作り手の個性を生かした多様な作品に出会える
表参道の駅近くに店を構えるこちらのギャラリーは、笠間焼の作陶家の器を中心に個性的な作家さんの作品を豊富に揃える一軒。「例えば益子焼というと、肉厚でポテッとした温かみのある、民芸の雰囲気をイメージされる方が多いと思います。一方、笠間焼は笠間の土を何%使うという定義はあるのですが、あまり「これ」という特徴がない、しいていえば特徴がないことが特徴とも言えると思います。作家、アーティストの表現したいものが表現されている、というのが笠間焼の面白いところです」と話してくれたのは表参道 門の渡辺史成さん。
江戸時代は、生活に必要な食器をたくさん作って発展していた笠間焼。ところが、その後、生活様式の変化などもあり、一時低迷。そのときに、地元の努力で、多くのアーティスト、作り手、作陶家志望の若者などを笠間に呼び込んだそう。その流れで、笠間では○○焼とは、という一つの作風より、作り手の自由な創作活動を基にした幅広い作風に出会えるそう。
例えば、笠間焼の伝統工芸士に認定されている小林哲也さんの器。
▲白磁の土と透き通った水色の艶のある彫線が洗練された雰囲気。蓋に配された猫も遊び心があって、愛らしい。湯のみ各¥3,200、飯椀各¥1,900
▲こちらは十草模様と言われるストライプが配されたモダンなデザイン。「いずれも小林さんの作品ですが、趣が全く異なりますよね。でも、いずれも笠間の作家さんの作品だから、笠間焼なんです」と渡辺さん。急須¥6,000、湯のみ各¥1,100、下のプレート¥3,000
ふんわりとした益子焼風の作風の方も笠間焼の作家さん。「近藤文さんといって、イッチン技法と呼ばれる繊細なタッチが人気のある女性作家さんです」イッチン技法とは、スポイトを使って泥上の粘土で、器に模様を描く技法のこと。手書きの温かみとノスタルジックな雰囲気が魅力的です。
▲印象的な柄。温もりを感じるティーポットやマグカップはこれから寒くなる季節にぴったり。右奥から時計回りに・ティーポット¥7,500、茶碗¥2,400、マグカップ各¥3,000
飯沼耕市さんの「青」もオリジナリティがあります、と渡辺さん。「器の青は以前はあまり流行らなかったのですが、現在は消費者の方もどんどんと自由に愉しまれるようになり、今ではとても人気があります。飯沼さんの作品は、青が特徴ですが、笠間焼ならではの器の厚みもあり、他の方の”青”とは一線を画す”青”です」確かに、笠間焼と言われて、この青をイメージする方は少ないのでは!?
▲一つ一つ微妙なニュアンスで、繊細な青。お気に入りの一つを選ぶのに迷ってしまいそう。手前の小鉢¥3,500
▲右・奥そばちょこ¥3,000、奥¥0000、豆皿各¥1,600、飯椀各¥3,500
「それから、森田公亮さんの作品も、釉薬でさびを表現していて、面白いですよ。いい意味でシャビーというか、廃墟にあるようなアンティーク感が漂います」と渡辺さん。
▲欧文のデザインは後からスタンプで押されたものだそう。右から、カフェオレボウル¥2,500、プレート¥1,300、真ん中のカップ¥2,500、奥は手前と同じ
▲花瓶一つでとても映える一品。シンプルな花を一輪挿したい。花瓶¥5,000、奥のプレート¥3,000
「笠間焼」と一言で言っても作風は実に多様で、オリジナリティ溢れた作品が豊富!
作り手さんそれぞれに個性があり、一点一点作家さんのストーリーを伺って、手に取って見ていくだけでワクワクします。こんな作り手の方の思いが溢れた器を日常使いできたら、日々の暮らしもアガりそう♪
ちなみに、門では作家さんの個展も数多く開かれているといいます。現在は益子の作家・中村恵子さんの個展を開催中(〜11/29まで)。
「焼き物の緑というのは、織部に代表されるような濃い緑の方が多いのですが、中村さんが独自に何度も試行錯誤して生み出したこの緑。品があるけれど可愛くて、可愛いけれど伝統を感じる。何を乗せて頂いても映える器です」と渡辺さんイチオシ。シックなオリーブグリーン♪ 和にも洋にも使えて、季節も問わずに使える一枚になりそうなプレートや小丼やカフェオレボウル…。形がシンプルだから、デイリーに、しかも飽きが来ずに使えそうです。小鉢2000円、左奥の小皿各¥900という良心的な価格も嬉しい。
同じく、中村恵子さんの作品が今、「表参道 門」の入り口にはディスプレイされて、お出迎え。
都内でこれだけの数の笠間焼や益子焼を揃えているギャラリーは貴重! 笠間や益子好きの方は是非訪問してみてください。
※器の価格は税抜きになります。売り切れの際はご了承ください。
表参道 門
東京都渋谷区神宮前4-2-17
03-3408-6831
https://omotesandomon.wixsite.com/mysite
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