子どもの声をサポートする“アドボカシー”と“アドボケイト”
今年の夏、あるきっかけから「子どもアドボカシー講座」を受け、初めてその存在を知った“アドボカシー(英語:advocacy)”。この言葉はラテン語に由来しており、「声を上げる(voco)」という意味だそう。
「子どもアドボカシー」とは、子どもが何らかの声を上げたいとき、そのサポートをする活動です。そして、子どもアドボカシーを実施する人はアドボケイト(擁護者)と呼ばれており、子どものために声を上げる活動を行うことから、「子どもの声を大きくするマイク」としての役割を担っています。
現在子どもアドボカシーは、児童養護施設や児童相談所で保護されている子ども達を対象に進められています。そこで生活している子どもたちは、気持ちや考えを大切にされてこなかったこれまでの経験から、声を上げることを諦めてしまっていることが少なくありません。子どもの気持ちに寄り添い、子どもとともに声を上げるのが、アドボケイトの役割です。
きっかけは、ふとした育児中の疑問から
このアドボカシーと言う言葉。私自身も、知ったのはつい数か月前のことで、それまでは全く聞いたこともなく、またこの活動の事も何も知りませんでした。きっかけはある晩のこと。3歳の甘えん坊息子にせがまれ、抱っこしながら夕飯をあげていたとき、ふと「あれ…親がいない子どもたちは誰かに甘えることができているのだろうか」。この事が頭をよぎったのです。
居ても立ってもいられず、その晩すぐに一時保護所や児童相談所でのボランティアや寄付など、何か自分にできることがないかを調べました。その中でたまたま見つけたのが、この「子どもアドボカシー」という活動だったのです。いくつかのホームページを見ると、アドボカシー講座なるものを発見。問い合わせると、まもなく講座が始まることを教えて頂き、すぐに申し込み完了!
講座については後ほど詳しくご紹介します。
2024年からぐっと活動の拡大が求められる「子どもアドボカシー」
▲施設訪問時、子どもにアドボカシー活動について分かりやすく説明するためのカード
児童福祉法の改正により、2024年から「児童の意見聴取等の仕組みの整備」が実施されることになりました。これにより、下記のような場面において子どもの意見を聴くことが義務付けられました。
参考:令和4年6月に成立した改正児童福祉法について|厚生労働省
・児童相談所が子どもを保護するとき
・保護施設から子どもを家庭に戻すとき
・児童養護施設や里親家庭などで子どもたちの生活支援を検討するとき
など
これまでは、当事者である子どもの本当の気持ちを深くヒアリングせぬまま、周りの大人たちだけで話し合われ、子どもへの措置が決定されることが少なくありませんでした。誤った判断がなされてしまい、子どもが命を落としてしまった事件もあります。困難に直面している子どもの声を尊重するために、子どもアドボケイトの活動は今後大きく期待されています。
子どもの声はどうしても小さく、大人の都合で軽視されがちです。それは育児中のママとしても普段の生活で思い当たることがあるかと思います。ですが、子どもの声をなかったことにせず、悲しい事件を二度と起こさないために。立ち上がるのもまた私たち大人の役目であると感じています。
子どもの権利や、子どもへの声掛けについての講座も
講座には、子どもが生まれながらに持つ権利や、児童精神科医の先生による子どもへの接し方の講座も。これは受講して、子育て中のママ、パパに知ってほしいと思ったほど!
みなさんは、「子どもの権利条約」をご存知でしたか? この条約は、世界中すべての子どもたちがもつ人権(権利)を定めたもので、多くの国々で広く受け入れられています。現在、196の国・地域がこの条約を守ることを約束しており、日本は1994年に批准しています。基本的な考え方は、下記4つの原則。
「子どもの権利条約」4つの原則とは?
