在来線とは
新幹線の駅で目にする「在来線」という案内表示板ですが、どんな意味かご存じですか? 思い込みで勘違いをすると、仕事や人との待ち合わせ時間にも影響します。この機会に正しく押さえておきましょう。
在来線の範囲
JRが定義している「在来線」とは、「新幹線」以外の従来からある路線のことを指します。では、新幹線以外の路線すべてが在来線かというと、そうではありません。JRグループの路線以外で、私鉄等には「在来線」という言葉は使いません。なぜかというと、在来線という名称は、1964年に東海道新幹線が開通したことに伴い、当時の日本国有鉄道(以下、国鉄)が、従来からの路線と、新幹線を区別するために使用したからです。
国鉄ってなに?
では、国鉄とは、現在のどの会社が相当するのでしょうか? 1987年3月に、日本国有鉄道は、7社に分割民営化されました。その7社は、現在の北海道旅客鉄道(JR北海道)、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)、四国旅客鉄道(JR四国)、九州旅客鉄道(JR九州)および全国1社の日本貨物鉄道(JR貨物)にあたります。この7社を総称してJRグループと呼んでいます。
新幹線とは
新幹線の開業当時、国鉄では重要な路線のことを幹線と呼んでいました。現在でも東海道本線や山陽本線、北陸本線などは幹線と呼ばれています。そのとき、一番の乗降客数を誇った幹線が東海道本線で、輸送量はかなりひっ迫していました。
当時、日本の鉄道は、狭軌といって、標準軌間よりも線路幅が狭いものを採用していました。それでは車両の安定性や、騒音の問題を解決できず、スピードを上げることができなかったのです。
輸送力をあげるためにはどうすればよいか。スピードを上げても、車両編成数を多くしても、安定走行することができる、線路幅の広い広軌(標準軌)を採用することでした。そのために、東海道本線を改良して併設するのではなく、全く違う場所に広軌で敷設したのです。これが東海道本線のバイパスとなったため、「新しい幹線」という意味で、新幹線という名前になりました。
在来線なのに新幹線
新幹線の中には、山形新幹線や秋田新幹線の「ミニ新幹線」と言われるものや、2027年、東京―名古屋間開通予定の「リニア新幹線」もあります。これらも新幹線になるのでしょうか?
新幹線の定義
新幹線の定義は、主たる区間を列車が時速200キロメートル以上で走行できることです。秋田新幹線と山形新幹線は、在来線の狭軌路線に並走する形で広軌の路線を増設したため、時速200キロメートル以上で走行できない区間があります。故に「ミニ新幹線」と呼ばれているのです。つまり、在来線区間を通る新幹線車両、ということになります。実は、山形新幹線というのはあくまで愛称で、JRでの正式名称は、在来線の「奥羽本線」のままです。
一方、浮上走行が特徴のリニア新幹線は、200キロメートルを超える時速500キロメートルで走行するので、新幹線の定義に該当します。
在来線の制限
新幹線以外の在来線は、踏切や路面を走るため危険を伴います。そのため、制動距離の条件が必要で、非常ブレーキをかけて600メートル以内に停止できる速度が上限となっているのです。つまり、時速130キロメートル以上は出せないことになっています。
在来線なのに新幹線車両
在来線の博多南線は、博多駅から博多南駅の1駅のみで、その距離は8キロ強。実はこの路線、以前は、山陽新幹線の車両基地への導入線でした。そんな中、車両基地に向かう回送電車をそのまま路線として活用させてほしい、という地元の要望があり実現した路線です。つまり、在来線を走る新幹線車両ということで、特殊な路線となっています。
在来線の中の区分
JRでは在来線も2つの区分に分けています。それぞれ、どのような区分になっているのか見ていきましょう。
在来線の2つの区分
在来線には「幹線」と「地方交通線」の2つの区分があります。地方交通線とは、旅客輸送密度(営業キロ1km当りの1日平均旅客輸送人員)が8000人未満の線区のこと。2つの何が違うかというと、運賃計算です。JRの運賃計算は、キロ当たりの運賃計算になっているのですが、地方交通線は乗降客数が少なく、赤字路線となっているため、割高になります。
赤字路線
よく聞く言葉に「赤字路線」がありますが、これは字の通り、運賃などで得られる収入より運行経費などで必要とする支出が上回る状態になっている路線のこと。地方交通線の中でも特に利用者数が少ない路線は「特定地方交通線」に分類されて、廃線の対象となりました。
在来線のよさ
新幹線のよさは、なんといってもそのスピード。ビジネスで、東京大阪間の日帰りを当たり前のように実現しています。では在来線のよさとはいったい何でしょうか?
特急列車
在来線のメリットは、新幹線と違ってゆったりと景色を見ながら旅ができる点でしょう。また、特急列車を乗り継ぐ旅は、駅構内でお土産を買うこともできます。また、駅を降りてご当地グルメをいただくのもよいでしょう。目的地までの道中、ゆったり寛ぎながら自然豊かな車窓を眺めるのもいいものです。
在来線の特急列車は近年、その土地の特性を生かした、素敵な列車旅を提案しています。ゆったりおもてなしを受けながらの列車旅も素敵です。
青春18きっぷ
全国のJR線の普通列車が、1日乗り放題になる切符。以前は18歳までと制限がありましたが、現在では年齢関係なく購入ができます。ただし、販売時期は年3回のみです。在来線をお得にゆっくりと楽しめる青春18きっぷで、日本各地を見て回るのも素敵。基本的には普通列車の自由席用のため、注意が必要です。
最後に
ビジネスで列車を使う場合は、スピード優先になりどうしても新幹線を使いますが、プライベートの時間はゆったりと在来線の旅を楽しむのもよいでしょう。車窓からの景色や、乗り継ぎ駅での偶然の出会いなども、日本のよさを見直す、いいきっかけづくりとなりそうです。
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