一か八かとは?
一か八かは、「いちかばちか」と読みます。結果の予想がつかないことを、運を天にまかせてやってみるという意味です。江戸時代の、賭博用語が言葉の由来とされています。
勝負ごとや、後先がわからないことに取り組むときなどに使われる言葉です。ここでは、一か八かの由来や、なぜ1と8という数字なのかについて解説します。
■言葉の由来は賭博用語
一か八かという言葉は、江戸時代の賭博用語が由来とされています。説は2つあり、ひとつは「丁か半か」という用語からきているという説です。
「丁か半か」はサイコロをつかった丁半賭博で使う言葉であり、偶数を丁(ちょう)、奇数を半(はん)と呼びます。丁半賭博は、ツボに2つのサイコロを入れて降り、出した数の和が丁か半かを予想して賭ける賭博です。
この丁と半という漢字の上の部分にあたる「一」と「八」をとって、「一か八か」が生まれたとされています。
■一か罰かとも書く?
もうひとつは、賭博用語の「一か罰か」が一か八かに転じたという説です。「一か罰か」は、さいころの目に一が出るか、それ以外の目が出て罰となるかという意味です。
この説によれば、八は「罰」ということになります。この説であれば、八は「はち」ではなく「ばち」と読む理由を説明できるでしょう。また、罰は罰当たり(ばちあたり)など、「ばち」と読む場合もあります。
一(いち)か八(ばち)か
結果はどうなろうと、運を天に任せてやってみること。のるかそるか。「よし、—勝負してみよう」[補説]ばくちの用語で、「一か罰か」でさいころの目に一が出るかしくじるかの意とか、「丁か半か」の「丁」「半」の字の上部を取ったものとかいう。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
一か八かの例文
一か八かを理解するには、例文が参考になります。ここでは、いくつかの例文をみていきましょう。
・彼は自分の全財産を投じ、一か八かの気分で会社を辞めて独立起業した
・一か八かの気分で競争率の高い企業にエントリーしたが、幸運にも内定が決まってホッとしている
・一か八かで出した企画案が、意外にも採用されて驚いている
・最初から無理と決めていては何もできない。まずは、一か八か行動を起こすことが大切だ
・とりあえず一か八か勝負してみよう。ダメだったら、また別の方法を考えればいい
一か八かの類義語
一か八かには、次のような類義語があります。
・清水の舞台から飛び降りる(きよみずのぶたいからとびおりる)
・のるかそるか
どちらの言葉も、「思い切って勝負に出る」「決断をする」という意味で一か八かと似ていますが、使うシーンは異なります。一か八かと合わせて覚えておけば、表現の幅が広がるでしょう。
ここでは、一か八かの類義語を2つご紹介します。
「清水の舞台から飛び降りる」
「清水の舞台から飛び降りる」とは、大きな決断をするときに使う言葉です。清水とは、京都にある音羽山清水寺のことを指します。
清水の舞台は清水寺の本堂の一部であり、前面に崖にせり出すように造られています。何度も戦乱などで焼失し、現在の舞台は1633年に建立されました。
清水寺のご本尊は「十一面千手観世音菩薩」で、人々を苦難から救うという信仰の対象となっていました。江戸時代には願掛けで清水の舞台から飛び降りる人が絶えず、その人数は234人であるという記録もあります。
清水の舞台は高さが約13メートルあり、4階建てのビルに匹敵します。その舞台から飛び降りることは、相当な覚悟をもたなければできません。そのため、思い切って大きな決断をすることを「清水の舞台から飛び降りる」と表現するようになりました。
大きな覚悟で物事に取り組むときに使われる言葉で、一か八かと共通しています。
(例文)
・彼は清水の舞台から飛び降りるような気持ちで、家の購入を決めた
・大勢の観衆を前にしたスピーチは、清水の舞台から飛び降りるような気分だ
「のるかそるか」
「のるかそるか」とは、成否を天にまかせ、思い切って物事を行うことという意味です。一か八かと、ほぼ同じ意味で使われます。漢字では「伸るか反るか」と書き、「乗るか逸るか」と書くのは間違いです。