【お悩み】グローバル人材に育ってほしいけど、外国語はマストですか?
Google翻訳など、AIによる翻訳の精度がどんどん上がっているように感じます。これからの時代、子どもたちにはグローバルに働けるようになってほしいけれど、AIが翻訳してくれるようになれば、語学習得のためにお金と時間を費やすのはもしかしてムダになる…??(39歳・子ども6歳/男)
【Dr.アグネス・チャンの答え】外国語を学ぶことは、感受性を広げること
AIによる翻訳は、中国語⇔英語など文法が似ている言語だと現在でも結構正しく翻訳されますが、日本語⇔英語などはまだまだ。「今日はちょっとつまらないな」なんてときにやってみると、お腹を抱えて笑ってしまうくらい、見当違いな翻訳が出てくることもあります(笑)。これからもっと正確になっていくとは思うので、とにかく「意味が通じればいい」と考えるのなら、外国語を学ぶことは必ずしもマストではないかもしれません。
ただ、私は外国語を学ぶことの意味はもっと別のところにもあると考えています。人間は言葉に閉じ込められた存在です。何かを見たとき、触れたとき、それを表現する言葉がなければ実感できなくなってしまいます。つまり、言語が増えることで表現や感じられるものが増えるのです。
たとえば英語の「happy」は日本語では「幸せ」と訳されますが、「happy」のはじけるようなニュアンスと、しみじみ静かな感情を表すこともある「幸せ」とでは、表現していることが異なります。たとえば「凛とした」という日本語は、英語でどのように表現すると思いますか? …そんな言葉はありません! 1ページかけても説明しきれないくらい。逆に英語の「awesome」という言葉は「素晴らしい」と訳されますが、これもやっぱりニュアンスがだいぶ違う。外国語は感受性を豊かにしてくれて、心を広くしてくれる道具なんです。
私の息子たちは、日本語、英語、中国語(マンダリン)の3か国語を話します。私はそれに加えて広東語と、フランス語を少し。生まれ育った香港の公用語である広東語は、本当に痛快な言語 広東人もユーモアがあって痛烈で、こんなに楽しい人たちはいないんじゃないか、と思うくらい。息子たち3人は広東語が話せませんが、話せたらもっと楽しいのにな、と思うことがあります。
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撮影/田中麻以 構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
アグネス・チャン著
定価:1,400円(税抜)
発売元:小学館
教えてくれたのは…
アグネス・チャン
歌手・エッセイスト・教育学博士/ 1955年、香港生まれ。1970年代より日本で歌手として活躍し、上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。1989年、アメリカのスタンフォード大学教育学部博士課程に留学し、1994年に教育学博士号を取得。長男、次男、三男も母校スタンフォード大学に合格して話題となる。現在、ユニセフ・アジア親善大使、日本対がん協会ほほえみ大使など芸能活動のみならず幅広く活躍。2018年春の叙勲で旭日小授章を受章。2019年4月出版の著書『未知に勝つ子育て:AI時代への準備』(小学館)には、AI時代の家庭教育のヒントが満載!