中1と小5の子どもがいます。子どもの自主性について悩んでいます。
朝起きてから寝るまで、親から言われないと行動できません。勉強や宿題も当然、私が言わないと動きません。反抗期も始まってきているため、日に日に対応が難しくなっています。
どのような声かけをすれば、子どもの意欲を引き出すことができますか?
仮名:川田さん
子どもの行動は声がけひとつで変わる
「子どもの意欲を引き出したい」「自ら行動する子になってほしい」という願望は多くの親御さんにとっての悲願かもしれません。
しかし現実的には、子どもが自立できる年まで、時間をかけて教え、育てていくもので、そう簡単に子どもは親の理想通りの行動ができるようになりません。
しかし一方で、言葉がけ一つで、子どもが突如変わることもあります。言葉の威力は大きく、言葉一つで人をプラス方向に変えることができる場合もあります。
逆に「よかれと思って」の言葉かけが、破壊的、壊滅的な影響を与えてしまうこともあります。
筆者のもとへは保護者から年間数千件の相談がありますが、子どもの意欲を減退させてしまう言葉を使ってしまっている親御さんが多いことに驚かされます。
もしかしたら川田さんも同様かもしれません。そこで、意欲を減退させる5つのNGワードについてご紹介します。
この5つは効果がないにもかかわらず、よく使われている言葉です。一部、NGワードからの言い換えもお伝えしますので、参考にしてみてください。
子どもの意欲を減退させる5つのNGワード
(1) 「自分でやってごらん」
一見、この言葉は、子どもの自主性を育む言葉のように聞こえます。ところが、内向的な子の場合や、やりたくないことが対象の場合は、この言葉は、突き放された感覚を与える場合があります。
「自分のことは自分でやる」は大切なことです。しかし、子どもはなかなか行動できないから困っているわけであり、行動を促す言葉を投げかけられたところで、何の効果もありません。
もちろん子どもが自らやりたいことは、何も言わずとも行動しますが、親が子どもにやってもらいたい行動は、大抵の場合、“子どものやりたくないこと”です。
ですから、このような場合には、次のような言葉に言い換えてみてください。
「自分でやってごらん」→ 「一緒にやろう」
「一緒に…」というフレーズを、筆者は「勇気を与える魔法の言葉」と呼んでいます。この言葉によって、はじめの一歩を踏み出すきっかけを与えることもできるからです。
もちろん、毎回一緒にやる必要はありません。子どもが自分で動けないときがあれば、「一緒に」というワードを使ってみてくださいということです。
例えば、片付けをしなさいと何度言ってもやらない場合、一緒にやろうと誘うのです。子どもが乗ってこないこともあると思います。それでも構いません。その場合は、親が一人で片付けていきます。
しかし大切なことは、「一緒にやろう」という言葉を使ってから行うことです。すると何度か繰り返していくうちに、子どもが一緒にやるようになったり、その後、自分で行動するようになっていきます。
(2)「頑張りなさい」
「頑張ってね」という言葉は、社交辞令の一種として使うことがあります。そのような使い方は、何の問題もありませんが、子どもに自主的に行動させる場合の言葉としては、適切であるとは思いません。
そもそも、「頑張る」とはどのような意味でしょうか。具体的な内容がよくわかりません。単なる精神論としての“頑張る”という声かけであれば、子どもが具体的に行動できないのも無理はありません。
もしどうしても「頑張りなさい」という言葉を使いたいときは、こう言い換えてはどうでしょうか。
「頑張りなさい」→「楽しんでいこう」
いかがでしょう。ぐっと雰囲気が変わりませんか。
(3)「勉強(宿題)しなさい」
このフレーズはNGの中でも定番中の定番。
言えば言うだけ、ますます勉強から遠ざかってしまう、代表的なダメな声かけです。
しかし、「言わないようにしてください」とお話すると、親御さんは我慢してしまいます。そのうち、言葉にはせずとも態度で示したり、別の場面でフラストレーションが一気に噴出したりすることもあります。
本来は言わないのが望ましいのですが、どうしても言いたいときは次のような声かけをしてみてください。
