺れ動いて位置が定まらない、気持ちが定まらずにためらうという2つの意味があります。ゆらゆら揺れ動くという意味で使われる場合は、海に浮かぶ小舟や川に浮かぶ葉など、水中に浮かんだ物体の状態を形容することが多くあります。
たゆた・う【揺蕩う】
１ ゆらゆらと揺れ動いて定まらない。「波間に小舟が―・う」
２ 気持ちが定まらずためらう。心を決めかねる。
「強悪非道の曲物も女と見て少し―・う内に」〈鉄腸・花間鶯〉
（引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より）
「揺蕩う」は日常会話でも使われる言葉ですが、文学や音楽などでもよく登場する言葉といえるでしょう。
■「揺蕩う」の読み方
「揺蕩う」の読み方は「たゆたう」です。古典でも使われている言葉で、その場合には「たゆとう」という読み方をすることもあります。
「揺」は音読みで「よう」、訓読みでは「ゆ（れる）」「ゆ（らぐ）」などで、「蕩」は音読みで「とう」、訓読みで「うご（く）」「ほしいまま」「あら（う）」「はら（う）」「とろ（ける）」です。
いずれも「たゆたう」という読み方とは共通点がないため、「揺蕩う」は難読漢字といえます。
■名詞では「揺蕩い」「揺蕩」という言い方がある
「揺蕩う」は動詞ですが、名詞では「揺蕩い」「揺蕩」という言い方があります。「揺蕩い」の読み方は「たゆたい」、「揺蕩」は「ようとう」で、動詞と名詞の違いはありますが、意味は基本的には共通しています。
「揺蕩」が使われるケースはあまり多くはありません。しかし、太宰治の『お伽草子』という作品の中に「ゆらゆら揺蕩しながらたったひとりで歩いている」という一節があります。
「揺蕩う」の使い方と例文
「揺蕩う」は文学的な表現をする時に、使われることの多い言葉です。
【例文】
･植物博士と呼ばれているその老人は、あたりを見回しながら、揺蕩うように草原の中をゆっくりと進んでいきました。
･子どもが作った笹の舟は、湖の真ん中で風に揺られながら、しばらく揺蕩うと、笹がほどけて沈んでしまいました。
･彼女の心は揺蕩うばかりで、結婚すべきかことわるべきか、なかなか結論を出せませんでした。
「揺蕩う」の類語3つ
「揺蕩う」と共通する要素のある言葉はいくつかあります。その中でおもな類語は以下の3つです。
･漂う
･浮揚
･動揺
漂うと浮揚は、ゆらゆら揺れ動いて位置が定まらないという意味の「揺蕩う」の類語、動揺は気持ちが定まらずにためらうという意味の「揺蕩う」の類語といえるでしょう。この3つの類語はそれぞれ、幅広い場面で使われている言葉です。意味と例文を紹介します。
1.漂う
漂うという言葉には、空中や水面を浮かんで揺れて動く、あてもなくあちこちをさまよう、香りや煙が風に運ばれてきて周辺に満ちる、気配が感じ取れる、落ち着かない、たじろぐなど、さまざまな意味があります。
【例文】
･部長が職場の自分の椅子に座っているだけで、あたりに緊張感が漂うのは、部下を監視するような視線で見つめているせいです。
･パン屋さんの前を通った時に漂う香りに負けて、パンを購入してしまいました。
2.浮揚
浮揚には浮かび上がらせること、浮かび上がることという意味があります。物体が浮かぶという使い方の他に、景気が良くなるといった使い方をすることの多い言葉です。
【例文】
･かつては空撮をするのには、大がかりな準備と予算が必要でしたが、今はカメラ付きのドローンを浮揚させることで、自在に撮影することができます。
･マジシャンが見せてくれた空中浮揚する物体の手品の仕掛けは、思ったとおり、磁石を使うシンプルなものでした。
･国の景気浮揚策が十分でないため、企業はそれぞれ自力で頑張る必要があります。