・差別の禁止(差別のないこと)
すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障されます。
・子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)
子どもに関することが決められ、行われる時は、「その子どもにとって最もよいことは何か」を第一に考えます。
・生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)
すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されます。
・子どもの意見の尊重(子どもが意味のある参加ができること)
子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮します。
これらの原則で、子どもが意見表明を自由に行えることが謳われており、アドボカシー活動は「子どもの権利条約」に基づいて行われています。
▲絵本の表紙カバーの裏に、子どもの権利条約がのっています
子どもの権利をわかりやすく伝えるため、こんな絵本も。3歳の息子にはやや難しい内容ですが、たまに読んで!とリクエストされます。
そして、私が受講した講座の中には児童精神科医の先生のカリキュラムもあり、子どもに対する接し方や声掛けなどの基本的自尊感情を育む関わりについてのレクチャーもありました。子育ての中で非常に“あるある”ですが、例えば子どもが一人でブロックを組立てられたとき、「偉いね!すごいね!!」と褒めることって多いと思います。
ですが、もしそれができなかったとして、それは果たして偉くなく、すごくないことなのか…?このようなシーンでは、doing(この場合、ブロックを一人で組み立てられたという成果)ではなく、being(子どもがブロックを組み立てた過程)を肯定するような語りかけをすることがポイントなのだそう。
▲もくもくとレゴで遊ぶ我が子。出来上がった成果ではなく、組み立てる過程を肯定したい!
自分の存在自体を無条件に肯定できる基本的自尊感情は、結果や優劣ではなく、そこに至るプロセスに周りの人が関心を払うことで伸びていくそうです。この感情を培っていくことで、他人と比べなくても自分を自分のままで肯定でき、たとえ失敗したとしても、簡単に心が折れてしまうことが少なくなるのだとか!
まさに目から鱗でした。褒めることも勿論大事ですが、子どもの存在そのものを肯定する声掛けをするよう(実は意識を向けることがなかなか難しいのですが)、私自身も意識するようになりました。子育て中の親御さんには、ぜひ一度聞いてもらいたい講座です…!
講座オンラインで、“約2か月の短期集中型”
最後に講座について簡単にご説明します。
今回私は東京で活動をされている、「一般社団法人 子どもの声からはじめよう」が主催する講座を受講しました。講座はZOOMのオンライン開催です。基礎と、アドボケイト活動を希望する方のための応用講座があり、私は今回どちらも受講することに。
基礎講座は土曜の夜18時~20時、日曜の朝9時~12時の週2回を4週間。応用講座は、同じく土曜の夜18時~20時、日曜の朝9時~12時の週2回を2週間受講し、3週目の土日だけは対面型のワークショップになり、両日9時から17時まで参加します。
▲ワークショップの様子
全ての講座に受講後レポートがあり、久々に大学生の気分を味わいました。(笑) 12月から次期の基礎講座がまた開催されるそうで、過去の受講者は無料で学びなおしができます。講座にご興味がある方はぜひチェックしてみてください。
アドボカシー活動を多くの子どもたちへ、私も出来ることから始めたいです
現在、私は講座を受講した団体にアドボケイト登録を行い、アドボカシー活動を行う準備をしているところです。
講座受講者の皆さんは普段から、子どもに関わるお仕事や活動をされている方が多く、改めて子どもは社会にも大切に育まれていることを感じました。またこの講座を通し、私は生まれて初めて施設生活経験者の方達とお話しする機会も。体験されたことやその方達の想いなどをうかがえたことは、自分自身にとって大変貴重な時間になりました。
育児をしている私にとって、子育てとは、親とは、家族とは?新たな価値観と共に、それらの問いに対し自分なりに考えを昇華できたような、とても学びが深い2ヶ月でした。思い切って受講を決めて良かった!少しでもこの「アドボカシー、アドボケイト」という活動に興味を持ってくださったら、とても嬉しいです。
Domani Labメンバー
菱沼阿弥
新卒でホテルに就職後、「フロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」で働いた経験をもつ。今までに訪れた国は25カ国ほど。産後は旅好きのアンテナを活かし、国内旅行にハマり中。ファッションアイテムも旅目線で選びがち。
Instagram:https://www.instagram.com/ayapecotrip/
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