「勉強やりなさい」→「今日の学びは終わった?」
勉強という言葉は印象があまりにも悪いため、「学び」という言葉を使うのです。
コツは、前向きな言葉に変えること
子どもは驚くと思います。「勉強はやりたくない」は言い分として通っても、「学びたくない」とは言いづらいものがあります。子どもの中でも何か違和感があるようです。
ちょっとした言葉の言い換えですが、ぜひお試しください。
(4)「そろそろ時間よ!」
子どもが本当に気づいていない場合、この声かけは問題ありません。気づかせているわけですから、子どもにとってみたら「教えてくれて、ありがとう」となります。
しかし、わかっている事柄について、いちいちアナウンスすることは子どもからすれば“ウザい”ことでしょう。
しかし、このような話をすると、「うちの子は言わないとやらない」という声が上がってきます。
果たしてそうでしょうか。自分が子どもの頃、今やろうと思ったときに親から「やりなさい!」「そろそろ時間よ!」と言われ、やる気がなくなった経験はないでしょうか。
親は、子どもがやろうしたときにアナウンスして、やる気を削ぐことにかけては天才的ともいえる直感があると言えるかもしれません。
ですから、言いたくなったら、もう少し様子を見てもいいのではないでしょうか。
それでもまだ言いたい場合は、時間になったからアナウンスするのではなく、時間になる30分前に「そういえば、何時からやるんだったっけ?」と子どもに時間を聞いてみてください。
この言葉なら、子どもは時間に追い立てられた感覚はなく、また子ども自身が時間の認識をしていることもわかります。
「そろそろ時間よ!」→(30分前に)「そういえば、何時からやるんだったっけ?」
(5)「やるべきことをやってから、ね」
言ったことのある親御さんは大変多いのではないでしょうか。
やるべきこととは勉強や宿題のことが多いのですが、とにかくそれらを終わらせてから、遊びなさいという趣旨の言葉がけです。
もちろんこの言葉がけをしても、子どもが素直に従っているのであれば問題ないと思いますが、大抵は嫌々ながら「やるべきこと」をやります。その結果、パフォーマンスが大きく落ち、10分で終わる作業が1時間もかかるというケースもあるとも聞いています。
食事で言えば、「嫌いなものは先に食べてしまいなさい。大好きなおかずは嫌いなものを食べてからにしなさい」と言っているようなものです。果たして楽しく食事ができるのか疑問です。
そこで、こう言い換えてみましょう。
「やるべきことをやってから」→「やりたいことを先にやってごらん」
子どもはかなり驚くと思います。そこで、すかさず「やらなければいけないことは後でやればいいよ。その時間は大丈夫だよね」と伝えておきます。
優先順位を話し合い、子どもに判断させる
しかし、「こんなことをしたら、やりたいことばかりで、やらなければならないことはやらなくなってしまいます」という声が親御さんから出てきます。確かにそのようなことが起こるかもしれません。その際は、次のような話し合いをします。
①先にやるべきことをやってから、やりたいことをやる
②やりたいことをやってから、やるべきことをやる
この2つのうちどちらが自分として望ましいかを話し合い、どちらにするかは、子どもが自分で判断します。
②で失敗してきていることは本人にもわかっているでしょうから、かなりの確率で①のほうをやってみたいと言うと思います。子どもが自主的に判断をして実行するわけですから、遂行する可能性は高いということです。
以上、子どもの意欲を減退させる5つのNGワードについてお話ししてきました。
NGワードには、「子ども側の視点で考えず、親側の視点で見ている」という特徴があります。
親は立場的にどうしても、子どもを動かしたいと思いがちです。しかし、意欲的に行動するようになるためには、子どもの心が動かなければ体は動きません。つまり子ども側の視点に立った言葉が必要になるということです。
言葉のちょっとした使い方で、子どもは大きく変わることがあります。日常使う言葉を少し変えてみると、意外な発見もあると思います。ぜひ参考にしてみてください。
東洋経済オンライン
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