「クラフト」とは?言葉の意味を解説
ここの所よく目にするクラフトという言葉は、どのような意味なのでしょうか。近年は、ふたつの意味で使われているケースが見られます。まずは両方の意味を確認しましょう。
本来の意味は「技術」「手芸」など
クラフトは、英語の「craft」が語源です。複数の異なる意味がありますが、主に「技術」「手芸」「手作業の技術を要する職業や仕事」という意味があります。
craft
1. 職人的技術[技巧];巧妙さ
1a(手先の技術を要する)職業;仕事,工芸,手芸
1b〔~s〕手工芸品,クラフト
1c〔単複両扱い〕(小)船舶;飛行船,宇宙船;〔集合的に〕船,船舶;航空機(aircraft)
2.(人を)だますわざ,悪知恵,悪だくみ
3.〔集合的に〕同業者;同業組合,ギルド;〔the C-〕フリーメーソンの組合
小学館『プログレッシブ英和中辞典』より引用
そのほか部分的に機械を使用しながらも、職人の高い技術や手づくりならではの温かみを感じさせる工芸品などを指します。主に陶器や家具、ジュエリーといったアイテムです。
近年はオンラインショップを活用し、個人で自分がクラフトしたものを販売する人も増えています。
現在は「こだわり」「少量生産」の意も
クラフトは、従来の意味に加えて「こだわり」「少量生産」を表す言葉としても使われています。特に飲食品の分野で、この傾向が顕著です。
たとえば高い技術を持った職人が、独自の味わいや香りを追求した製品などが該当します。製法や材料など、細部にまでこだわった製品を指すことも珍しくありません。
中小企業による少量生産など、大量生産品とは一線を画す特別感のある製品なども「クラフト◯◯」という名称で販売されています。
クラフトが注目される理由
クラフトが注目を集めるようになった背景には、現代社会の変化と消費者が持つ価値観の変化が大きく関係しています。その具体的な理由について紹介します。
手づくり感が新鮮である
デジタル化が進む現代社会において、「手づくり感」が新鮮な魅力として注目を集めています。この流れを受け、クラフト商品が人気を博しているのです。
スマホやPCなどデジタル漬けな生活をしている現代人にとって、クラフト商品の温かみある手づくり感は、癒やしや安らぎを与える存在になっていると考えられています。
このように、クラフトブームは単なる一過性の流行ではなく、デジタル社会において失われつつある「温かみ」や「手づくり感」を求める人々の欲求を反映した現象といえます。
消費者の好み・商品の選び方が変わった
消費者の嗜好や商品選びの基準が変化したことも、大きな理由です。従来は価格重視が強い傾向にありました。
しかし、新型コロナウイルスの影響により家で過ごす時間が長くなった際、そこに特別な価値を見いだす人が増えたのです。
その結果、価格よりも質を重視する流れが強まり、丁寧につくられた個性的なクラフト製品に注目が集まっていったと考えられています。
また、画一的な大量生産品よりも、自身に合った「こだわりの商品」を求める傾向が増したことも理由です。クラフト製品には、小規模生産ならではの多様なラインナップや、作り手のこだわりが感じられるストーリー性があります。
さらに、おしゃれなパッケージや希少性も購買意欲を刺激する要素となっています。クラフト製品は単なる製品ではなく、価値観を共有する手段としても受け入れられているのです。
【飲食物】代表的なクラフト製品
クラフト製品には、どのようなものがあるのでしょうか? 代表的な4つの飲食物について、それぞれの特徴や魅力を見ていきましょう。
クラフトビール
クラフトビールは、小規模な醸造所で職人の技術により作られたビールです。各醸造所が熱意を持って独自の個性を放つビールを生み出し、消費者の支持を集めています。大量生産のビールとは異なり、醸造所ごとに特有のレシピや地域の特産品を生かした味わいが特徴です。
クラフトビールの魅力は、その多様性にあります。フルーティーな香りやコーヒーのような香りなど、オリジナリティあふれる味わいが楽しめるのです。また、日本独自の食材や醸造技術を取り入れた和風のビールも人気を博しています。
クラフトビールを楽しむコツは、適切な温度管理とグラス選び、そして料理とのペアリングです。各種ビールの特徴を知り、自分好みの製品を見つける楽しさも魅力のひとつといえます。
クラフトジン
