ツムちゃん(8歳)&コズちゃん(6歳)
ツムちゃんとコズちゃん姉妹と待ち合わせたのは、埼玉県川口市にある大型ショッピングモール。建物の前には芝生の青が眩しい公園が広がっていて、たくさんの子どもとその家族たちが休日を満喫していました。
白いベンチで2人を待っていると、お父さんの左横にツムちゃんが、右横にコズちゃんが手をつないでこちらへ歩いてきました。お腹が空いていたわたしたちは、すぐにフードコートへ。ラーメン、ハンバーガー、ステーキ、とんかつ、たこ焼き、餃子、天ぷら、パスタ……。看板を見ているだけでクラクラしそうです。ここにも人がわんさか。アンパンマンやピカチュウ、トーマスのカートに乗って、大人の巧みな運転によりテーブルとテーブルの合間をぬって移動する子ども、トレイに目一杯の飲み物と丼を載せて運ぶお父さん。休みの日だけれど、みんな忙しそうだ……!
小学生の誕生日プレゼント事情
注文をツムちゃんとお父さんに任せて、わたしとコズちゃんは席で待つことにしました。初対面でドキドキしつつ……、つい先日入学式だったというコズちゃんに聞きました。
まほ:コズちゃん、小学生になって、どう?
コズ:うーん。
まほ:楽しい?
コズ:うーん、つまんなーい。
まほ:ええ? お友だちはいるんでしょ?
コズ:いるよぉー。
わたしに背を向けて丸まり、ポーチの中のカードで遊びながら答えるコズちゃん。かったるそうに答える様はまさに大物感。ムッチリしたお手手でポーチのファスナーを開けたり閉めたり。愛らしいです。
まほ:お母さんはおうち?
コズ:うん。
まほ:今、何しているのかな?
コズ:わかんなーい。
まほ:そのカードって、なに?
コズ:アイカツ。
まほ:これがアイカツか……。お誕生日プレゼントでもらったの?
コズ:ちがう。たんじょうびまだもらってない。
まほ:そうなの? お誕生日いつ?
コズ:……(しばらく考えて)12がつぅーにじゅうぅ~くにち!
まほ:もう4ヵ月以上たってるじゃん! いいの?
コズ:欲しいものなくてぇー。
まほ:あるでしょう? それこそアイカツとか。
コズ:うーん。自転車とか買いたいんだけどさぁー。
まほ:頼んだの?
コズ:(ニンテンドー)スイッチも欲しくてさぁー。
まほ:欲しいものあるじゃん。
コズ:“すぷらとぅーん”やりたくてー。
まほ:それもお願いしたらいいのに。
コズ:うーん……。
まほ:……じゃあ、話戻すけど……、このアイカツのカードは何をするものなの?
コズ:げーむ。「アイカツスターズ!」と「アイカツフレンズ!」ってのがあってぇ。
まほ:あるんだ。
コズ:「フレンズ!」のほうが新しい。
まほ:コレは”何ちゃん”?
コズ:ミライ。
カードの中で微笑む赤い髪の毛の女の子は、”明日香ミライ”ちゃん。スターハーモニー学園を卒業した高校2年生で、アパレルブランド「ミルキージョーカー」のデザイナー兼ミューズでもあるそうです。何が何やらチンプンカンプンですが、キラキラのマイクに短いスカート。女の子の憧れる世界観に時代は関係ない、ということはわかりました。
友だちの5歳になった娘も「アイカツ!」が大好きで。自分の芸名を”髪先いちご”とつけていました。”髪先”という名字は、いつもお風呂でお母さんに「髪を先に洗いなさい!」と言われるからだそうです……。
父:お待たせー。
まほ:ありがとうございます!
コズ:ぽんちゃん! ぽんちゃん! ちゃーんぽーん!
まほ:コズちゃん、ちゃんぽん好きなの?
コズ:だーいすきー! あ!?
まほ:なに? どした?
コズ:石が落ちてるぅー。(テーブルの下の石を足でグリグリ)
自由なコズちゃんに対して長女のツムちゃんは人見知りをしているようで、お父さんにぴったりくっついて静かにうどんをすすっています。
まほ:ツムちゃん、コーラ好きなの?
ツム:……うん。最近飲めるようになった。
まほ:コズちゃんと、「アイカツ!」とか誕生日プレゼントの話してたんだよ。まだもらってないって。
父:ああ、そうだっけ……。
まほ:欲しいもの、あるんだよね?
父:自転車?
コズ:(ニヤリ)
まほ:お父さんよくわかってらっしゃる。あと、スイッチだっけ。
ツム:スイッチは持ってるよ。
まほ:そうなの?
ツム:2人でいっこ。
まほ:なるほど。自分専用のがコズちゃんは欲しいわけだ。
父:マジかよ。
コズ:(ニヤリ)
まほ:喧嘩になるもんねえ。
父:もー喧嘩ばっかりしてますよ。今朝、何回しました?
