新学年がスタートすると、新しい習い事や、塾に通わせたいと思う親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。子どもの将来を考え、よりよい環境で勉強や生活をさせてあげたいと親なら誰しもが願うこと。となると、親の頭に浮かび上がるのは「中学受験」。中学受験は〝親の受験〟と言われるほど、良くも悪くも親の影響力が強く出ます。まだ精神的に未熟な小学生の受験を親はどう捉えるべきか、スクールカウンセラーでもあり、臨床心理士・吉野美智子さんにお聞きしました。
子どもに受験を勧める前に親が確認しておくべきこと
<1> 夫婦間の擦り合わせ
「皆さんは常日頃、子どもの教育について夫婦間で話し合っていますか? 夫婦どちらかが『中学受験なんて…』という気持ちが残っていると、いざというときに協力が得られなかったり、家族内で不信感が芽生えてしまう恐れも。日常的に受験のメリット&デメリットを突き合わせて話し合えていると、夫婦間でのすれ違い防止になります」(吉田さん)
<2> 子どもの性格を判断
「塾選びや志望校選びをするとき、子どもの性格を無視して決めないようにしましょう。例えば〝のんびりした性格を直したい〟 〝幼さを成長させたい〟など、本人の性格を変えるための塾選びや学校選びは、結果無理が生じてきてしまうためオススメできません。その子に合った場所を見極めるためにも、いま一度子どもの性格を観察してみてください」(吉田さん)
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今こんな風に考えていたら危険かも!?
中学受験を考えるご家庭の理由は様々です。しかし、以下のような考えで受験を始めようと考えているのは危険だと吉田さんは話します。
「特に多いのが〝周りも受けるからなんとなく〟〝親の願いを子どもに肩代わりさせる受験〟です。前者は親も子どもも周りの空気に飲まれている状態。目的意識がなければ途中で挫折もあり得ますし、子どもは大きく傷つきます。 後者は親が受からなかった学校や、逆に自分も通っていた学校を受験させるパターンです。子どもの性格や本当に行きたい学校を無視した状態は、子ども自身を否定することにもなりかねません。
〝大学進学・就職まで視野に入れると、中学受験がお得でコスパがいい〟と思っている親御さんもいらっしゃいました。確かに大学受験よりも、中学受験のほうが費用が少なくて済む傾向にあります。ローリスク・ハイリターンを考えているようですが、子どもの人生は親のものではありません。子どもが行きたいと思える学校が見つかるまで待つのも親の仕事ではないでしょうか」(吉田さん)
まずは親御さんが以上のことを把握し、情報収集や下準備などすると良さそうですね。それが終わったら、子どもと相談です。こちらも吉田さんに注意点をお聞きしました。
子どもと相談するべきチェックリスト
□本人は中学受験に興味はあるか
□塾通いが始まると、遊ぶ時間が減り勉強時間が増えるが大丈夫か
□途中で受験をやめたくなったら相談できるか
□勉強がしたくないときはどう過ごすか
「1番は本人にやる気があること。どんな中学生になりたいのか、どのような中学校生活を過ごしたいのかなどイメージができるといいかもしれません。当たり前ですが、子どもはまだ中学生がどのようなものか体験していませんよね。学校見学や、お友達のお兄ちゃん・お姉ちゃんなどに話を聞いて興味があるかないかを見極めても」(吉田さん)
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中学受験は一進一退! 気をつけるべき親と子どもの相違点とは?
一通り話し合い、お互い納得していざ受験勉強!となっても親と子どもには相違点があるそう。
<1>小学校生活への思い
「親は受験に対し、〝良い経験〟になると思いがちです。例え志望校に落ちたとしても勉強は無駄にはならないし、学習習慣や努力は身につくので、受験をやって損はないと考えるのです。対して子どもはどうでしょう。友達と遊びたいのを我慢して頑張る、途中でやめたいと思ってもやめられないなど、貴重な子ども時代を捨てて受験をするのです。子どもの心にしこりが残らないよう注意してください。
<2>成績が上がらず苦しい時期
受験は必ず途中で進退を確認する苦しい時期を通ります。親子で何のための受験なのか再度確認しましょう。子どもが『それでも頑張りたい』と言ったとしても、最後は親が〝このまま頑張らせるべきか、中止を決断するべきか〟判断しなければなりません。最終責任は親にあります。決して『あなたが受けたいと言ったからでしょ』と子どもに責任を負わせるのはNGです。
<3>子どもの約束は100%ではない
受験を決める前に、〝遊ぶ時間が短くなる〟〝勉強量が増える〟〝習い事に行けなくなる〟など子どもに確認と約束をさせますよね。子どもが『うん、大丈夫。受験やるよ!』と言った言葉を親は信用します。でも、このときの子どもはどんな生活が待っているかイメージできていないのです。だから塾通いが始まってみると、親は約束したのになんでサボるの?やる気がないの?とイライラしてしまいます。子どもの約束を大人が責めるのは厳禁です。それよりも、子どもがやる気になるタスク量や難易度に修正をしてみましょう。きっと親も子も楽になるはずです」(吉田さん)
最後に吉田さんがこんな準備も忘れないようにとお話しくださいました。
「万が一、受験を途中でやめることになったとき、子どもが敗北感や自信を失うことのないように、納得させられるストーリーを用意しておくのも親の務めかもしれません」(吉田さん)
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受験勉強はやってもやっても不安が消えず、そばで見守る親はハラハラドキドキしっぱなし。親子で情緒不安定になっては元も子もありません。親は焦る気持ちを抑え、子どもの受験を冷静に判断できるといいですね。
構成・文/福島孝代
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