クラフトジンは、地域の特産品や独自のボタニカルを使用するなど、職人の技術が詰まったジンです。
近年のジンブームにより小規模な蒸留所が増加し、フルーティーなものやスパイシーなもの、フローラルなものといった、さまざまなフレーバーが生み出されています。料理との相性もよく、ストレート・ロック・カクテルなど、好みの飲み方で楽しめるのも特徴です。
また、柚子・煎茶・桜・檜など、日本独自の素材を使用したクラフトジンは、日本のみならず海外でも注目されています。
クラフトコーラ
クラフトコーラは主に天然素材のみを使用し、香料や着色料を使わない無添加にこだわりのあるコーラです。その魅力はずばり、種類の豊富さ。厳選したスパイスやハーブを巧みに配合し、豊かな香りと深い味わいを実現している製品も少なくありません。
ブランドごとに異なるスパイスやボタニカルが使用されており、フルーティーなものからスパイシーなもの、ハーブの香りが強いものまで、多彩な風味を楽しめます。また、地域の特産品を生かしたローカルな製品も人気です。
シロップ状で販売されることの多いクラフトコーラは、楽しみ方もさまざま。炭酸水で割る定番の飲み方以外にも、ウイスキーと合わせたハイボールや、バニラアイスを加えたフロート、さらにはカレーやタコスとのペアリングなど、工夫次第で新たな味わいを発見できます。
クラフトチョコレート
クラフトチョコレートは、カカオ豆の選定から製造まで一貫して行うなど、こだわりの製法でつくられる高品質なチョコレートです。細部にまで気を配り、カカオ本来の風味や香りなど、それぞれの個性がより引き出されているのが魅力です。
商品のラインナップも豊富で、板チョコレートだけでなく、サンドクッキーやガトーショコラなど、多種多様な形態で楽しめます。季節限定商品も人気で、その時期ならではの味わいを提供しています。
また、洗練されたパッケージデザインが美しく、プレゼントとしても喜ばれるアイテムです。
【飲食物以外】クラフトと付く言葉
飲食物以外の分野でもクラフトという言葉が使われています。どのような意味なのか確認していきましょう。
クラフト紙
クラフト紙は、木材パルプから作られており、茶色や自然な色合いが特徴の紙です。強度に優れているため、食品や雑貨の包装や紙袋・農業用資材・建築材料の包装など、幅広い分野で活用されています。
近年、加工技術の進歩によりクラフト紙の機能性も向上しています。たとえば、ラミネート加工を施すことで防水性や防湿性が高まりました。また、リサイクル可能な天然素材であり、環境に配慮した素材であることも注目を集めています。
このような特性からクラフト紙は、今後も包装材料として重要な役割を果たすと考えられています。
クラフトゲーム
明確な定義はありませんが、ものづくりを中心としたゲームジャンルのことをクラフトゲームと呼びます。その魅力は高い自由度と創造性。自分だけの建築物や戦略を生み出せるため、プレイヤーの個性を存分に発揮できるのです。
代表作には「マインクラフト」があり、世界中で人気を博しています。サバイバル要素を含む作品も多く、過酷な環境で生き抜く緊張感が味わえます。2Dや3Dでさまざまな世界観を楽しめるのも魅力です。
このジャンルには、自由度の高さゆえにゲームバランスが崩れたり、マンネリ化したりするという課題もあります。しかし、独自の攻略法を見つける喜びや自分だけの空間をつくり上げる達成感は、クラフトゲームならではの魅力といえます。
医療におけるクラフト
医療におけるクラフトは、飲酒など依存症に悩む家族を支援するプログラムとして知られています。
アメリカで開発された「CRAFT(Community Reinforcement and Family Training)」と呼ばれるもので、家族が本人との対立を避けつつ、治療を促すためのコミュニケーション方法を学ぶためのプログラムです。
CRAFTの目的は、依存対象の物質の使用を減らし治療につなげ、家族の生活の質を向上させることです。具体的には、物質を使用しない時間を増やすアプローチや家族自身のケアの重要性を学びます。
近年は、日本でも依存症専門の医療機関や精神保健福祉センターなどで導入が進んでおり、家族支援の新たな選択肢として注目を集めています。
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