コズ:忘れたー!
ツム:んー3回?
父:(すかさず)もっとだろ。
まほ:ツムちゃん、お誕生日いつ?
ツム:1月1日。
まほ:元日だ! コズちゃんと近いね。
父:従兄弟に12月30日の子がいて祖母が1月3日なんで、年末年始の集まりになるとお祝いで大変なんです。
ツム:ケーキいっぱい食べれる!
コズ:作ったりしてねぇー、大変なんだよ!
父:祖母にキッパリ言われましたね。「準備が大変で気が重い」って。
まほ:ああーたしかに。
父:集まりは「夏だけでいい」と。
まほ:でもさ、コズちゃん。去年プレゼントもらってないってことは、今年の誕生日に2つまとめてもらうって手もあるんじゃない?
コズ:ん?
まほ:だから、去年のプレゼントをとっておいて、今年の誕生日にもらうっていう……。
コズ:ん~??
まほ:だから、今年プレゼントが2つ……。
コズ:ねえねえ、ツムのうどん、ホントに”並”? 少なくなーい?
まほ:…………。
やっぱり、YouTubeが好き。
まほ:ツムちゃんは最近何が好きなの?
ツム:う~ん……
父:いつも見てるのあるだろ。
まほ:なんだろう? アニメ?
ツム:YouTube。
まほ:やっぱり! そっか~!
小学生がYouTubeを好きだということはこの連載でイヤというほどわかりましたが、それでもまだ聞く度に驚いてしまいます。心のどこかで、YouTubeがそこまで市民権を得ていると信じたくない自分がいます。
まほ:YouTubeで、何を見てるの?
ツム:ツムはいま、青鬼とか見てる。
まほ:あ! この間公園で男の子たちが「青鬼」って盛んに言って遊んでて、ナンだろう?って思ってたんだけど……そのことかー。
ツム:あのねー青い鬼がね、青鬼って呼ばれてて……。
コズ:バケモノだよ!
ツム:で、コウモリとか、クラゲとか、女だったりとか、いろんな形の青鬼がいて……。
コズ:きもちわるい!
ツム:いろんな、主人公が何人かいて……。
コズ:たけしぃーみかぁー。
ツム:それで、島とか、屋敷とか、学校とかステージがあって、そこにある噂話を確かめに行ってーどんどん喰われていって……。仲間と合流して、脱出をめざす……。
まほ:ゲームなの?
ツム:うん。
まほ:それを、YouTubeで見るの?
ツム:ヒカキンがやってたり……。
まほ:でた! ヒカキンだ!
ツム:かんながやってたり。
まほ:かんな?
ツム:カンアキチャンネルのかんな。
まほ:こりゃまたわからんワードが出てきたぞ……。
「Kan&Aki’s CHANNEL(カンアキチャンネル)」とは熊本在住の親子ユーチューバーのチャンネル。長女かんな(11)次女あきら(9)がおもちゃやゲームで遊ぶ様子を配信しているそうです。
ツム:ぎんたっていうコもいるよ!
まほ:それは……弟?
ツム:そー。ぎんたは2さい。あさひって妹は4さい。
まほ:お父さんはそこらへん、把握してます?
父:一応なんとなく……。ヒカキンにつぐユーチューバーだそうで。恐ろしい数の再生回数らしいです。億単位の。
まほ:ひゃ~。
ツム:あとね、プリ⭐︎チャンのプリパラっていう……。
まほ:えっ、ちょっと待って。ついていけない。
ツム:アニメがあってー。プリパラのプリチケっていうカードがあって。
まほ:なにそれ? プリパラってなんの略? プリプリパラダイス?
ツム:(無視)それでーそれを交換すると友だちになれるプリチケ交換っていうのがあってー。
まほ:友だちにな…れ…る?
ツム:うん。世界初のプリチケ交換。
まほ:せ、世界初????
ツム:うん!(得意気)
まほ:何ひとつわからない……。プリキュアの仲間?
ツム:ちがう(キッパリ)。
「プリパラ」がアニメということはわかりました。後でインターネットで調べてみましたが、全然頭に入ってこなくて……ギブアップ。子どもの頃、親ってなんにもわかってくれないし、わかろうとしないし……ついてこいよ!って思っていたけれど、コレね。今なら親の気持ちがよくわかります。でもさ、昔はこんなに複雑じゃなかった気がするんだけどなあ。
まほ:得意なことは?
ツム:走るのが好き。
父:絵は賞をもらってくることが結構あって。でも、ボクらが良いって思うものは引っかからず、「え? これが?」って思う絵が入選することが多いですね。
コズ:歯の健康!
まほ:ん?
ツム:「歯の健康」ポスター。あと「昔あそび」。
コズ:金賞! 金賞!
まほ:金賞はすごいねえ。
コズ:あと、字!
