「善は急げ」の正確な意味は?
何かをはじめる時や決める時に使う「善は急げ」。意味は知っているけれど、辞書などで言葉の意味を調べたことはないという人も多いでしょう。ポジティブなイメージで使える言葉ですので、正しい意味や使い方をあらためて把握し、適切に使いたいですね。
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▷善は急げ
読み方:ぜんはいそげ
よいことはためらわずすぐに行え
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
よいことだと思ったら、すぐに実行しようという意味を持ちます。自分に奮起を促す際や、人を勇気づけたり、決断や選択の後押しをしたりする際に用いることが多いでしょう。この言葉をポリシーや座右の銘にしているという人も。日常やビジネスシーンなど、多くの場面で使われている言葉です。
「善は急げ」の使い方は
ここからは、「善は急げ」の使い方を見ていきましょう。例文を紹介しますので、参考にしてくださいね。
自分に対して使う場合
《例文》
・その講座の告知を見て、ためらいつつも「善は急げ」と自分を鼓舞して参加を決めた
・何でも先送りにしがちなのが私の短所だから、「善は急げ」を座右の銘にしよう
「善は急げ」を自分に対して使うのは、何かしらの決定や選択を行う場合でしょう。自分にとってハードルが高く、それを決めるには勇気が要るといった場合に、この言葉を用いて自分を鼓舞するというイメージです。
また、決断や選択の遅さがネックになっていると感じた際、自分を戒める意味で使うことも多いでしょう。
相手に向けて使う場合
《例文》
・タイミングがいいのだから、思い切ってやるべき。「善は急げ」だよ!
・とてもいいアイデアだと私は思うから、「善は急げ」で今すぐ企画提案してみたら?
相手が行動や選択を躊躇している場合に、励ましや背中を押す意味で、この言葉をかけます。ただし、その選択や行動が「善」と感じられる場合にのみ使い、悪事やよいと思えないことに対しては用いません。
「善は急げ」に似ている言葉は?
「善は急げ」と似ている言葉を紹介します。言い換えの表現として把握しておくのもいいかもしれません。
「思い立ったが吉日」
読み方は「おもいたったがきちじつ」。何かをしようという気持ちになったら、その日が吉日と思ってすぐにはじめるのがよいという意味の言葉です。
「吉日」は縁起がよい日、何かをするのよいとされる日のことを表す言葉。大安など、暦上の縁起は気にせず、思い立ったその日を吉日として捉えて行動しようということを表します。
《例文》
・思い立ったが吉日、失敗を恐れず思い切ってやってみよう
「鉄は熱いうちに打て」
鉄は、熱してやわらかいうちに鍛えよという意味。さらに言うと、精神が柔軟で、吸収する力のある若いうちに鍛えるべきであるということをたとえている言葉です。
また、物事は、関係者の熱意がある間に事を運ばないと、あとでは問題にされなくなるということのたとえとしても使われています。
《例文》
・意欲が高まっているみたいだから、鉄は熱いうちに打てで、どんどんチャンスを与えよう
「好機逸すべからず」
「こうきいっすべからず」と読みます。よい機会にめぐりあったら、それを取り逃してはならないという意味。よい機会、つまりチャンスはいつ訪れるかわからないもの。だからこそ、よい機会だと思ったら、そのチャンスをつかみ取りましょうということを表します。
《例文》
・好機逸すべからず。迷う時間はないから今すぐそれをはじめようと決めた
「善」に関連する言葉を紹介
「善」という言葉に関連する言葉は、他にもあります。道徳的な意味を持ち、考えさせられる言葉が多いので、把握しておくといいかもしれません。
「善の裏は悪」
読み方:ぜんのうらはあく
意味:よいことには必ず悪いことがついて回るということ
例文:デメリットがないように思うが、善の裏は悪というから、慎重に検討しよう
よいことの後には悪いことが起こるものであるという意味や、一見よいことに見えても、裏を返せば悪いことが隠れていることもあるという意味を表します。目に見える表だけでなく、その裏側にあるものも見ようという戒めの言葉とも言えるでしょう。
「人は善悪の友による」
読み方:ひとはぜんあくのともによる
意味:人は、つきあう友だち次第でよくも悪くもなる
例文:人は善悪の友によるというから、娘がいい友人とめぐり合って欲しい
友達の影響を受けながら、人は成長するもの。そのつきあう友が善人であれば善人になり、悪人であれば悪人になってしまうということを表しています。だからこそ。友達はよく考えて選ぼうという戒めの言葉であるとも言えるでしょう。
「善に強い者は悪にも強い」
読み方:ぜんにつよいものはあくにもつよい
意味:善を熱心に行なう者はいったん悪に向かえば、悪をも熱心に行なうものである
例文:あの人はとてもいい人だけど、善に強い者は悪にも強いというから、方向を間違えると怖いかもしれない
よいことを一生懸命する人が悪い道に逸れてしまったとしても、同じくらい熱心に悪いことをするだろうということを警告している言葉です。人の性格は、状況や環境で変わりやすいもの。だからこそ、しっかりと自律することが大切である、と説いているとも言えるでしょう。
なお、この言葉の反対語は「悪に強いは善にも強い」。大悪人であっても、いったん改心すれば非常な善人になるものだということを表しています。
「善因善果」
読み方:ぜんいんぜんか
意味:仏語。よいことをすれば、それがもととなって必ずよい報いがあるということ
例文:あの店が常に繁盛しているのは、店主やスタッフがとても親切だから。まさに善因善果だ。
自分のしたことが自分に返ってくるということを表しています。反対語は「悪因悪果」。悪いことをすれば、悪い報いを受けることになるという意味です。
最後に
「善は急げ」について紹介しました。何かしらの機会に対して「よい」と感じることは案外少ないかもしれません。
だからこそ、そのことが大きなチャンスだと捉えることもできます。訪れたチャンスに対して、ハードルの高さを感じてひるむというのは誰にでもあること。失敗を恐れたり、損をすることを考えて尻込みしたりすることもあるでしょう。しかし、自分が「よい」と思ったことは、勇気を出してつかみとりたいですね。
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