「アンソロジー」とは何を指す?
読書が好きな人なら一度は聞いたことがある場合の多い「アンソロジー」とは、どのような意味で使われている単語なのでしょうか? 由来や起源と併せて紹介します。
特定のテーマでまとめた作品集のこと
「アンソロジー」とは、芸術作品を特定のテーマでまとめた作品集を指します。元々は詩をまとめた作品集を「アンソロジー」と呼んでいましたが、現在はさまざまなジャンル・複数の作家による作品を集めたものを「アンソロジー」といいます。
日本語に訳すと「詞華集」です。日本でつくられた代表的なアンソロジーとしては、古くは日本最古の和歌集とされる「万葉集」や、平安時代につくられたとされる「古今和歌集」などが挙げられます。
現代では詩集・歌集のほか、小説や漫画、絵画などを集めたものも「アンソロジー」と呼んでいます。ジャンルを問わず、複数の作品を集めて編纂したものだと押さえておきましょう。
「アンソロジー」の由来や起源
「アンソロジー」は、英語では「anthology」と表記し、意味や使い方は日本語とほぼ同様です。由来はギリシア語で「花」を意味する「anthos」と、「摘む」を表す「legein」を合わせた「anthologia(花束)」だとされています。
かつては、奉納物や墓石に刻まれた「エレゲイア」という形式の碑文のことを「アンソロジー」と呼んでおり、現在の作品集という意味の「アンソロジー」が最初につくられたのは、紀元前1世紀までさかのぼるとされています。
その後西ヨーロッパに伝わり、近世以後には「アンソロジー」が次々と編纂されるようになりました。代表的な「アンソロジー」には、イギリスの「トトル詩選集」やギリシャの「ギリシア詞華集」、中国の「唐詩選」、フランスの「現代詩選」などが挙げられます。
「アンソロジー」の使い方・関連用語
実際の会話や文章の中で、「アンソロジー」はどのように使ったらよいのでしょうか? 例文や関連用語を紹介します。
「アンソロジー」の例文
「アンソロジー」は名詞として用います。例文は、以下の通りです。
〈例文〉
・お気に入りの作家の作品が複数掲載されているアンソロジーを手に入れた。
・図書館で読んだアンソロジーで、これまで知らなかった新しい作品に出合えた。
・アンソロジーは、作品が生まれてから何十年も経過した後で編纂されることもある。
「アンソロジー」という英語表現だと伝わりづらいときには、日本語で「作品集」などと置き換えて表現するとよいでしょう。
「アンソロジー」を使用した用語
「アンソロジー」に関連した派生語もいくつか誕生しており、代表的な例として「アンソロジーコミック」「商業アンソロ」「Webアンソロジー」などが挙げられます。
・アンソロジーコミック:複数の短編や読み切りなどのコミック作品を集めた作品集
・商業アンソロ:出版社を通して商業出版物として出版された作品集
・Webアンソロジー:Web上だけで公開された作品集
「アンソロジーコミック」は、ゲーム・アニメなどのパロディ作品を集めたものと、特定のテーマに限定されたコミックなどがあります。
アンソロジーの類語
「アンソロジー」と似た意味を持つ言葉には、どのようなものがあるのでしょうか? ここでは3つの類語とその意味を解説します。
主に映像・音楽作品に使う「オムニバス」
「アンソロジー」の類語としてよく挙げられるのが、「オムニバス」です。「オムニバス」は英語では「omnibus」と表記し、「大選集」「複数の作家の作品を集めたもの」という意味を持ちます。
「アンソロジー」と意味が似ているものの、映像・音楽作品をまとめたものを表現するときは、「オムニバス映画」「オムニバスアルバム」のように呼ばれることが多いです。
独立した短編物語を複数まとめた日本の代表的なオムニバス映画には、黒澤明監督の『夢』があります。
主に音楽作品に使う「コンピレーション」
「アンソロジー」の類語には「コンピレーション」もあります。「コンピレーション」は、編集・編集したものという意味。さまざまな音楽作品を集めた「コンピレーションアルバム」という言葉を、聞いたことがある人は多いでしょう。
なお、文学作品を集めたものを「コンピレーション」と呼ぶことはあまりありません。また「オムニバス」とも似た意味を持ちますが、主な相違点は以下の通りです。
●オムニバス:必ずしも共通のテーマを設定せず、さまざまな作品を集めている
●コンピレーション:テーマに沿ってまとめられていることがほとんど
文学・漫画をまとめた「合同誌」
「合同誌」も「アンソロジー」の類語に挙げられます。「合同誌」とは同人誌の一種で、複数の作家が合同で編集・販売を担う作品集です。どちらも複数の作品を集めた作品集という点では同様の意味を持ちますが、主催者や発刊方法に違いがあります。
●アンソロジー:出版社など主催者が作業・費用を取りまとめるため、作家に負担がかからない
●合同誌:作業・費用負担などを作家全員で分担する
ただし、同人誌での合同誌も、昨今は「アンソロジー」という呼び方をすることもあるようです。
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