まほ:字? 書道でも賞とったのかな。
ツム:ううん。硬筆をいまやってて、毛筆をこれから習うところで……。
コズ:これから習うの!
まほ:コズちゃん、マネージャーのよう(笑)。
「アイカツ!」に夢中の姉妹の夢って?
食事が終わったところで、ツムちゃん、コズちゃんとショッピングモール内にあるゲームセンターへ行き、「アイカツ!」で遊ぶ様子を見せてもらうことにしました。人混みをぬって、ツムちゃんとコズちゃんは足早にゲームセンターへ一直線。途中、オモチャやキャラクターグッズ、子ども広場など誘惑がたくさんあります。たしかにここへ来れば休日、子どもを遊ばせるのに苦労はなさそうです。
まほ:いつも来るの?
ツム:ときどき。
まほ:まず「アイカツ!」カードを置いて……。
ツム:「アイカツ!」パスをスキャンしてー。
慣れた手つきで2人並んでプレイ。ツムちゃんのプレイ画面に「2309人」と出ました。どうやらツムちゃんのプレイする”カレン”のファンの数のようです。髪型、めがね、目の種類、服、アクセサリーを目にも留まらぬ速さでチョイス。本当に、すごい速さです。どうやら洋服を同じブランドで揃えると得点するようです。
まほ:ツムちゃん、それさ、ちゃんと考えてコーディネートしてる?
ツム:してるよ!
コーディネートが終わると、画面に「セルフプロデューススタート!」の文字。今のコーディネートの作業はセルフプロデュースじゃないの? 一方、コズちゃんは……。
まほ:なんか激しく腕を振ってるけど……なにしてるの?
コズ:さいりうむ!
なんと、ライブ中のアイドルにサイリウムを振って応援しています。どうりでさっきからコズちゃんの画面に左右に激しく揺れる光る棒が映ってるなーと思っていたのです。すると、ツムちゃんの画面手前にも光る棒が現れ、ツムちゃんもそれをすごい勢いで振り始めました。
まほ:カオスだ……。
そして、2人の画面に「イベント成功!」の文字。ファンの人数やポイントがアップしました。
ツム:ふう……。
まほ:今まで、イベントやってたんだ……。……え? またコーディネート始めるの?
ツム:今度はカードをデコするの。
イベント成功により新しいカードをゲットできたようなのですが、その柄も自分で選んでデコレーションできるようです。一連の作業は、今どきのプリクラで背景や装飾を選ぶ様子に似ていました。
ようやくカードを手に入れてゲームは終了。レアなアイテムも入っていたようで2人は満足げな表情。大人は最初から最後までハテナ印でした。
まほ:2人の夢ってなんだろう? やっぱり「アイカツ!」で遊びまくるとか?
ツム:3年間ディズニーランドに住む。
父:オレはいやだ。
まほ:ですよね(笑)。コズちゃんは?
コズ:朝ちゃんぽん、昼ちゃんぽん、夜ちゃんぽーん!
まほ:すぐ叶きそう(笑)。ちゃんぽん、本当に好きなのね。まあ、お野菜イッパイ入ってるし問題なさそうだけど。飲み物はどうする?
コズ:ホワイトソーダ。
まほ:カルピスソーダじゃないところにこだわりを感じる。ツムちゃんはディズニーランドでご飯はどうしよう?
ツム:チョコレートドリンクと、唐揚げと、お肉。
まほ:ニキビできそ~。
コズ:あ、コズ夢あるよ!
まほ:お! なに?
コズ:地球をつくることー!
ツム:アホがいる~。
思うままに振る舞う妹と、それを見守る姉。ツムちゃんとコズちゃんは大人になってもそんな姉妹なんだろうなあ。
2人がいつかお母さんになった時、遊びに夢中になる子どもを見てどんな風に会話を交わすのでしょうか。お父さん、楽しみですねっ!
つづく
『しまおまほのおしえてコドモNOW!』書籍発売中!
2017年の連載スタートから5年間、子どもの〝今〟を探った大人気ルポエッセイが、ついに単行本になりました!連載を読んでいた人も、必見の内容となっています。
『しまおまほのおしえてコドモNOW!』
著:しまおまほ 発行:小学館
定価:1760円 (税込) 体裁:四六判 176頁
発売日:2021年10月29日
文・絵:しまおまほ 編集:小川知子 デザイン:根本真路
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プロフィール
しまおまほ
漫画家・エッセイスト。1978年生まれ、多摩美術大学美術学部二部芸術学科卒業。1997年、高校生の時に描いた漫画『女子高生ゴリコ』でデビュー。雑誌や文芸誌でエッセイや小説を発表するほか、ラジオのパーソナリティとしても活躍。2015年に第一子を出産。著書に『まほちゃんの家』『マイ・リトル・世田谷』『ガールフレンド』『スーベニア』『家族って』などがある。写真は本書にちなみ、6歳当時のまほちゃん。