さびしい思いをさせるけど、ママが頑張ってる背中を見せたい
●PROFILE
和美さん・42歳・東京都港区在住
外資系メーカー勤務
娘(3歳)
○前編:母になってからは「人のために働く」。仕事の意義が変わったときが転職のとき
「なんでも自分でやる」主義からの脱出
子どもが6か月のとき、今の会社に転職しました。子どもをもったことで、仕事や職場を選ぶ基準が変わっただけでなく、何においても「完璧主義」だった私の性格も変わっていったのは、大きな発見でした。
仕事もプライベートも、自分のことは自分で、それもきっちりとやらないと気が済まなかった私でしたが、子育てをしながらとなると、そうはいきません。周囲の人たちに「頼る」ようになったのです。ただ、その準備にはできるかぎりの手を打っておくのが、やっぱり完璧主義の私らしいんですけど(笑)。
いちばん多いのは、子どもが熱を出したときですが、そのときのためにいつでも頼れる病児保育のできるサービスに登録しておきました。そのほか、頼る先は必ず複数確保しておく。私は、母や姉との連絡は密にとり、相手の家の状況もいつも把握しておくようにしています。夫のスケジュールもマメに情報交換し、ピンチのときは頼むこともあります。
そして、これは私の主義なのですが、どうしても「私でなきゃダメ」というとき以外は、子どもを理由に仕事を休みません。子どもの様子が気になるから少し早めに帰るとか、アポイントをズラすとか、それが頻繁にあっては自分の信用にかかわります。これは、「子どもにとって本当に大事なとき」にすぐに帰ってあげられるための、準備のひとつともいえるかもしれません。
海外出張中は娘と一切連絡をとりません
転職して4か月め、娘が10か月のときには、初めての海外出張がありました。それから今まで、年4回・各1週間ほど、会社の拠点があるシンガポールに滞在します。最初はまだよかったけれど、1歳を過ぎて物事がわかるようになると、出発する日にさびしがるようになるんです。最近では、足元にすがりながら「ママ~」と泣き叫びながら引き止めようとしたり。そのときばかりは私もつらいけれど、強引に気持ちを切り替えて、タクシーに乗って空港に向かう…。その時間が、いちばんつらいですね。
そしてシンガポールにいる間は、家族からの報告はもらっても、娘とFaceTimeや電話でのやりとりはしない。マメにやっていたこともあったのですが、娘が余計にさびしがり、お互いのペースが崩れてしまうし、仕事への集中も切れてしまうとわかったので。小学生くらいになったら、海外からのやりとりを再開できるだろうと思ってます。
また、不在中の育児・家事を夫や母に任せたなら、過剰な干渉はしません。かつてはノート3ページぶんの指示書をつくって渡したり、1週間ぶんの食事をつくりおきしていたこともありました。でも、夫にしてみたら、できあいのお惣菜を温めて娘と一緒に食べれば十分だと。自分のやり方や理想を押しつけないで、頼んだからには任せて、やってくれたら「ありがとう」の気持ちを伝える。家族や夫婦がすれ違ったりイライラしないための、秘訣でもあると思うようになりました。
出張から帰れば、シンガポールの時間に合わせて毎週火曜に現地と電話会議。この日は在宅勤務をしながらFaceTimeで会議参加します。
また、ほかの社員と同様、私もデスクには家族の写真を置いているし、子どもを職場に連れて行くこともあります。仲間や部下との会話でも、子どものことが話題に出るのは日常的。そのせいで、社内の人は娘の名前も近況も知っているし、ちょっとした親心といいますか、親近感をもって何かあれば心配してくれます。子どもの存在が、仲間との潤滑油にもなって、コミュニケーションも仕事もうまく回っている気がします。
海外出張も多く、娘にはまだしばらくは寂しい思いをさせるけれど、ママが外の世界で頑張っている背中を見せたい。そして、娘にもそんなふうに生きてほしい。それが、今の私の願いです。(終わり)
●ワーママ転職成功の法則
1、転職先の情報はできるだけたくさん集める
2、子どもを理由に、安易に仕事を休まない
3、育児・家事を人に任せたら、干渉しない
南 ゆかり
フリーエディター・ライター。半年にわたって取材・執筆した書籍『真夏も雪の日もかき氷おかわり!』発売中! ほかに書籍『今の私は』(後藤真希・著)、Oggi誌面インタビュー連載「この人に今、これが聞きたい!」「お金に困らない女になる!」などなど。