株式はギャンブル？
私の知人のある女性は、本業以外に様々な副業をしています。ブログのアフィリエートにオンラインセミナーなど大忙しです。ところが、一年の収入を振り返って、改めてびっくり。放っておいた株式投資がそれらと並ぶ良い収入になっていました。配当と含み益で、元本に対して8％を超えるリターン（収益）でした。
そんな話、うさんくさい、と思うかもしれません。しかし、実際、1年前からの日経平均株価の上昇に配当を加えたリターンは8.6％程度です。新型コロナで株価は一時大きく落ち込みましたが、その後しっかり回復したことと、企業が配当を続けたためです。
みなさんの周りで株式に投資をしている女性はどれくらいいるでしょうか？ゼロではないにしても多くはないかもしれません。日本証券業協会のデータによれば、30代から40代の女性の株式投資人口は全体の6％程度です。男性の株式投資人口はその倍以上の15％程度ですが、それでも、6人に１人以下。欧米と比べて高くはありません。
「株をやっている」、などと聞くと、ギャンブル的な、危険な香りを感じる人も多いと思います。でもギャンブルは、胴元ががっぽり懐に収めるので、参加する客の儲けは平均でマイナスです。一方、株式のリターンは、この１年だけでなく、長期的にみてもプラスです。もちろん変動もありますが、この20年平均すると、毎年6％近いリターンです（複利計算）。女性の2倍以上の男性が、そうした収益を得ている可能性があることになります。
株価は会社の利益に従う
株式はなぜ長期的に上昇していくのでしょうか？ズバリ、企業の利益が増加していくためです。みなさんが働く企業も、たえず利益を増やす努力をしているでしょう。売上が上がらなければ、営業のやり方を変えろ、とか、経費をカットしろ、などときつく求められます。
株式投資というのは、このように、日々必死の努力をしている企業の一部を所有して、分け前をもらうということです。株主に与えられる議決権を使って経営にも関われます。実際、いろいろな会社の株主総会で、会社の経営陣を前に、配当を上げよなどと堂々と要求を突き付けている女性を目にします。
株式はどれを選ぶ？
でも、投資するにしても、どの会社を選べばいいでしょうか。株式の銘柄は日本だけで3700社以上と、プロでも覚えきれないほどの数があります。ネットにあふれる「買い」情報に従う？それよりはるかにおススメできる方法があります。「感動を与えてくれた企業を応援する」ことです。
化粧品ポーラが2017年にシワ改善クリーム「リンクルショット」を売り出したのを覚えているでしょうか。その性能が話題になり、各種女性誌などのベストコスメ賞で54冠という偉業を成し遂げました。しかし、製造元のポーラ・オルビスホールディングスの株価が市場平均を超える上昇を始めたのは発売から半年以上経ってから。その後、翌年半ばには、市場の2倍の上昇率となりました。商品への感動は株価よりはるかに先行します。
富士フイルムもそうです。アスタリフトのジェリーアクアリスタの使用感は驚愕でした。しかし、10年前の発表当初、市場のプロの証券アナリストたちは、「フィルムメーカーがコスメ？無理でしょ？」と批判的で、富士フイルムホールディングス株の「買い」を勧める人は全体の2割弱にとどまっていました。ところが今や、8割のアナリストが「買い」推奨に転じています。コスメの売上は全体にみれば小さくても、新規業務への会社の本気度が象徴されていました。しかし、“プロ”がこれを評価するまでには随分と時間がかかりました。
このように感動した企業の株を買うことで、市場に先回りして、利益を得られる可能性があります。では、それが企業の〝応援〟に繋がるとはどういうことでしょうか？
投資の意味とは？
みなさんの好きな商品やサービスの裏には、商品の責任者がいます。リンクルショットも、地道に開発に携わってきた女性部長の話が有名です。責任者たちは、商品が売れて、会社の株価が上昇することで社内で評価されます。つまり、みなさんが株を買い株価が上がると、企業の中で頑張っている人々を側面支援することになります。気に入ったお店を、口コミで高く評価することと似た感覚かもしれません。
みなさんが得られる応援の対価は、株価の上昇だけではありません。株価の上昇だけだと、株を売らないと利益を手にすることはできません。しかし、企業は、毎年、株式の保有者に配当や株主優待を配ります。美顔器のヤーマンは、自社商品の割引が最大2万円まで受けられます（保有株数と保有期間によって異なる）。RIZAPグループのイデアインターナショナルの株主は、RIZAPグループの商品最大36000円分がもらえます（保有株数によって異なる）。さらに、投資を通じて、経済や金融が身近になり、確実に知識が得られるというおまけもついてきます。
でも仕事もあるし、やっぱりゆっくりしたい、投資なんて面倒・・・と思う方。いえいえ、そういう人ほど、投資はアリなのです。株式は、日々必死に活動している企業に家にいながらエールを送り、対価として利益の一部を分けてもらうものなのです。このコラムを最後まで読む気力と関心があれば、すぐにでも始められると思います！
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マネックス証券 チーフ・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ長／マネックスクリプトバンク マネックス仮想通貨研究所所長
大槻 奈那
東京大学卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード＆プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析する。現在、名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学国際政治経済学部の客員教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員、貯金保険機構運営委員、財政制度等審議会委員。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループのメンバー、内閣府規制改革推進会議委員も務める。テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」等、メディアへの出演も多数。
著書： 『本当にわかる債券と金利』（日本実業出版社）、 『1000円からできるお金のふやし方』 （ワニブックス）
